メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byx4a4n

【小説】迷い猫 

    慎野た぀き

    話  マガゞン  話

    

     ビルの裏手には事前の確認通りにロッカヌがあった。薄暗くあたり人目に぀かない。犯眪者が奜みそうな堎所だず茉莉は感じた。
     茉莉ず友梚䜳は呚囲を䜕床も振り返りながら、その䞀぀のロッカヌにキャリヌをしたう。

     実際にはキャリヌの䞭に猫はいないのだが、このような薄暗い䞭に生き物を入れろず指定しおくる盞手に自ずず嫌悪感が湧き起こる。
     茉莉は䞀぀深呌吞をするず、ゆっくりず斜錠をしお、その鍵を持参した封筒に入れた。
     二人はそのたた倚摩モノレヌルの駅ぞ駆け足で戻る。

     人気ひずけの倚い改札たで入るず、指定の番号にを入れた。

    「連絡、すぐくるよね」
    「うん、倚分」

     そこからの時間の進みは、茉莉の䞭でこれたで感じたこずがないほどの鈍さだった。スマヌトフォンを芋おは、ただ数秒しか過ぎおいない、再びスマヌトフォンを芋おは、ずいうこずを䜕床も繰り返した。

     電波の状態は良奜で、連絡が入らない理由が無かった。
     友梚䜳も同じこずを考えおいるようで、腕時蚈を幟床ずなく確認した。

     焊燥感に駆られ、茉莉は翔倪に連絡をする。

    〔ずろろ、倧䞈倫〕

     翔倪からはレスポンスがなく、既読すら぀かない。

     どうしお  
     今日は、今日に限っおは、スマホを小ために芋るように頌んでおいたのに。

     茉莉の背䞭に氷のごずき冷たいものが流れる気がした。

     茉莉は翔倪に電話をかけた。が、コヌル音ばかりが鳎り響き、䞀向に翔倪は出ない。

     隣で様子を芋おいた友梚䜳が、痺れを切らしおこう蚀った。

    「おかしい。䞀床、茉莉の家に戻ろう」

     すぐに二人は次の電車に飛び乗った。そこからの30分匱、お互いに䜕も話すこずなく無蚀のたた過ごした。

     犯人は、やはり家の堎所を知っおいたのか
     茉莉が空のキャリヌを持ち出すこずを芋越しお、その間に家たでずろろを奪いに来たのだろうか。
     立川駅に誘き出されたのは私たちのほうだったのだろうか
     だずしたら、翔倪は
     母は
     ずろろは  

    ——だっお、それしか考えられないよね。茉莉のこずを知っおお、猫を保護しおいるこずも知っおる人なんお

     〝顔芋知りの誰か〟に぀いおコヌヒヌショップではお互いにそれ以䞊掘り䞋げるこずなく終わった。それはむコヌル二人にずっお身近な人物を疑うこずに繋がるからだ。

     茉莉はそのこずが自分たちの甘さだったのでは、ず感じ始めおいた。間違いなく茉莉が倧孊に着いた途端にメヌルを送るなどずいう芞圓が出来た盞手が存圚しおいる。

     その事実を認識しおいたなら、もう少し慎重に行動すればよかったのだ。自分の近くに入り蟌んでいる䜕者かが、このチャンスを狙っおいたのだ。

     なんで昚倜のうちに110番通報しなかったのだろう。
     埌悔で抌し朰されかける茉莉の背䞭を友梚䜳がそっず手を眮く。

     最寄り駅に぀いた茉莉ず友梚䜳はほが党速力に近い走りで自宅ぞ向かった。

     玄関の扉をバンず開け、䞭に入る。
     リビングには母がいた。

    「あら、茉莉。もう垰っおきたの」
    「お母さん  無事」
    「無事っおなによ。倉なこずいう子ね」
    「  翔倪は」
    「翔倪 ああ、そういえば、時間前くらいかしら。急に出かけお行ったわよ」
    「え」
    「それが、どうかしたの」

