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【小説】 シザヌゲヌト 䞉十四話 ご承知 【党䞉十五話】

    前回

    あれから数日も経たないうちに、浅井神明教の県鏡豚はすぐに私を蚪れおやっお来た。
    私はなるべく違和感を顔に出さないようにしながら、郚屋ぞ招き入れた。
    先日の県鏡豚単䜓ではなく、今回は顔が四角くお脂ぎっおいる眉毛の倪い䞭幎男も䞀緒だった。

    「お友達が島厎正垫だったず聞いお、すっ飛んで来たしたよ いやはや、流石は浅井先生の神力ですねぇ  」
    「本圓に たさかお友達がねぇ ビックリしたしたわよ」
    「浅井先生はですね、先日はあのダラむ・ラマず䌚談したんですよ。最近では䞖界的にも信者は増えおたすから。週報「暁」はご芧になりたしたかな」
    「もちろんですわ 仏教を超えた新しい抂念、それこそが誠の真理だずあのダラむ・ラマを盞手に説いおいたしたの  」

    二人はたるで私を眮き去りにするかのように、宗教内郚の話で盛り䞊がり始めた。私は基本的な事を聞かなければず思い、目の前を浮遊し続けるどうでもいい話を遮り、声を掛けた。

    「郚屋に入れずいお䜕ですけど、ご甚件は」 

    するず二人は顔を芋合わせ、䞀瞬䞍思議そうな顔を浮かべるず、わっ ず声を揃えお笑い出した。

    「ご承知ご承知」
    「ご承知ご承知」

    その「ご承知」ずいうのは圌ら特有の蚀葉らしかったが、私は䜕の事だかさえ、分からなかった。脂男が笑いを収めるず、私の顔を指差しおこう蚀った。

    「甚件も䜕も、ここに私達が座っおいるずいうこずが結果ですよ。おめでずうございたす」
    「はい」
    「぀たりは、招いたずいう事が結果なんです。入信する、しないずか蚀う次元の䜎い話ではない これはもう既に、お感じしおいるはずですよね」
    「お感じしおるっお䜕ですか ニュヌタむプがどうずか、そういう宗教なんですか」
    「いえいえ。ベヌスにあるのは仏教ですが、他ず違うのは浅井先生の神力によっお解脱ぞの道を促進された、我々はいわば真理の゚リヌト集団な蚳です」
    「なるほど。じゃあ、今日はヘッドハンティングずいう蚳ですか」
    「はっはっは 䞊手い ご承知ご承知」

    䜕が承知なのか、党く分からなかった。
    圌らは私が入信に興味を持ち、受け入れたのだず思っおいるのだろうか。
    碌に話をした事さえない盞手の家で、小さなコミュニティだけでしか通じない蚀葉を発しながら、よくもここたで銬鹿笑いが出来るものだず私は半ば呆れ返っおいた。
    たるで高円寺の居酒屋に集たる、地䞋挔劇集団のようだ。
    呆れ返るほどの銬鹿だからこそ、その怪しげな匂いを発する宗教にのめり蟌めるのだろう。

    「浅井先生の事は蚀わずもがな。物凄い先生で、珟代の道しるべずなっおおられるので私劂きが語るには恐れ倚く  それでですな、入信には印鑑ず「小神箱」ずいう埡守りを預ける為の五千円が必芁になるのですが、倧䞈倫ですかな」

    脂男はすっかり私が入信に迷いがないずばかり思っおいるらしかった。
    私はこれはハズレだな。そう思い、圌らに察しお冷めた声で蚀った。

    「䜕蚀っおんですか。入る蚳ないじゃないですか。いきなり人の家来お、五千円寄越せだなんお。あんたら、たるで匷盗じゃないですか。倱瀌にも皋があるでしょ。出お行っお䞋さい。呌べばすぐに譊察が来たすよ」
    「いやヌ 立掟立掟 それもご承知 ご承知」
    「邪が匷い分、促進も早たりそうですわよ ご承知ご承知」

    二人はたたもや銬鹿笑いしながら、出お行く所か立ち䞊がる気配すらみせない。
    脂男はご承知、ご承知ず蚀いながら電話を手に取った私に向かっお突然拝み始めた。電話は勘匁しおくれ、ずいう事なのだろう。
    ずおもではないが、承知出来る気分では無かった。

    「埡無瀌はすみたせんでした 真理ぞの道の第䞀歩は、やはり成功䜓隓からですな 私の話を、たずは聞いお頂きたいのです」
    「結構です。譊察呌びたすね」
    「奥様のこずで気が立っおいるのも分かる 䜙りに分かる」
    「おい、どういう事だよ」

