
ミステリー小説『誤認逮捕状』プロローグ
その時、脳裏には確かに浮かんでいたのだ。
いつも通り、煌々と光るナイターの灯りが。
急いで自宅に戻ると、入念に手を洗ってからアパートの前で待機した。
全速力で走ったため、胸が焼けるように苦しい。
姿を現した救急車に向かって、必死に合図を出した。
「あなたが通報者ですか?」
「そうです」
「乗ってください」
初めて乗る救急車。
それも前の座席だ。
通報現場までのルートを運転手に指示すると、五分も経たずに到着した。
後部キャビンに乗っていた救命士が飛び出し、すぐに横たわっている男の状態を確認する。他の隊員が手際よくストレッチャーを下ろし、搬送準備を整えた。
「あなたも、後部キャビンに乗ってください」
男の状態を聞きたかったが、あまりの緊迫感に切り出せない。
夜の静寂を、サイレン音が切り裂いた。
赤信号を通過する注意喚起の声を何度か耳にするうちに、間もなく到着という無線のやり取りが聞こえた。
男が救命病棟に運び込まれると、間もなく警察が到着するから帰宅しないようにと、看護師から釘を刺された。
「状況説明なら、救急車の中でしましたけど」
「警察にもお願いします。同じ内容で結構ですので」
あらすじ&目次 へ戻る
第一章 一 へ続く