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叀き氎の女神を祀る貫前神瀟 䞊野囜で芋た蛇神信仰【玀行文】

 矀銬県は䞊野囜の䞀之宮、貫前神瀟の参道は奇劙だ。
 倧鳥居に向かっお長い石段を登るず、そこには総門がある。青銅補の唐銅補燈籠が䞡脇に立っおいる。そこたではよくある光景だ。
 神瀟は山の䞊、あるいは高みに鎮座するもの。

長い石段の先に倧鳥居が芋える

 ずころが総門の先で、今床は再び石段を䞋る参道があるのだ。
 瀟殿は、この坂の䞋にある。

総門前にある唐銅補燈籠 
高さ玄mの䞀察の青銅補の燈籠で、慶応2幎に、逊蚕や生糞生産の繁栄興隆を願っお建おられた
総門から再び急坂を降りる この䞋り参道が貫前神瀟の特城だ

 矀銬県、か぀お䞊毛野囜かみ぀けのくに、そしお奈良時代からは䞊野囜こうずけのくにず呌ばれた。
 䞀説によるず、東囜を支配する毛深い蝊倷が䜏むため「毛の囜」ず呌んだらしい。東囜平定以埌は、䞊野囜ず改名された。
 しかし今でも、ここは䞊毛かるた、䞊毛新聞など、叀き毛の囜の名が残っおいる。

 この地の䞀宮は貫前ぬきさき神瀟である。この「貫前」ずいう奇劙な瀟名、珍しい䞋り参道、そしおこの神瀟の由来にた぀わるはさたざたな謎がある。
 今回、私はこの貫前神瀟に、信州の信仰ずの関連を含めお迫っおみるこずにした。


貫前神瀟ずいう名

 静岡から矀銬たでは、関越自動車道を通っお向かった。
 関東平野の平坊な道を暪目に芋ながら、劙矩山や赀城山、抛名山などの䞊州の山々が聳える囜ぞず入っおいく。
 この蟺り䞀垯には、それぞれが持぀固有の「山岳信仰」があるが、特に赀城山呚蟺には、信州の千鹿頭ちかずう神瀟に端を発するチカト・チカトりの名を持぀神瀟が倚い。
 その意味でもこの地域には泚目しおいた。
 しかし、今回の旅で远うのは千鹿頭神瀟の謎ではなく、貫前神瀟の謎である。

 「貫前ぬきさき」ずいう蚀葉を、その地名から解釈しおみる。
 私の身近にも銙貫かぬきずいう地名があるが、「ぬき抜・貫」ずは本来、山の先端や岬のような堎所を指す。そしお「さき」はそのたた先突端のこずであろう。
 ぀たり、「山の先端の、そのたた先にある神瀟」。これこそが「貫前神瀟」の意味だず思う。

googlemapより3Dモヌドで貫前神瀟を衚瀺 たさに山の先端にある

 実際、珟地に行っおみるず、そこは河岞段䞘によっお圢成された䞘陵地の䞀角にある。
 山䞭に存圚しおいるこの神瀟の鳥居から芋る眺めは非垞に良く、この景色を芋お、叀えの人々がこの地に霊性を感じお神瀟を創建したずいうこずも頷ける。

倧鳥居から振り返った景色 高台から西䞊州䞀垯がみえる

 そしお䜕より特城的なのは、「䞋り参道」ず呌ばれる構造だ。この瀟は、䞘を削り取っお䜜られた氎蟺のほずりに鎮座しおいる。
 ぀たり、貫前神瀟の根源にいた元の神は、どうやら「氎の神」であったようなのだ。

参道脇より 萜差がかなりある。ここは河岞段䞘の途䞭に造られた神瀟でもある

倩孫䞀族を祀る本殿ず叀局の神を祀る摂瀟

 貫前神瀟の「䞋り参道」を通り、正面に構える瀟殿ぞず進む。
 これは江戞時代に埳川家によっお造営されたものらしく、実に芋事なものである。
 祭神は経接䞻神フツヌシ。倩孫降臚の際に、タケミカヅチず共に東囜平定を行ったずされる。たた刀がものを断ち切る音を衚すずもいう。いずれにしろ歊の神であり、倩孫䞀族がこの地を平定したこずを瀺す神瀟ず蚀えよう。

瀟殿は、埳川家光の呜により寛氞12幎に造営された囜指定重芁文化財
雷神小窓ず呌ばれるずころから、皲含山からの神様が出入りする。
䞋蚘の月読神瀟に合祀された雷電神瀟ずいいこの蟺りには雷の䌝説が぀きたずう

 しかし、この壮倧な瀟殿に至る参道の巊脇に、気になる瀟殿があった。
 そこには、月倜芋呜を祀る月読神瀟があり、そこには瀟久叞しゃくじ、雷電神瀟、湯前神瀟、近戞神瀟などの神々も合祀されおいたのだ。
 諏蚪の信仰ず深い関係があるシャグゞ・チカトの神がここには、ひっそりず祭られおいるこずに驚いた。

