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【小説】 シザヌゲヌト 䞉十䞉話 サクリファむス 【党䞉十五話】

    前回

    䜕床遺圱を眺めおも、遺䜓を確認しおも、それが死んでいる者の姿ずは思えなかった。それは女の時も倉わらなかったが、私は䞍思議ず冷静な気持ちで葬儀に参列しおいた。

    久しぶりに芋た出っ歯の元䞊叞は、い぀の間にか郚長になっおいた。
    葬儀が行われる盎前、圌から「自殺だっお」ず耳打ちされたが、死因に぀いおは金田から聞かされおいた。 
    そうやっお䞀々耳打ちしおくる性栌が、やはりコむツは奜きになれないな、ず改めお思わされた。

    珟堎でフォヌクリフトの事故を起こした犏山は、始末曞を曞かされた。
    事故を起こしたのだからそれは圓然で、良くある事故ずいえばそれたでなのだが、䌚瀟偎の察応が良くなかった。
    犏山は倉庫内で荷物を運ぶのに䜿う為の昇降機にフォヌクリフトを圓おおしたい、皌働出来なくさせおしたった。

    修理には盞圓な時間ず金を芁するらしかったのだが、䌚瀟はその責任を取れず犏山に迫った。
    人䞀倍責任感の匷かった犏山は気を病んだのか、事故の翌日䌚瀟を䌑んだ。しかし、䌚瀟は圌を責め続けた。

    犏山の家に䞊局郚の連䞭が抌し掛け、事故の翌日に䌑んだ事や始末曞の内容に関しお、圌らは䞀晩䞭飜きるこずもなく犏山を責め続けたのだそうだ。 
    その翌日も犏山は䌚瀟ぞ姿を珟さなかった。
    曎に、その翌日も。
    亀代の人員配眮が行われ、䌚瀟は犏山がこのたた䌚瀟を蟞めるものだずばかり思っおいたそうだ。

    そうしお䌚瀟を䌑んだ四日目の朝、犏山は街倖れの山䞭で銖を吊った状態で発芋された。
    い぀か連れお行かれた桃源郷のような、圌のお気に入りの堎所だった。
    遺䜓から遺曞などは芋぀からなかったが、圌の郚屋から䌚瀟ぞの告発めいた手玙が発芋されたのだずいう。
    葬儀を終え、煙草を吞っおいた金田に私は声を掛けた。

    「金田、煙草  ゆっこちゃんに芋぀かったら怒られるぞ」
    「今日くらい、勘匁しお䞋さいよ」
    「犏山さん。俺みたいに蟞めちゃえば良かったのにな」
    「マゞ、それ思いたした。正盎、あの䌚瀟に残る事  どうしようかなっお考えおたす」
    「あの郚眲も今じゃ金田だけか、残っおるの」
    「はい  村瀬さん、あの、マゞで戻っお来る気ないですか」
    「俺はやる事あるから、無理だよ」

    無気力に目を芚たし、女の蚀葉を幟床も幟床も反芻し、無気力のたた睡魔が蚪れるのをひたすら埅぀。そしおたた、無気力に目を芚たす。
    そこには䜕の喜びも灜いも蚪れる事はなく、い぀かそんな生掻に芋切りを付ける自分自身を埅ち䟘びおいるだけの生掻。 
    それが私のやる事、やっおいる事だった。
    金田は煙草を揉み消しながら、子䟛のように拗ねた口調で蚀った。

    「村瀬さん戻らないなら、このたんた  マゞで蟞めるかもしれないです」
    「今のおたえなら他所でもやっおいけるず思うよ。散々ブラックだブラックだ蚀っおたけど、これじゃ人殺しず䞀緒だな」
    「  倧戞ず同じっすね。俺はそんな䌚瀟に、居たくないです」

    犏山の葬儀を終えた埌、数人の若者が声を荒げお䞊局郚連䞭に怒声を济びせおいるのが芋えた。
    䞊局郚の圌らは若者達に頭を䞋げる蚳でもなく、かず蚀っお聞き入れるはずもなく、そのたた静かに埅機しおいた黒塗りの車ぞず乗り蟌んで行った。 
    固たり切った雪の蜍を砕く音ず共に、車はすぐに駐車堎から消えお行った。 
    今ずなっおは遠目で芋送る事しか出来ないそんな光景に、私はどうにも出来ない事ぞの䞍甲斐なさを感じおいた。

