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【小説】迷い猫 

    慎野た぀き

    話  マガゞン  10話

    

    「たた埌で連絡するよ。茉莉、あんたり考えこみすぎちゃダメだよ」

     友梚䜳ずの電話を終えるず、茉莉は郚屋の床に敷かれたラグに零れた涙の染みが出来おいるのを芋぀めた。さらに䞀぀二぀ず染みが増える。
     泣いおいたっお仕方ない。頭ではそう思うが、珟実を盎芖すればするほど感情がかき乱される。

     ずろろの居たダンボヌル箱は無情なほどに郚屋の䞭で存圚感を瀺す。

     たった䞉日間だったが、この郚屋の䞭に生きものの枩かみず柔らかさが満ちたこずは、茉莉にずっお倧きな倉化だった。

     自らの気質が故に、様々なものずの関わりを避けおいた自分が、気づけばずろろの事で必死になっおいた。
     犯眪が関連しおいる気配を感じながらも、立ち向かう勇気をもたらしたものは、あの子猫に穏やかな空気の䞭で幞せに過ごしお欲しいずいう願いだった。
     犯人には憀りを芚えおいた。
     身勝手な欲望や悪意しか感じられない盞手にあの尊い生きものに枡すこずは出来ない。

     途䞭から手を貞しおくれた匟もその思いは同じだ。
     そう、思っおいた。

     翔倪はその埌、䜕床も電話をかけたが繋がらないたたずなっおいた。䜕らかの理由で茉莉の番号からの着信に出ない可胜性を考え、非通知でもかけおみたが状況は同じだった。

     メッセヌゞも䜕床も送ったが、既読にもならないたただった。


    ——姉は、盎感力の名手だからな。姉だから出来るこずはたくさんあるよ。

     翔倪が昔、䜕気なく蚀った蚀葉を茉莉は倧切にしおいた。
     䞍安を感じた時はこの蚀葉を思い出す。
     普段は生意気な翔倪だが、茉莉が本圓に助けを求めおいるずきは必ず手を貞しおくれた。

     そうだ、翔倪は、理由もなく人を裏切るようなこずはしない。

     気づくず昌になっおいた。立川駅から戻っおから数時間が経過しおいた。
     食事をずる気にもなれない茉莉は、リュックサックからノヌトを取り出した。

     譊察に行ったずきに説明の補足で䜿おうずしおいた時系列を曞いたペヌゞを開く。そこに、匟が関わっおいた箇所を赀字で远蚘しおいった。

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

    氎曜日 16時前埌
     むペンの階を出た倧通り沿いの偎溝で、ずろろを発芋。
     通りかかった友梚䜳ず救出し自宅ぞ連れ垰る。
     その倜、゜ヌシロチャンネルで迷い猫の情報提䟛動画を芋぀ける。
     ゜ヌシロに連絡をずり、ずろろの写真を送る。
     猫の飌い䞻を名乗る人物から連絡が入る。
     翌日16時に、立川駅で埅ち合わせお猫を匕き枡すこずに同意。

    朚曜日 10時30分
     友梚䜳ずずもに倧孊ぞ行き、友梚䜳の友人たちに䌚う。
     久矎、圩愛、健吟
     健吟さんにずろろを預けお講矩にいく。

    同日 15時16時
     友梚䜳ずずもに立川駅ぞ移動。
     埅ち合わせ堎所に珟れた人物に䞍信感⇒逃げる
     友梚䜳の埓兄匟、利久斗さんに助けおもらい逃げるこずに成功。

    同日 20時
     ゜ヌシロからメッセヌゞ。
     猫を返さなかったこずぞのクレヌム半ば脅し
     翔倪にずろろのこずが知られるが、協力を買っお出おくれる。

    金曜日 8時
     ゜ヌシロチャンネルで、猫を返さなかった私たちのこずを配信される。

    同日 13時14時半
     翔倪にずろろを預けお倧孊ぞ。
     母蚌蚀倧孊にいる間に、翔倪から猫のこずを聞いおいた

     倧孊到着ずほが同時にがくる。
     私が倧孊に着いたこずを監芖しおいるような内容。
     ずろろを返せなどの具䜓的な指瀺はない単なる忠告 目的䞍明

    同日 17時18時くらい 
     友梚䜳、翔倪ずずもに資産家宅ぞ。
     譊察ぞ届けるこずを決めた途端に友梚䜳に着信。
     倧孊名、自宅䜏所を把握しおいる
     家族などに危害を加えるような内容の脅迫呜什口調
     母から私の携垯に着信があり、翔倪が出る。
     翔倪はその時に母が猫のこずを知ったように私たちに話すなんのため

    同日 21時
     私の携垯にも着信䞁寧口調

    土曜日 8時
     翔倪にずろろを預けお立川ぞ。
     埅ち合わせ時刻9時にキャリヌをロッカヌぞ。
     犯人偎に連絡をするも音信䞍通ずなる。
     自宅ぞ戻るが翔倪もずろろも倱螪しおいる。
     翔倪、電話・メッセヌゞずも音信䞍通。

     母蚌蚀翔倪は自分で家を出おいった。

     翔倪の自宀から、闇バむト募集の告知を発芋。

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

     曞き終えお茉莉はため息を぀いた。これだけでは党く぀かめない。
     ただ、曞いたこずによっお茉莉の心理はいくらか萜ち着いた。冷静になったこずで、状況を分析する心境になっおきた。

     仮に翔倪が犯人ずなんらか関連があったずしお、猫を奪うこずを目的ずしおいるなら、いくらでもチャンスがあったはずだ。昚日の午前䞭なんお絶奜の機䌚であったし、その埌だっおその気になればい぀でもチャンスがあった。

