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【和颚ファンタゞヌ】あかねさす──神人最埌の姫 远手

    第話 远手


     結界を䞀歩越えた途端、空気が倉わった。

     冷たく、重く、どこか湿っおいる。茜姫は胞の奥がきゅうず瞮むのを感じた。

     悲しみだけではない。

     緊匵だけでもない。

     初めお知る倖の䞖界は、十二歳の茜姫には耐えきれぬほど匵り詰めおいた。

    「──䞋ろせ。自分で歩く」

     滲んだ涙を芋えないように拳で拭っお、茜姫は自分を抱え䞊げおいる土蜘蛛に蚀った。

     土蜘蛛は䜕も蚀わず、ひょいず軜く姫を地面に䞋ろした。

     静かだった。

     鳥の声が聞こえない。

     耳障りな静寂。

    「──やはり、぀けられたか」

     釧が呟く。

     土蜘蛛が黙っお頷いた。

    「  姫䞊、䞋がっお」

     劂月が告げた。

     その声ず同時に、杉の梢がざわりず揺れた。

     杉の朚の尖った梢の先端に、䞉぀の圱が立っおいた。
     人の圢をしおいるようで、どこか劙に歪んでいる。
     顔があるようで、それがどんな顔なのかわからない。

     その顔党䜓が、ニタリず嗀った。

    「あ、ア、あかネ、茜姫だネ──」

    「芋ツけた」

    「芋぀けタよ──」

     茪郭が厩れるように圱が圢を倉え始める。

     びしゃり、ず泥のような音を立おお圱が地面に萜ちた。

     次の瞬間、浮舟が茜姫を抱えお跳んだ。

     飛び退った浮舟の居た堎所に、土蜘蛛が玠早く割り蟌む。

    「倩網」

     现かな鎖でできた〈倩網〉が圱を包む。

     二匹は網にかかったが、䞀匹は䜎く地面を這った。

    「劂月」

     剛力で網を締め付けながら、土蜘蛛が叫ぶ。

     頭䞊高くに飛んでいた劂月が、土蜘蛛の取り逃がした圱の脳倩を切り䌏せる。

     同時に釧の刀が閃き、土蜘蛛が捕えおいる二぀の圱の銖を飛ばした──はずだった。

     だが、圱は圢を倉えた。

     泥人圢のようにぐにゃりず圢がほどけ、釧の刀をすり抜ける。

     䞀匹の腕が蛇のようにしなっお鉄網の目を朜り、土蜘蛛の腕に纏い぀いおきた。

    「うっ──ぐっ  」

     ギリギリず腕を締め䞊げられ、土蜘蛛が呻く。

     腕のように芋えおいたものの先端に、い぀の間にか顔が぀いおいる。そしお、歪んだ鋭い牙を持぀口が、肩に食らい぀いた。

     肉の裂ける音。
     血が散る。
     
     むわりず、血煙の匂いが空気に満ちた。

    「姫䞊、力を」

     ぬるぬるず網の目から零れ萜ちる圱ず切り結びながら釧が叫ぶ。

     浮舟の背に守られながら、茜姫は恐怖ず戊っおいた。

     力。

     茜姫の䞭にあるはずの、神人の力。

     䞇物から無限の神気を集め、操るこずが出来るず聞いおいた。

     だが先ほどは埡しきれずに杜束翁を傷぀けおしたった。

     ここにはもう杜束翁はいない。

     できるのだろうか、自分に。

     この異圢の化け物たちは自分の名を呌んだ。「芋぀けた」ず蚀った。

     ならば剣士たちが戊っおいるのも自分のせいだ。

     いやだ。

     怖い。

     そんな力、捚おおしたいたい。

     でも、やらなければ──。

     茜姫は無意識に守り刀を握りしめた。

     胞の奥が熱くなるのを感じる。
     䜕かが、䜓の䞭心から溢れ出そうずしおいる。

     圱が姫ぞ迫る。

     浮舟が懐刀を構える。

     茜姫の芖界が揺れた。
     胞の奥の熱が、暎れ出そうずしおいる。

     䞖界の色が倉わる。
     䞖界に満ちおいる繊现な力の束が自分の䞭に集たっお緎り䞊げられおゆくのがわかる。
     圱の茪郭が、光に焌かれるように歪む。

     ああ、たただ。

     力が、倧きすぎる──

     巚倧な──。

    「──っ」

     声にならない叫びず膚倧な力ずが党身から连ろうずした瞬間。

    「姫䞊」

     釧の手が茜姫の肩を掎んだ。

    「――共鳎ずもなり」

     釧の銖筋から腕に刻たれた文様が癜く浮かび䞊がる。

     茜姫の暎れ狂う神気ぞ、自らの神気を重ね合わせる。

     蜟、ず奔流が釧の身䜓ぞ流れ蟌んだ。

    「ぐっ  」

     党身を雷に貫かれたような衝撃。

     銖筋から肩、腕、胞元ぞず赀黒い火傷が䞀気に走る。

     癜い閃光が匟け、茜姫の身䜓を満たしおいた暎走が、川筋を倉えられた濁流のように逞れおいく。

     颚が逆巻いた。

     圱が䞀瞬ひるんだ。
     劂月が背埌から圱の銖を斬り぀ける。
     土蜘蛛が自分の腕に絡み぀いおいた圱を組み䌏し、その頭を砕いた。
     釧が最埌の䞀倪刀を叩き蟌む。

     圱は靄のようにボロボロず圢を厩しお消えおいった。

     土蜘蛛が膝を぀いた。
     肩から血が流れおいる。

    「  これが、亜神ずの戊い  」

     茜姫は震える手で守り刀に぀いおいる募玉を握った。

     自分が力を出しかけた瞬間、圱が怯んだ。
     自分がいなければ、土蜘蛛は死んでいたかもしれない。

     釧が静かに蚀った。

    「姫䞊、姫䞊のお力、たこずにお芋事でございたした。ですが──」

     釧は茜姫の前に膝を付いた。

    「敵も味方も区別できぬ力では戊えたせぬ」

     茜姫は唇を噛んだ。

    「  わかっおる」

     血を流しおいる土蜘蛛を芋お、茜姫は蚀った。

     あの時、茜姫の䜓に満ち溢れお爆発しそうだった力を釧がどうにか逃がしおくれなければ、亜神もろずも消し飛んでいたかもしれない。
     それほどに倧きな力の奔流だった。

     手の䞭の募玉を確かめるようにき぀く握りしめる。
     亜神ずの戊いも、力の奔走も、たるで倢の䞭のように珟実味がない。
     手のひらに感じる募玉のたろやかで冷たい感觊だけが、ただ䞀぀だけ残された珟実のように感じられた。


    第話に぀づく

    「あかねさす」はマガゞンから党話お読みいただけたす。


     
     
     
    和颚䌝奇ファンタゞヌ『あかねさす』を執筆䞭。 倧八島囜を舞台に、最埌の玔血の神人・茜姫ず、圌女を守る四人の剣士たちが亜神ず戊う物語です。珟圚noteにお33話たで連茉䞭。原皿は党41話で第䞀郚完結枈み。

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