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2026衆議院選で高市自民党はなぜ圧勝し、中道は大敗したのか?(4)

    自民の得票が多く、中道の得票が少なかった原因 -そして、中道がより得票を増やせる可能性はあるのか?-


     前項のまとめで見たように、2026年は自民は小選挙区で公明の支援がなくなったことで失うはずだった400万票ほどを他から得票していた。また、中道の得票は、(比例区で見たときに)2025年の参議院選挙の立憲+公明の得票にかなり近いが、そこから少しではあるが減らしている。


     自民が、公明の協力がなくなったことで失うはずだった票を他から獲得できた原因の一つとして、いわゆる高市旋風はある程度は寄与していると言っていいだろう。初の女性総理ということで投票した有権者も実際いるだろう。高市首相の推し活というのがどのくらい寄与したかはわからないが、そういうものも若干は寄与しているかもしれない。

     また、自民がその分の票を獲得し、中道が票を減らしたことについて、ネットの影響はそれなりにあっただろう。各種出口調査などによれば、若者など、ほとんどの情報をネットから得ている層は、中道や共産などにはほとんど投票しておらず、自民・国民・参政などに多く投票している。この原因の一つは、ネット空間上では、高市自民を支持するような投稿が支配的であり、中道や共産を非難中傷するような投稿がかなり多くを占めていることだろう。選挙ドットコムの調査が示しているように、YouTube動画で各政党がポジティブに扱われているものが多いかネガティブに扱われているものが多いかを見ると、高市氏や自民や参政党は、ポジティブな内容がかなり多く、中道、社民、れいわなどは、ネガティブな内容がほとんど全てを占めている、ということも挙げられるだろう。これは、一見、ネットを使う多くの人たちが、高市自民や参政を高く評価しており、リベラル勢力を非常に低く評価しているように見えるかもしれないが、そうではない。選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏も言われているように、ネット上では、全体に占める割合としては少ないが数百万人程度の極端な保守寄りの人たちが、非常に熱心に高市氏を持ち上げる投稿を繰り返しており、それがSNS上の情報を席巻しているためであろう。また、政治信条は特にないものの、お金が儲かるからという理由で動画を作成する人たちが作った動画もこれに寄与している。高市氏や参政党を持ち上げ、中道や社民やれいわを叩くものだと(上述の非常に活発な数百万人によって)よく拡散され、広告収入が得られることから、そうした人々も多くの動画をアップロードし、結果的に、SNSのほとんどがそのような動画で埋め尽くされている現状がある。

     また、中道がはっきりした政策を打ち出せず、選挙期間中にそのようなはっきりした主張ができなかったということもあるだろう。もともと立憲を支持していた層は、立憲がある程度はっきりした主張をしていたからこそ何となくそれを魅力的に感じて投票していた面もあっただろう。しかし、中道ということを前面に出すと、自民と異なるはっきりした主張がなくなってしまい、政党として魅力的でもなくなる。元立憲の中道候補者は2026年衆議院選で、もともと訴えていた政策もかなり訴えにくかったようである。

     各種の出口調査などからは、当初立憲側が心配していたように、公明の支持者が中道に投票しなかったわけではなく、公明の支持者は中道に入れたものの、もともと立憲に入れていた層があまり中道に入れていなかったこともわかっている。公明は宗教団体を母体にした政党だし、それと一緒になった中道に抵抗感を感じて入れなかった層もいるだろう。


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    図7:各党の比例区得票率の推移

     中道(や立憲)にとってより深刻なのは、リベラル政党を支持する層がどんどん少なくなっていることである。図7に、2013年から2026年までの各党の比例区得票率の推移のグラフを載せた。この図からはいろいろなことがわかるが、左派である共産・れいわの得票の低下は大きな特徴である。共産は得票率を継続的に落としてきており、10年前までは10%程度あった得票率が2026年には最低の4.4%になった。れいわは近年得票率を増加させていたが、2026年には山本太郎氏の入院なども影響して激減し、2.9%となった。
    さて、もともと立憲に入れていた人たちの中の特にリベラル層が、中道の政策がリベラルではないので気に入らなくて中道に投票しなかったとすれば、その票は共産・社民・れいわなどに流れてもいいようなものだが、共産・社民・れいわ共に、2026年の選挙では得票率や議席数を大幅に減らしている。立憲に入れていたリベラル層は一体どこに行ってしまったのだろうか。