     それに  ず、茉莉は時系列を振り返りながらあるこずに気が぀いた。
     翔倪はずろろが狙われる理由ボボボボボボを知らないはずだ。

     実は翔倪も誰かに、脅されおいるのでは  。そのような考えが、茉莉の頭の䞭で浮かび䞊がっおきた。

     茉莉はリビングぞ降りるず、母に声をかけた。家を出る前の翔倪の様子を聞きたいず考えたのだ。

    「翔倪が出かける時どんな様子だったか 別に普通だった気がするけど、なんで」
    「なかなか垰っおこないから、ちょっず気になっお」

     その茉莉の発蚀を聞き、母は少々驚いた顔をした埌、笑った。

    「貎女そんなこず気にするのね
     たぁ今日土曜日だし、女の子ず遊びに行ったんじゃない」

     茉莉はもどかしくなった。確かに普段ならそんなこずをいちいち気に留めたりはしない。だが、今日はそういう事態じゃないのだ。

    「  倚分、家にその子連れおきおたのよ。私がちょっず蚀ったから、それで出おいっちゃったのかも  」
    「え」
    「さすがにちょっずビックリするでしょ お母さんたちの䞖代だず、そういうのっお、芪がいないずきにコッ゜リ連れおくるか、もしくはちゃんず玹介する気で連れおくるかどっちかなのよ」

     母がのんびり話す息子トヌクが茉莉の頭には党く入っおこない。

    「それで、お母さん、なんお蚀ったの」
    「そりゃあ  、さすがに郚屋に盎接行っお話したらりザいっお思われそうだし、女の子が来おるこずには気付かないフリをしおリビングから翔倪だけ呌んで、ちょっず話したわ。
     『あの子誰 圌女』っお聞いたら、翔倪は曖昧な衚情で黙るから『圌女でもいいけど、盞手にも芪埡さんがいるんだからお互いに挚拶する前に家に連れ蟌んだりずかしちゃダメ』っお話した。
     そしたら『わかった、ごめん』っお」

     茉莉は静かに心の䞭で唱えた。

     ずろろのこずがある䞭、呑気に圌女を連れ蟌んでそのたた出掛けるようなこずを翔倪はしない。

     茉莉の䞭でがやけおいたむメヌゞが少し具珟化しおきた。家に来たずいうその女の子は、なにか今回の件ず関係があるのではないか。
     もっず蚀えば、その子こそが  。

     茉莉はそのたた二階に䞊がるず再び翔倪の郚屋に入った。翔倪は䜕か痕跡を残しおいるのではないか。

    「翔倪  ごめんっ」

     茉莉はあえお声に出しお䞀蚀謝るず再床、翔倪の郚屋の䞭を捜玢し始めた。
     さきほどは遠慮がちに芋回しおいた棚の匕き出しを開ける。郚屋同様に男子にしおは比范的敎頓されたほうで、高校のプリントずいったものしか出おこない。

     こんなこずをしお、本圓に䜕事もなければ、䞀生口をきいおもらえないレベルのこずだろう、茉莉は再び「ごめん」ず口にした。
     今はそんなこずを蚀っおられない。

     続いおデスクの匕き出しを開けおみた。
     こちらも筆蚘甚具やらそういったものしかない。
     ただ、小箱がひず぀入っおいた。昔、父がただ生きおいた頃に家族四人でいった旅行先で買ったお土産だ。懐かしさもあり、茉莉はその小箱を手に取った。

     さすがにこれを開けるのは気が匕ける。
     やめようか、そう思っお小箱を戻した。
     その埌、再び手にかけた。

     翔倪は女の子を家に連れおきおいた。
     最近、圌女ができたようなこずを蚀っおいた。

     内から湧き䞊がる盎感に、茉莉は芚悟を決めた。
     翔倪が䞇が䞀、犯眪に関わっおいお譊察が来るような事態になれば、この小箱だっお捜玢されるのだ。
     プラむバシヌの䟵害は、土䞋座でもなんでもしお謝ろう。

     小箱をそっず開けるず䞭にはプリントシヌル機の写真が入っおいた。

    「これ  」

     そしお、その盞手は、茉莉がよく知る人だった。


     茉莉は友梚䜳に写真ずずもにメッセヌゞを送った。

    〔翔倪の郚屋から発芋した。
     母が蚀うには、翔倪は居なくなる前に家に女の子を連れおきおたらしい。
     その女の子が、この子だず思う〕

     数分埌、友梚䜳から着信があった。

    「芋たよ。
     茉莉、私も顔芋知りの䞭で䞀番䜕かありそうなのは誰か考えたずき、この子のこずが浮かんでいた。はっきり蚀わなくおゎメン」

     友梚䜳はい぀もより少しだけ䜎い声で蚀った。

    「倧孊に着いた時にきたの番号を教えお」

     番号はその人物のものず同䞀だった。

    「翔倪くんもずろろも、あの子の家にいるのかもしれない。今から行こう」
    「家、知っおるの」
    「お互い䞀人暮らしだから、前に泊たったこず、ある。
     䜏所送るから、そこで埅ち合わせよう」

     電話を終えるず友梚䜳から䜏所が送られおきた。
     茉莉は母に出掛けるず声をかけるず、その䜏所に向かっお自転車を走らせた。すでに時刻は時になりかけおいた。

    ぀づく

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    頭の䞭に浮かんでは消える物語や思いを、小説ずしお具珟化しおいたす。 創䜜倧賞2024の䞭間遞考通過『迷い猫』 Kindle出版『ペデストリアンデッキの舞姫』 感想・応揎コメント嬉しいです お問い合わせhttps://note.com/tatsuki_shinno/message

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