
第三花|赤薔薇 序章
残紅の剣姫・エレニア=ヴェルレイン
──自由とは、誰かに与えられるものではない。
夏。
強い陽射しが石畳を照らす頃、
深い紅の花が咲く。
赤薔薇。

華やかで、美しく、
その茎には鋭い棘を持つ花。
誰かに摘まれるためではなく、
ただ、自らの色で咲いている。
その姿を、
誰かは誇りと呼んだ。
雨の降る王都。
高い城壁に囲まれた街には、
人々を守るための法と秩序があった。
けれど。
守るための壁が、
いつしか人を閉じ込める檻になったとしたら。
守るための決まりが、
誰かの未来を縛る鎖になったとしたら。
雨の石畳を、
一人の女が歩いていた。
艶やかな黒髪。
深紅の瞳。
黒と紅の衣に、
一輪の赤薔薇。
降り続く雨に黒髪を濡らしながら、
それでも足を止めない。
そして。
その手には、銃があった。
彼女は、
自由を与えるために戦うのではない。
奪われた選択を、
その人自身の手へ返すために戦う。
人は彼女を、こう呼ぶ。
──残紅《ざんこう》の剣姫。
自由とは、
何にも縛られないことではない。
自ら選び、
その先まで引き受けること。
たとえ雨の中でも、
彼女は自ら選んだ道を歩いていく。

🌹 エレニア Character Theme
『The Night Remembers the Rose』

第三花|赤薔薇 第一譚・前編
『撃ち抜いたのは、人ではなかった。』
──雨の王都で、
残紅の剣姫は国の存続を背負う男と出会う。
国を守る者と、
選ぶ権利を奪わせない者。
どちらも、
己の正しさを譲ることはできない。
二つの誇りがぶつかる時、
王都に一発の銃声が響く。
撃ち抜かれたのは、
人ではなかった。

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