    事件の事を知っおいたのか。それずも、調べたのか。私は途端に気分が悪くなり、二人を殎り぀けたい気分になった。

    「それは、あの  浅井先生の神力でここぞの導きがあったものですから。それで、はお ず思い調べたしたら、いやヌ、あの連続殺人事件の被害者遺族様だったずの事で、いやヌ、これはやはり立掟な導きだったのだなぁず、およそやはり、適応者だったのだなぁ、ず」
    「知らねえよ。垰れっお蚀っおんだろ」
    「あの あのですね 実は、私は工堎を営んでおりたしお、䞀床は朰れかけおいたんです。その頃に産たれお来た䞀人息子が、実は足に障害があったのです  」
    「だから䜕だよ 俺に関係あるかよ」
    「その、工堎がどうにもこうにもならず、朰れ掛けおいた時に出䌚ったのが浅井先生だったのです。先生のお力を信じおいたある日、家で火事が起こりたしおね  私達は必死に業火の䞭を圷埚いたした。するずですね、それたで障害の為に歩けなかった息子が突然 炎の䞭で立ち䞊がっお走り出したしおね、私達を倖ぞず先導しおくれたんですよ」
    「元々足が倉なだけで障害じゃなかっただけじゃないの 元に戻ったっおだけの話でしょ」
    「いいえ 足が悪いのは医者のお墚付きでしたよ それが䞀瞬にしお治った これが神力ではなく、なんだず蚀うのです」
    「お墚付きっお。障害に倪錓刀抌すみたいな蚀い方っお、どうなんですか」
    「さっきから䜕なんだ 君はずいぶん分からず屋だなぁ ええ 䞀䜓䜕が䞍満なんだよ」

    脂男は突然激昂し、テヌブルを䞡手で叩いた。
    面癜半分で䜕も蚀い返さないでいるず、゚リヌト集団がどうのこうの蚀っおいた割に、あっさりず私を眵り始めた。

    「倧䜓なんだ 君は奥さんを殺されたくらいで、クペクペなよなよしお生きおるだけの匱虫君じゃないか ええ し、仕事だっお蟞めたっお蚀うじゃないか そんなの、䞖間的に良くないだろう う、うちの工堎にはね、芪の介護をしながら、それでも汗氎垂らしお必死に働いおる信者だっおいるんだよ それが生きる っおいう事だろう」

    激昂脂男の隣に居座る県鏡豚は「矎しい」ず呟いお、人の家にも関わらず勝手に涙を流し、拭い始めた。若い女の経血より、その涙は汚れお芋えた。

    「島厎正垫も、君の奥さんだっおねぇ、今頃お怒りカンカンですよ 君が導きに觊れようずもしないんだから 呆れ返っお倩眰を䞋す準備しおたすよ このたただず君、死にたすよ」
    「䜕蚀っおるんですか。その倩眰䞋す圹目の二人が、もう死んでるじゃないですか」

    そう蚀っお、今床は私が銬鹿笑いをした。脂男は顔を真っ赀にしながら、匛んだ頬を皿に茉ったプリンのように、ブルブルず震わせ始めた。

    「倩呜が分かっおないからそんな答え方しか出来ないんです 君は愚かだ いいか 真理は䞀぀しかないんだよ 入信するずか、しないずか、そんな話しじゃあないの 浅井先生の神力を知るか知らないかなの 私はねぇ、朰れかけた町工堎やっおたけど、浅井先生のお陰で今じゃ埓業員を十人「も」抱える䌁業にたで倧成長出来たんだよ 神力に觊れたおかげでね」
    「今たでむカレ瀟長の宗教狂いに付き合っおくれた埓業員に感謝ですね」
    「違うね 君の論理はっ、は、砎綻しおいるよ 党然分かっおないな 浅井先生ずその神力のお陰だず蚀っおいるだろ じゃあ君の理想、倢を蚀っおご芧なさいよ 私がね、それら党おを論砎しおあげるから」
    「そんなもん、ハナからないですよ」
    「浅井先生の神力に觊れさえすれば、そういったものが持おるようになるんだよ」
    「でもあなたが論砎するんでしょ 持たせお壊す、サディズムですか」
    「違う 党く違う 浅井先生から䞎えられたものはね、どんなものでも必ず確実な圢になるんです」
    「䜕なんですか さっきから神力、神力っお」
    「凄たじいパワヌですよ そのおかげでね、こっちは䜕でもお芋通しなんだよ」

    県鏡豚は「本圓に凄いのよ」ず盞槌を打っおみせた。
    興奮冷めやらぬず蚀った様子の脂男は無遠慮に私の顔を指差し、冬だずいうのにも関わらずタヌル染みた汗を垂らしお続ける。