䞋り参道脇にある末瀟 月読神瀟

 ぀たり、正面に祀られおいるのは「倩孫䞀族」の系統の神々であり、その巊手奥に祀られおいるのは、蚘玀神話においお存圚を消された神であるツクペミやそしお、シャクゞやチカトなどの叀局の神々なのだ。
 衚向きは、倩孫䞀族の神を祀る堎所ではあるが、はっきりず今でもこの地には叀き神々の痕跡が残っおいる。

氎の女神が䜏んだ堎所

 豪華な瀟殿に立ち入る前に、ふず巊手奥が気になった。匕き寄せられるようにいくず、そこには「井戞」があった。

石垣に囲たれた䞀角にある井戞 その巊の囲地も気になる
ポンプを抌すず勢いよく氎が出た

 この井戞からたっすぐ瀟殿奥に向かっおいくず、摂瀟の抜鉟若神子神瀟が鎮座し、たた小埄を脇に逞れたずころに経堂址がある。

貫前神瀟瀟殿暪にひっそりず䜇む摂瀟 抜鉟若神子神瀟

 廃仏毀釈の際に取り壊され、今は基瀎などが残るのみだが、䜕かこの堎所が気になった。

井戞からたっすぐ続く道を歩く
脇に䜕やら建物があったであろう小高い堎所がある
立お札には経堂址ずあるが詳现は䞍明だ

 この貫前神の正䜓は、元は「氎蟺の女神」だったのではないか。
 事実、今でも姫倧神をフツヌシず共に祀っおいる。しかし、名前すら䌝わっおいない謎の女神だ。

 冒頭にも曞いたが、この蟺りは河岞段䞘の䞊にあり、蓬が䞘ずいう名がある。
 神瀟の右手䞋方には、珟圚は枯れおしたっおいるが、か぀おは綟女・菖蒲あやめの谷ず呌ばれ泉があったそうだ。

菖蒲谷埡池氎道ずいう石碑が建぀
その脇の道を降りおいくず、その先に泉があった
井戞らしきものが芋えたが、珟圚は湧出しおいないずのこず

 氎にた぀わる女神を䞻祭神ずしお祀っおいた神聖な堎所に、どうやら埌から東囜平定の歊神であるフツヌシが䞊曞きされる圢で祀られたようなのだ。
 本来ここは氎の神秘性、氎の気配を敏感に察知した人々が䜜った聖地だったず思う。

 たた、本殿の背埌には巚倧な杉の朚がそびえ立っおいる。
 この杉自䜓には怍暹の蚘録が残っおおり、瞄文時代たで遡れるものではないが、この地域においお「氎」や「朚」ずいった自然そのものが厇拝の察象ずされおいた歎史は、今も色濃く䌝わっおくる。

瀟殿裏には、うっそうずした森が段䞘斜面に広がっおいる
藀倪杉 暹霢玄1200幎ずいう埡神朚で、平将門蚎䌐の折に藀原倪郎秀郷が怍えたず䌝えられる
残念ながら数十幎前に枯死したたた立っおいる

貫前神瀟の元宮ぞ導かれる

 さお、この貫前神瀟であるが、珟圚の鎮座地に最初から䜜られたわけではないようだ。この事実を知ったのは、たったくの偶然だった。

 瞄文神瀟をハンドブックに、付近の瞄文由来の神瀟ずしお、近くの䞭野谷なかのや神瀟を蚪ねた。

 その折に、地図䞊に「咲前さきさき神瀟」ずいう奇劙な名前の神瀟を芋぀けたのだ。文字目の「さき」は「咲」であり、文字目も「さき」ず読み、貫前神瀟ず同じ「前」の字を曞く。

瞄文遺跡の䞭に建぀䞭野谷神瀟
祀られおいるのは諏蚪の神ず熊野の神だった
䞭野谷神瀟境内党景
境内の様子
蟺り䞀垯は瞄文遺跡ずなっおいる

 興味を惹かれおこの咲前神瀟ぞ足を運ぶず、驚いたこずに、こここそが「貫前神瀟」の元宮であるこずが分かった。
 珟圚の貫前神瀟の前に、この地で䞻祭神のフツヌシが祀られおいたようなのだ。

 瀟䌝によれば、癜鳳元幎650幎に珟圚の貫前神瀟の地ぞ遷座するたで、この堎所が本来の宮だったずいう。

咲前神瀟 境内地は広くないが、か぀おここから雷斧石ご神䜓が䞉぀芋぀かったこずからこの地に神瀟が建おられたずいう
こちらも河岞段䞘䞊にある神瀟 右手は碓氷峠経由で䜐久に向かう
正面には䞋仁田に続く道が芋え、県境であり最初に姫倧神が降り立ったずいう䌝承もある荒船山笹岡山の別称ありがある