     母の問いに答えず、茉莉は二階ぞ駆け䞊がる。その埌ろから「お邪魔したす」ずいっお友梚䜳が続く。

     茉莉の郚屋を開けるず、カヌテンがふわりず揺れるのがたず目に入った。
     ずろろが来おからはずっず締め切っおいた匕き違い窓が20センチほど開いおいる。

     ずろろの姿はそこになかった。

     続いお、翔倪の郚屋をゆっくりず開ける。圓然のこずながら、そこに翔倪は居ない。

     なんで  
     状況ぞの理解が远い぀かず、呆然ずする茉莉に友梚䜳が声をかけた。

    「茉莉の郚屋の窓、開いおたから、逃がしちゃっお探しに行ったずかかも。
     ずりあえず、ちょっず近所探しおみよう」

     茉莉は無蚀のたた頷いた。

    「私、こっちの道路沿いを芋おみる」

     倖に出お、二人は呚蟺を探し始めた。䜕分前たでずろろが郚屋にいたのか分からないが、ただ逃げただけならそこたで遠くぞ行っおいないはずだ。

    「ずろろヌヌ」

     空地の雑草の䞭に声をかけおみるが、虚しい自らの声だけが響く。

     キャリ―ケヌスを入れたロッカヌの鍵は今も茉莉のリュックの䞭にある。
     茉莉は埐々にではあるが、珟実を受け止め始めおいた。鍵の受け枡しに぀いお連絡が来ないこずを考えれば答えは䞀぀だ。

     茉莉たちは隙されお、ずろろはすでに犯人たちの手䞭にあるのだ。

     逆回りで家の呚りを探しおくれおいた友梚䜳が戻る。友梚䜳も茉莉ず同じこずを考えおいるこずが分かった。

    「匟くん、連絡ずれた」

     友梚䜳が口にしたのは単なる確認ではない。茉莉も同じこずを考えおいた。

    「茉莉のお母さんがいうには、自分で出おいったんでしょ」

     その先のこずは口にされなくおも茉莉だっお分かる。
     こちらに䜕の連絡もせず、ずろろを連れお出お行ったずあれば、それはもう十分に疑われる察象だ。

    「友梚䜳、ごめん、私もう䞀床家に垰っおみる。なんか分かったら連絡する」

     それだけ蚀い残すず茉莉は走った。
     友梚䜳は茉莉の蚀葉に返事もせず、その堎で立ち尜くしおいる。䜕かを考えこんでいるように芋えるが、茉莉は友梚䜳の顔を盎芖出来なかった。


     再び自宅ぞ着いた茉莉は二階ぞ駆け䞊がった。

     翔倪の郚屋を開ける。匟の郚屋を勝手に捜玢するのは気が匕けたが、もはやそんなこずも蚀っおられなかった。

     久しぶりに入った匟の郚屋は、デスクにモニタヌがあり、以前は無かったはずのゲヌミングチェアが眮かれおいた。
     「オンラむンゲヌムを長時間するずきにいいんだ」ずかなんずか蚀っおいたような気がする。ゲヌムに興味のない茉莉はその話を軜く聞き流しおいたので今の今たで忘れおいた。
     翔倪は郚掻動にも所属しおいないので、その他は特段これずいっお目に぀くものもなかった。りォヌルフックに高校の制服が匕っかけおあり、ベッドには無造䜜に私服が眮かれおいる。

     藀代巧のアクリルスタンドがベッドサむドに眮かれおいた。ずろろが遊ぶから䞀時的に動かしおもらったものだ。そういえばお瀌を蚀うのも忘れおいた。

     䜕か手掛かりがないかず党䜓を芋回しおみたが、あたりに郚屋が小ざっぱりしすぎおいるため、棚に敎列した本や教科曞すら䜿甚感がなく思えた。
     その䞭で䞀冊だけ教科曞が無造䜜に棚に察しお氎平に眮かれおいた。敎列した䞭でそれだけが劙に目立ち、思わず茉莉は手に取った。

     するず、はらり  ず栞のように挟んでいたものが床に萜ちた。
     慌おお拟い䞊げるず、それは名刺サむズの玙だった。

     未経隓OK 高収入 即日 日払い
     ニュヌスでよく芋たような単語が䞊ぶ暪に、二次元コヌドが印刷されおいる。

    「そんな  。たさか」

     無人の郚屋で茉莉は思わず呟いた。声に出しお吊定しなければ、事実になる気がしお怖い。

     それでもどうにか茉莉は巊手に持った教科曞を元の䜍眮に戻すず、二次元コヌドが印刷された玙だけを持っお自分の郚屋に戻っおきた。

     ずろろが居なくなったダンボヌルの暪に座り蟌むず、再びその玙を眺める。
     脳内は答えを導きだそうずしおいるのに、必死で䜕かが食い止めおいるようなそんなざわざわずした感情の揺れ。

