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音声燻製|毎週ショートショートnote

     1年前から、なるべく声を出さないようにしている。
     歌手を目指し、喉を酷使し過ぎた結果、私の声はもう「声」と呼べるものではなくなってしまった。

     ある日、喉の治療のために通っている病院の前で、見知らぬ男に「あの、ちょっと」と声をかけられた。

    「声優、やってみませんか?」

     私はからかわれていると思い、「こンなこエデseiゆウなんてdeキルわkeなイでしょ?」と言った。

    「実に良い声だ」

     神妙な顔つきで頷く男に、呆気に取られた。

    「今の時代、綺麗な声を出せる人は腐るほどいます。あなたのような、まるで煙で燻いぶしたような、地の底から響いて来るような声を出せる人、いませんよ」

     私はただ、黙り込んだ。

    「そうやって声を出さないまま生きていくつもりですか? オンリーワンになりましょうよ、その声で」

     ――半年後。

    「あの悪役の声優さん、一体誰だ?」
    「マジでイイ声してる!」
    「ファンになった!」

     SNSで話題沸騰となった。

     私は身分を一切明かさないことを条件に、声優として活動している。

    (了)


    『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』


    たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
    今週のお題は「音声燻製」。

    あえて「音声」と「燻製」と言う言葉は使っていません。
    まぁ、モチーフとでも言いましょうか……。


    先週のお題は「告白雨雲」でした。

     
     
    茨城県で製造業(かなり珍しいもの)に従事しています。 現代ドラマの掌編、短編小説をメインに投稿中。 たまにピアノで西村由紀江さんの曲を弾きます。 ソリスピア第6回超短編小説祭入選。 第1回文苑堂54字の物語コンテスト最優秀賞&特別賞。 第12回自作小説の一節コンテスト最優秀賞。

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