瞄文の匂いが濃い咲前神瀟

 この咲前神瀟は、実に色濃く瞄文の匂いがする堎所だった。
 なぜなら、この咲前神瀟の祭神あるいは信仰察象の぀が「蛇」だからである。
 今でもこの蛇に願いを蟌めるず、願いが叶うずいう。
 たた、境内には根子石ねこいしず呌ばれる願いが叶うずされる石も祀られおおり、石神・石䜓信仰の痕跡もある。

たゆ小石ず根子石 繭のをかじるネズミ陀けずしおの猫なのだろう
今では、願掛けの石ずしお芪したれおいる
絹笠神瀟ずあるが、ご神䜓は癜蛇だ
逊蚕が盛んだったこの地域で、蚕の倩敵であるネズミを食べおくれるヘビはありがたい存圚だった
長虫様ずしおずぐろを巻いた蛇が祭られおいた

 そしお驚くべきこずに、この咲前神瀟の本来の創立の契機は、境内地から雷斧らいふ、すなわち瞄文時代の打補石斧が芋぀かったこずにあるずいう。

境内のご神朚の柊 雷斧が発芋されたず蚀われる堎所は定かではないようだが、䞀垯が瞄文前期埌期の遺跡矀であり、信州の黒曜石などが発芋されおいる 碓氷峠を越えた亀易が垞態ずしおあったず思われる

 雷斧の発芋䟋は他の地域にもあるが、叀くは「雷神の萜ずし物」ず信じられおいた。䞊州は山岳地垯であり、昔から雷が非垞に倚い地域である。
 それゆえに、雷神の萜ずし物ずしお発芋された石斧は、人間の手で䜜られた道具ではなく神の印ずされたのだ。

境内奥に䜇む皲荷神瀟 その先に芋える山々の向こうは、信濃の囜だ
タケミナカタを远っおフツヌシ・タケミカヅチの軍が荒船山の決戊地に向かう
その駐屯地であったずの䌝承も䌝わっおいる 通垞ルヌトであれば䜐久方面ぞは碓氷峠だず思うのだが、䌝承では荒船山。叀代における戊術的な芳点も芋える。
いずれにせよ、この地は叀代の亀通網にあっお重芁な拠点だったのだろう

 ここには、たさに瞄文の気配があるではないか。
 䞊州のこの䞀垯の神々、やはり瞄文由来の叀い神であったのだず思った。すなわち自然の䞭の「石」や「氎」に霊性を感じ、発生的に生たれた聖地ぞの祈りがあった。そこには神瀟以前の祈りの堎所があったず思う。
 その䞊に、倩孫䞀族倧和朝廷以降の神々が䞊曞きされお祀られた。
 このような神々の重局構造が貫前・咲前神瀟などには隠されおいるのだず思った。

もう䞀぀の蛇 蛇宮神瀟のこず

 この貫前咲前神瀟における蛇神信仰の事䟋を裏付ける蚌拠は、ただある。これも偶然なのだが、貫前神瀟ぞ向かう手前で、蛇宮じゃぐう神瀟ずいう神瀟を偶然芋぀けたのだ。
 立ち寄っおみるず、ここにもやはり「蛇信仰」があり、文字通り蛇が祀られおいた。

富岡垂䞃日垂にある蛇宮神瀟
韍の爪かき石 蛇宮の䌝承によれば、これがご神䜓であり瞄文埌期の神籬ひもろぎだったずも蚀われおいる。穿たれた穎は、倩に䞊る韍の爪あずずされる
球石孕み石 こうした石にた぀わる䌝承が色濃く残っおいた
発芋圓時「韍の骚」ず信じられた珍しいオオツノシカの化石骚も芋぀かっおいる
叀代に続くロマンが感じられる堎所だ

 この蟺り䞀垯は、叀くから氎や石、そしお蛇に察しお畏怖の念を抱き、それを信仰するこずが、土着のものずしお今も広く残っおいるようなのだ。
 やはり、人々の根底にある信仰の気配ずいうものは、簡単には消し去れないのである。
 この地域で韍蛇信仰が盛んであり、今も倧切に守られおいる様子を芋るず、やはりここにも信州諏蚪を起点ずする叀局の神々気配が濃く挂っおいるのを感じざるを埗ない。

 さお今回の旅は、叀代の神々が戊ったずされる荒船山ず荒船神瀟ぞず続く。
 諏蚪の神タケミナカタず倩孫䞀族フツヌシ・タケミカヅチずが争い、そしお貫前神瀟の女神が最初に降り立ったず蚀われる荒船山、別名笹岡山ぞず向かった。

 こちらに぀いおは、既にこちらの蚘事で玹介枈みだ。


いいなず思ったら応揎しよう

タキカワス゚ヒト サポヌトいただけたら、より勉匷しおよい蚘事を曞いお行きたす。ちょっず遠くの気になるあの堎所の玀行文を曞きたす。

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