     震える手で自分のスマヌトフォンを取り出すず、その二次元コヌドを拟っおみた。
     コヌドから拟ったをタップするず〝高額アルむバむト〟ず蚘茉されたサむトが衚瀺された。


    

     䜕分経過しただろう。

     明らかに闇バむトを指し瀺すようなサむトの画面を開いたたた、茉莉はずっず倩井を眺め座り蟌んでいた。

     姉匟ずはいえ、垞日頃䌚話するわけでもないし、分かっおいないこずも倚々あるずは思うが、少なくずもこんなこずに誘惑されるほどバカじゃないず思っおいた。

    ——俺、金欠だから、そんな金ないよ

     確かにお金がない、ずは蚀っおいた。でもバむトもしおいたはずで、借金を抱えおいるような様子もなかった。

     そんなはずはない、翔倪が、闇バむトなんおするはずが  。

     頭を抱え、目を瞑る。
     信じない、芋ない、こんなものは。

     コンコン。郚屋をノックする音が茫然自倱ずしおいた茉莉の意識を珟実ぞ戻した。ドアを開けるず母だった。

    「茉莉、猫ちゃんっおもう飌い䞻さんに返したの」

     䜕故、突然そのようなこずを聞いおくるのだろう。茉莉が答えないでいるず、続けお母はこういった。

    「゚サずかいるなら買い物のずきに買っおくる぀もりだったのよ。昚日、翔倪に聞いたら、貎女に聞かないず分からないずか蚀われたから」

     茉莉は眉を寄せた。そんな具䜓的な話を母ず翔倪がしおいる様子は茉莉の知る限りではなかった。

    「䜕時い぀、そんな話したの」
    「䜕時い぀っお。貎女の携垯にかけたら、翔倪が出た時よ」

     茉莉はその蚀葉を反芻した。

     私の携垯に母が電話をかけおきた時
     昚日、私の携垯に母から着信があったのは、あの資産家宅の付近たで行っお、友梚䜳に脅迫の電話が入った盎埌しか無かったのではないか。

    「ごめん、ちょっず良く分からないんだけど、お母さんその時に初めおこの家に猫がいるこずを知ったんじゃないの」
    「ううん、知ったのはお昌くらいよ」
    「え」
    「貎女が倧孊に行っおる間。なんか翔倪の様子がおかしいから二階に䞊がったら、貎女の郚屋で猫ず遊んでるから、お母さんびっくりしちゃっお。
     で、聞いたら『姉が友達に頌たれお䞀時的に預かっおるだけだから、蚱しおあげお』っおいうから。お母さん『面倒みるのは無理よ』っお蚀ったら『わかっおるわかっおる』っお」

     茉莉の䞭で䜕かの音がした。䞍快なその音は、盞手ぞの䞍信感ずいう名前だ。

     動悞ず吐き気をなんずか堪えながら「゚サは倧䞈倫だよ」ず話し、母が䞀階ぞ降りおいくのを芋届けた埌、茉莉は友梚䜳に電話をした。

    「茉莉、どうだった ずろろ、芋぀かった」
    「  み぀からない」
    「そっか。匟くんは  」
    「  」
    「茉莉  泣いおるの」
    「翔倪が  、怪しいかもしれない」
    「え なんで」

     䜕ず説明すればいいのか  。
     けれども、友梚䜳には説明するべきだった。

     茉莉は途切れ途切れの声で、なんずか䌝えた。

     翔倪の郚屋から、闇バむト募集のサむトに繋がる二次元コヌドの玙を芋぀けたこず。
     理由が分からないが、母ずの電話に関しお、翔倪の説明には嘘が亀じっおいるず思われるこず。

     電話の向こうから、友梚䜳の慌おる様子が䌝わっおくる。

    「埅っお、埅っお。茉莉、萜ち着いお。
       ただそれだけじゃ、匟くんが怪しいずは限らないよ。ずりあえず連絡し続けおみようよ 私もかけるから」

     友梚䜳の優しい蚀葉が、今の茉莉には残酷に響いた。

    ぀づく

    話  マガゞン  話

     
     
     
    頭の䞭に浮かんでは消える物語や思いを、小説ずしお具珟化しおいたす。 創䜜倧賞2024の䞭間遞考通過『迷い猫』 Kindle出版『ペデストリアンデッキの舞姫』 感想・応揎コメント嬉しいです お問い合わせhttps://note.com/tatsuki_shinno/message

    あなたぞのおすすめ