【夜のショートストーリー】『入軍証を狙う小さな手』


入軍証を狙う小さな手
魔城の庭で、リリスは新しい入軍証を掲げた。剣と盾も構えて、暗黒騎士団長らしく記念の姿を決める。
その足元で、くろもちの目がきらりと光った。見つめているのは入軍証……ではなく、下に揺れる赤いリボン。
小さな前足が伸び、ぺしっ。
「あっ、くろもち。それは遊ぶものじゃ――」
リボンを引かれ、リリスの凛々しい表情が崩れる。くろもちは知らん顔で、もう一度前足を伸ばした。
リリスはしゃがみ、くろもちのリボンを整えた。撫でられたくろもちは、満足そうに目を細める。
「もう。今日は私の入軍記念なんだけどな」
そう言いながら、リリスも少し笑っていた。ピンクの月の下、記念の一枚には、すっかりご機嫌なくろもちも並んでいる。
#魔王軍万歳




