
13.若返りを暮らしに溶かす
若返りを“暮らしに溶かす” ― がんばらないアンチエイジングの設計
前回、台所の油の話の最後に、「次は少し“若返り”のほうへ」と予告しました。派手な若返り法ではなく、地味だけど効く“土台”の話を、と。今日は、その約束の回です。
以前にも一度、「老けにくい暮らし」の小さな習慣を並べたことがありました。呼吸、柔軟、洗い方、寝る前のスマホ……。今日はその一歩手前、“なぜそれで老けにくくなるのか”という、土台の考え方のほうを、やわらかく書いてみます。
そもそも、アンチエイジングって?
世の中で「アンチエイジング」というと、けっこう幅があります。美容クリニックの施術、高い化粧品、サプリメント、ジム通い、抗酸化がどうの、睡眠がどうの……。どれも、それぞれに意味はあると思います。頭から否定する気は、まったくありません。
ただ、正直に言うと——どれも「続ける」のが、いちばん難しい。 お金もかかるし、気合もいる。三日はできても、三年は続かない。私のようなズボラなアラフィフには、ちょっとハードルが高いんです。
そこで私がたどり着いたのが、逆の発想でした。がんばって“足す”のではなく、暮らしそのものを、老けにくい形に組み替えてしまう。
私のやり方は「準備して、あとは暮らすだけ」
私のやり方の肝は、ひとことで言うと“先に仕組みをつくって、日々に溶かす”です。
最初に、食べ方や過ごし方の“型”を用意しておく。あとは、その型のうえで、普通に暮らすだけ。呼吸するように、意識しなくても続いていく。 そういう状態を目指しました。がんばって毎日決意する、では続かない。決意がいらない仕組みにしてしまえば、勝手に続くんです。
私の場合、その主軸はだいたい四つ。①内臓を休める食べ方 ②食そのものの見直し ③体を動かして巡らせる ④朝の心地いいリズム。 ひとつずつ、いきます。
①内臓を休める ― 1日2食と、オートファジー
私は4年ほど、1日2食(朝と晩)で暮らしています。昼を抜くと、だいたい16時間くらい、内臓が“お休み”になる。
このとき、体のなかで起きていると言われるのが、オートファジーという働きです。むずかしそうな名前ですが、中身は“細胞の大掃除”。細胞のなかの古くなったもの・傷んだものを分解して、材料としてリサイクルする——そんな仕組みです。この研究で、大隅良典博士が2016年にノーベル賞を受賞しました。空腹の時間が続くと、この掃除の働きが活発になる、と言われています。
——ただ、ここは正直に。「何時間あければ劇的に若返る!」みたいな話は、少し盛られている面もあると思っています。私は難しく考えず、“体のなかを少し休ませて、掃除の時間をつくってあげる” くらいの気持ちでやっています。内臓が休まれば、そのぶん負担が減って、新しい細胞も生まれやすいんじゃないか——そう感じています。(1日2食の詳しい体験談は、以前の回に書きました)
②食を見直して、内側の負担を減らす
せっかく掃除の時間をつくっても、入れるものが体に厳しければ、内臓はまた忙しくなってしまう。だから、入れるものの見直しも、同じくらい大事にしています。
これまでこの場所で書いてきた、油、砂糖、塩、添加物……。ぜんぶ「怖がるため」ではなく、「内臓の負担を、そっと減らすため」の話でした。たとえば前回の油。古くなって酸化した油は、取り込むと体のなかで“サビ”や老廃物としてたまりやすい、という側面もあると言われます。だからこそ、はじめに“いい油”のほうを選んでおく。負担が減れば、体は“修理と新築”のほうにエネルギーを回せる。新しい細胞が生まれやすい土台になる——私は、そう考えています。
③体を、ほぐして巡らせる
歳を重ねると、放っておくだけで筋肉は少しずつ減っていきます。だから、日々ほんの少し、体を動かす。 といっても、運動らしい運動ではありません。腰と肩を中心に、筋を伸ばす——朝の準備運動くらいの、軽い柔軟です。たくさんはやりません。毎日ちょっと、を続けるほうが効きます。
体をほぐすと、こわばりがとれて、巡りがよくなって、気持ちがいい。それだけで、朝の一歩が、すっと軽くなる。派手な運動をしなくても、この“ほぐして、巡らせる”を毎日くり返すだけで、体はずいぶん違う——私は、そう感じています。
それに、人は特別な運動をしていなくても、日々動いているだけで、少しずつ汗をかいています。その汗と一緒に、塩分やミネラルも静かに出ていく。だから、出たぶんを“いい塩”でそっと補っておく。塩の回で書いたとおり、塩は、敵じゃありません。
④朝の、心地いいリズム
もうひとつ。これは完全に、“私の実感”の話として読んでください。
朝、私はアルファ波と呼ばれる音を、なんとなく流しています。きっかけは、「観葉植物に音楽を聞かせると育ちがいい」なんて話を、どこかで耳にしたこと。面白いなと思って、じゃあ自分の体にも、心地いいリズムを聞かせてみようか、と。
念のため書いておくと、「この音で細胞が若返る」なんて、科学的に証明された話ではありません。 そこは、私にも分かりません。ただ、私にはただただ心地よくて、朝の呼吸を整えるスイッチになっている。それで十分だと思っています。理屈より先に、“気持ちがいい”がある。続くものって、だいたい、そういうものですよね。
だから、整える
こうして並べてみると、ひとつひとつは、本当に地味です。昼を抜く、入れるものを選ぶ、ちょっと動く、朝いい音を流す。派手さは、まるでない。
でも——この地味を、呼吸するように、暮らしに溶かしてしまう。 すると、特別にがんばらなくても、ただ普通に一日を過ごすだけで、体が少しずつ“サビ”から遠ざかっていく。私は、そう感じています。
「若返る」と言い切ったら、さすがに言いすぎかもしれません。でも、“老けにくい”のほうは、正直、実感があります。アラフィフの今も、外回りの先で30代後半〜40代前半に見られることが、しばしばですから。(これは、本当の話です)
先に準備して、あとは暮らすだけ。がんばらないから、続く。続くから、効く。
だから、整える。
次回は、その“朝の時間”を、もう一歩だけ深く。呼吸と、瞑想と。体と向き合う、いちばん静かな整活の話を、やわらかく。

※無理はしないでください(これだけは)
1日2食・空腹の時間をあける食べ方は、合う人・合わない人がいます。持病のある方、薬を飲んでいる方、妊娠中・成長期の方、食で苦しんだ経験のある方は、自己判断で真似をせず、必要なときは専門家の力も借りてください。
ここに書いたのは、あくまで私個人の習慣と実感です。効果には個人差があります。
「オートファジー」も「アルファ波」も、“こうすれば必ず若返る”という保証ではありません。仕組みの話と、私の実感の話として、切り分けて読んでください。