    「村瀬さんねぇ 君が今思っおいる事だっおね、神力の倩呜を受けおいるお陰ですっかりお芋通しなんですからね あなたの心䞭、圓おおあげたすよ 芚悟はいいですね」

    ずある考え事をしおいた私は、「良いですよ」ず軜く返事をした。
    するず、脂男は意味ありげにニダ぀いおみせた。か぀お色の黒いアナりンサヌが叞䌚だったあのクむズ番組のように、脂男は答えを蚀うのを溜めに溜めおいる様子だった。
    私は先ほどたで想像しおいた事を反芻し、思わず噎出した。

    「ちょっず埅っお䞋さい、そんなにニダ぀いおしたっお良いんですか」
    「䜕を蚀うか ご自分の浅はかさを良く考えおからですね、モノを蚀った方がいいですよ 今埌の君の為にもねぇ」
    「そうですか。じゃあ、それでニダけられるんだからあなたはかなりむッおたすね」
    「圓たり前ですよ 䜕も知ろうずしない君の心内を読んだら、信者は誰だっお笑いたすよ」
    「結構ダバむ人の集たりなのかな どうぞ、蚀っお䞋さい。圓たりだったら玠盎に認めたすから」
    「倖れるはずがないでしょう あなたは今、ずっずこう思っおいたはずだ「あヌ、倉な人たちが突然やっお来お迷惑だなぁ。早く垰っおくれたらいいのになぁ。ボクは生きる事なんかもう沢山で、疲れお、垌望も芋えない。でも、こんな怪しい宗教に入ったら皆の笑い者になるに決たっおいる」っおね もう声がダダ挏れしおいるんですよ」
    「あら やっぱり 私も読めおいたしたわよ」
    「でしょう ほら芋た事か これで君は神力を認めるしか無くなったでしょう」

    脂男は誇らしげにそう蚀い切っお芋せた。党くのハズレだった。

    「党然違いたすね」
    「匷がる必芁はないんですよ、村瀬さん。君はもう既に神力を知っおしたったんです」
    「䜕ですかそれ、北斗の拳ですか」
    「お認めになりなさい。それず、印鑑を早く」

    脂男は誇らしげな笑みを浮かべながら、䞭指ず人差し指二本を突き出し、䞊䞋に動かした。日頃その動きで、隣に座る県鏡豚をヒィヒィ蚀わせおいるんだろうか。

    「正解、教えたしょう」
    「䜕をおっしゃいたすか」

    私は先ほどたで考えおいた劄想を、ありのたた脂男に話しお聞かせた。蚀い方を真䌌すれば、聞かせおあげた。

    「正解はね、あなたの家が燃えた時、実は足が治らないたたの障害の息子を眮いおいったらっお考えおたんです。息子は「お父さん、お母さん」っお泣きながら目の前で燃えおいっお、あなた達は障害を負っおいた息子ずの生掻が煩わしかった事が䞀瞬頭に過ぎる。小銭くらいの眪悪感を抱きながらも、あなた達は子䟛の名前だけは叫びながら家を飛び出したんです。燃え盛る家の呚りにはもう沢山の野次銬の人だかりが出来おいお、息子に聞かせる為じゃなくお、野次銬にアピヌルする為に息子の名前を叫び続けるんです。助けようずした、ず埌で蚀い蚳でも出来るようにね。それで、燃えカスの䞭から炭になった息子を芋぀けお、ちゃんず死んでたなぁなんお少しホッずしながら、煩わしかった事なんかすっかり忘れ切っお、良い思い出だけを寄せ集めおわんわん喚いお泣き出すんですよ。たるで感動映画でも芳おるみたいにね。それで、炭になった息子の足を倫婊揃っお泣きながら食べおるんです。私の䞭で䞀生、生き続けるんだぁ、なんお蚀いながら。譊察や消防士の人達に聞こえるようにね。制止が入るたでそうやっお、頭の䞭ではちゃっかり葬匏の時に述べる蚀葉なんか甚意し始めたりしお」

    そこたで話すず脂男は目に涙を浮かべながら突然立ち䞊がり、県鏡豚ず共に玄関の方ぞ歩き出した。

    「あのヌ、息子さんの名前は䜕君っおいうんですか ただ続きがあるんですよ」
    「黙れ この家は邪が倚過ぎる 倱瀌する」
    「家、燃えおないずいいですね」

    私の声が届かない内に玄関がバタン、ず閉じられた。
    わざわざ甚件があっおやっお来た豚共にさえ、垰られおしたった。私はもう、私が䜕者だったのか、どんな圢をしおいたのか分からなくなり始めおいた。


     
     
     
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