    街䞭に也き切っお固たった雪が日陰に残っおいる。い぀たでも、い぀たでも、残っおいる。
    雪の降ったある冬を思い出す。
    女は雪が積り始めるず、無邪気にはしゃいで雪だるたを䜜り始めた。
    小さい雪だるたを重ね、私の車のボンネットにそれを乗せ、「ベンツみたいじゃない」ず笑っおいた。゚ンブレムの぀もりのようだった。
    銖元のマフラヌを倖し、息を吞い蟌むず

    「雪の匂い、冬の匂いがする」

    癜い息を吐きながら蚀った。
    私は釣られお同じ事をしおみた。確かに、冬の匂いがした。冷たく静かで、穏やかな匂いだった。

    今の私には䜕の匂いも、色も、䌝わっおは来ない。近頃は生きおいる事を感じる床に、匷い焊燥感を抱くようになった。
    早くしなければならない。もう、䜕も甚事はないはずだ。党お終わったのだ。そう思うようになった。

    それから数日埌。芋芚えの無い県鏡豚のような䞭幎女性が、私の郚屋を蚪れお来た。
    の集金でなければ、どうせ宗教の勧誘だろうず思ったら、やはりそうだった。
    女性は䞞々ず肥えおいお、県鏡を無理に掛けられた豚のように思えた。
    県鏡豚は機械のような笑みを浮かべお、こう蚀った。

    「浅井神明教はご存知ですか」

    私の人生に死の匂いを運んだ、島厎がのめり蟌んだ䟋の新興宗教団䜓だった。
    その䞍吉な名は、たるで党おの元凶のようにも思えた。

    「知っおたすよ。友達が真理を芋぀けお死んだトンデモ宗教ですね」
    「たぁ 旅立たれ、昇華なされたのですね お友達は非垞に恵たれおたすね。倱瀌ですが、お友達のお名前は」
    「島厎ですけど  」
    「島厎っお、あの島厎正垫」
    「あのも䜕も、䜕ですかセヌシっお  知らないですよ」
    「これも導きですから、ね 少しだけでもお話なさりたせんか ね」
    「譊察呌びたすね」
    「ちょっず、埅っお䞋さいな これは導きですから」

    私は急いで玄関を閉めたが、県鏡豚は垰る様子もなく、玄関の前で携垯電話で䜕やら話始めたようだった。
    私は「倉な人が来お困っおる」ず譊察に電話した。
    しばらくするず話し声は耇数の者になり、玄関の前で「導き」がどうたらこうたら蚀い合っおいた。
    それからすぐに譊察の者らしい足音が聞こえ、圌らは怒鳎り声を出し始めた。数分過ぎおから諊めたのか、蟺りはたちたち静かになった。

    駆け぀けお来た譊官は物腰の柔らかい、爜やかな青幎だった。

    「浅井神明教でしたね。たたですよ、もう」
    「倚いんですか」
    「最近掻動がかなり掻発みたいで、䞍法䟵入しおたで勧誘したりするそうです。䜕かあったらたた呌んで䞋さいね」
    「ありがずうございたす」

    島厎が自らの考えず近いものが宗教だず蚀い、そしお入信し、葬匏たで執り行ったあの宗教。
    葬儀では遺䜓にペットボトルの氎を泚ぐらしいが、その氎が「南アルプスの倩然氎」だった事で私の友人の東野ず原田は笑っおしたい、信者達に怒られたそうだ。

    東野も原田も今頃どうしおいるのだろう。たるで連絡を取らなくなっお数幎が経぀が、生きおおも良いし死んでいおも良いずしか思えなかった。

    宗教で人の生が救えるのならば、どうか救っおみせお欲しい。
    狂わせるのであれば、どうか狂わせお欲しい。
    その為に、私は私をサクリファむスずしお捧げおみる事にした。



     
     
     
    物曞きず音楜、たたに暡型。3〜5000字の短線をメむンに投皿しおいたす。 人の恐怖、䞍気味な䞖界芳、孀独感をテヌマにした䜜品、あず倉な゚ッセむ。 誰でも読める文がモットヌ。 奜きな䜜家は西村賢倪、原田宗兞、山田詠矎等。

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