     そもそも、この10年程度、立憲、共産、社民などに投票していたのは、60代以上が多く、それ以下の世代はそうした政党にはあまり投票してはいなかった。時代が進むにつれ、80代、70代などの高齢者は亡くなっていくため、そうした政党については時代が進むにつれ、どんどん得票が少なくなるのは容易に予想されることであった。だが、その世代が亡くなるスピードよりも速いスピードで、こうした政党への投票は少なくなっているようにも見える。その理由はよくわからないが、上述のネットの影響などはその一つだろう。また、減税などの政策を以前は共産やれいわが強く訴えていたが、それを国民民主や参政なども訴えるようになり、減税などを望む有権者がそちらに流れたこともあるだろう。

     参政・自民・維新を右派、国民を中道右派、公明系を中道、立憲系を中道左派、共産、社民、れいわを左派とすると、現在の日本の国会は右派と中道右派でほとんどが占められており、中道左派と左派を足しても10%に満たない議席となっている(図7の得票率もこうした傾向が顕著である)。リベラル政党への投票をする国民はかなり少なくなってしまっているのが現状であろう。そして、現時点でもリベラル政党・左派政党に投票しているのは高齢者層が多いため、このままでいけば今後もしばらくは、高齢者層が亡くなっていくことで、リベラル政党・左派政党への投票はさらに減少していくことが予想される。リベラル政党・左派政党にとっては、まさに危機的な状況である。中道、特に立憲系の中道が、こうした中で支持を広げていくのはかなり困難なことかもしれず、どのようにすれば支持を広げられるのかはよくわからない。

     図7を見ると、中道右派かそれより右の参政、自民、維新、国民民主を合わせた分の2026年の得票率は非常に大きい。自民は、石破首相の時の選挙で、その支持層が参政や国民に流出したと言われているが、2026年には、自民の得票率が石破首相より前の水準に戻ってさらに上積みもされている。さらに、それでも参政や国民民主に投票している有権者はおり、これらの4党の得票率の合計は、62.4%にもなる。これは2013年以降では最も大きな割合を占めている。(日本保守党など、さらに右寄りの政党に投票している人もさらに加わる。)

     しかし、若者世代が、本当に保守的、右派的な考え方をしているかというと実際はそれほどでもないだろう。若者世代は、選択的夫婦別姓にも同性婚にも賛成が多い。女性天皇、女系天皇にも賛成が圧倒的に多い。若者世代が非常に保守的というわけではなく、潜在的にはリベラルな価値観を持っているだろう者もそれなりにいると思われる以上、(どうやればよいのか自分にはわからないが、)SNS対策を少なくとも自民党がやっている程度にはうまくやり、若者世代に魅力的に見せることができれば、若者世代にある程度は支持を広げられる可能性はあるのだろう。

     一般に、国の議会において、特定の勢力が2/3以上を占め、それに対する勢力がほとんどいないというのは、バランスとしても大きな問題であろう。圧倒的に右派ばかりで左派が著しく少ないと、国会でまともな論争もできないため議論も深まらず、国民にその審議の内容や問題点が伝わることもなくなってしまう。したがって、リベラル勢力も一定の議席割合を占めていることはバランスの意味からも重要なことだと考えられる。立憲や中道は、選挙に対する貪欲さが、自民などに比べるとずっと薄いようにも感じられる。立憲・中道は、勢力を回復しようと思うなら、中道という形でよいのかについてもよく考え、世論にアピールして支持を拡大する方法を本気で考える必要があるだろう。


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    理系の研究者。趣味で簡単な選挙の分析などもしている。科学などについても書くかも。

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