第二花|竜胆 序章
弔花の剣姫・リアナ=ヴェリテ
──花を手向けるのは、死者のためだけではない。
秋。
風が冷たくなり始める頃、
山の斜面や静かな野に、
深い青の花が咲く。
竜胆。

華やかではない。
けれど、冷たい風の中でも、
俯くことなく咲き続ける花。
その姿を、誰かは祈りと呼んだ。
かつて、一つの王都が滅びた。
城壁は崩れ、石畳は割れ、
祈りの声も、笑い声も、
いつしか消えた。
残されたのは、
誰も鳴らす者のいない鐘と、
帰る場所を失った者たちの想いだけ。
人がいなくなっても、記憶は消えない。
名前を呼ぶ者がいなくなっても、
そこに生きた証まで、なくなるわけではない。
だから、花を手向ける者がいる。
名を失った者へ。
帰れなかった者へ。
誰にも見送られなかった者へ。
灰銀の髪。
漆黒の衣。
腰に携えた一本の細身の剣。
彼女は、戦いを求めて旅をしているのではない。
その土地に残された記憶に、
静かに耳を澄ませるために歩いている。
人は彼女を、こう呼ぶ。
──弔花の剣姫。
けれど、弔うことは、
過去を終わらせることではない。
時には、誰かが再び歩き出すために、
花を手渡すことでもある。

💙 リアナ Character Theme
『リンドウを胸に』

第二花|竜胆 第一譚・前編
『その花に触れるな。』
──滅びた王都で
弔う剣姫は最後の騎士と出会う。
滅びた王都。
誰もいない大聖堂。
そして、そこに一人だけ残り続ける騎士。
守ることをやめない者と
弔うことをやめない者。
二つの願いが出会う時、
止まっていた王都の時間が静かに動き始める。
青い花が、風に揺れていた。
それは、終わりを告げる花ではない。
まだ歩き続ける者へ贈る
一輪の竜胆だった。


