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綺麗な手の彼女|掌編小説(#シロクマ文芸部)

    「ガラスの手みたいで綺麗」

     料理をする彼女の手を横から見て、そう言った。「白魚のような指」と言うのは、どうにも誉め言葉に思えないから。
     僕としては純粋に褒めたつもりだったが、彼女は「ガラスの手って、なんか血が通ってないようでイヤ」と笑いながら言う。

    「まぁ、確かに」

     バツが悪い僕に、彼女は「それに、『綺麗な手』って言われると、家事とか全然やってないみたい」と追い打ちをかける。

    「そんなことないよ! 料理も掃除も洗濯も、その他いろいろ……僕にはもったいない彼女だよ! ええっと、働き者の、ガラスのような綺麗な手をした素敵な女性!」

     汚名返上とばかりにまくし立てる。すると彼女は料理をする手を止め、僕の目の前にすっと左手を差し出した。

    「この手、好き?」
    「もちろん」
    「じゃあ、ストレートに『綺麗な手だね』でいいんじゃない?」
    「うん、そうだね……」

     ――無駄にカッコつけると、ロクなことがないな……。

     勝手に打ちのめされた僕に、彼女は「ふふ、ありがとう」と言って、また料理を再開した。

     ――まぁ、幸せだからいいか。

     結局、そこに落ち着く。

    (了)



    小牧幸助さんの「シロクマ文芸部」、参加用です。
    先週は途中まで書いて、結局〆切に間に合わず、無念のパス…。


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    茨城県で製造業(かなり珍しいもの)に従事しています。 現代ドラマの掌編、短編小説をメインに投稿中。 たまにピアノで西村由紀江さんの曲を弾きます。 ソリスピア第6回超短編小説祭入選。 第1回文苑堂54字の物語コンテスト最優秀賞&特別賞。 第12回自作小説の一節コンテスト最優秀賞。

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