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Photo byayaki_10ru

【ショートストーリー】そんな目で見ないで

    藤本 柊


    私の上で汗をかいて、息を荒らげた彼と、長い髪の隙間で目が合う。目の奥が熱く揺らめいて、髪をかきあげる彼の腕は、太く逞しい。

    日ごろの力仕事で培った筋肉、綺麗な広背筋。
    その整った顔に似合わない太い首に、ぶら下がるようにして、同じように汗をかく。

    西陽の入る部屋に、ぺちゃんこの布団。
    床に直に置かれた灰皿には吸い殻がこんもりして、脇にはマルボロとZIPPOライターが転がっていた。彼の誕生日に私が贈ったもの。

    私と彼の抜け殻も、雑に放られて。

    「俺は本気で好きになったヤツとしかしない」
    と頑なに守ってきたという貞操は、私の前でその箍がぷらんと緩んだ。

    エアコンが効かないせいなのか、二人のあまりの必死さになのか、あの部屋はいつも暑くて、ぺちゃんこの布団は湿っていた。

    静かに、身体を鍛えるときみたいな息づかいで、集中して抱く、彼の仕方が好きだった。

    下着をつけながら、吸いかけのタバコを差し出す彼は、清々しくて綺麗な目で、だから私はいつも一口だけ吸った。

    「お腹すいたね。」
    と言うのに、返事もしないで灰皿に吸い殻を押し付けて、その筋肉質なしょっぱい身体で覆い被さる。

    長い髪がサラサラと身体を這って、赤色に染まった西陽は、彼の目の奥にも宿ってしまう。

    きっとまた今日も帰りは遅くなる。

    彼がすっかり満ち足りて、大きな翼みたいな広背筋を、上手にTシャツにおさめるまで。

    小さな机と、平積みの漫画や雑誌と、棚に並んだCDと。コンポのスピーカーからは、the yellow monkeysイエモンが歌っていた。色あせた青いカーテンと、黄ばんだ効かないエアコン。

    いつも暑くて熱かったあの部屋。

    真っ直ぐなあの瞳に見つめられているうち、
    まるで私は、
    嘘をついているみたいな気がして。

    二人「寒いね」と温め合う冬が来る前に、
    私は「ごめんね」と彼の髪を梳いた。


    #みくまゆ会
    #チャレがや
    #嘘
    #みくまゆたんさん
    #コッシーさん

    みくまゆたんさん、小説家デビューおめでとうございます!!本当にすごいっ✨
    ささやかな応援のつもりで、チャレがや企画『嘘』に参加させていただきます。
    過去作のリメイク作品です。
    いろんな嘘がありますね。優しい嘘、かわいい嘘、くだらない嘘、つくつもりのなかった嘘。

     
     
     
    創作大賞2025中間選考通過・恋愛小説部門『Borderless 青いぬくもり』 OKAMURA×note#いつもの場所に座ってグランプリ受賞 #なんのはなしです珈ZINE掲載 まなざしを。 小説より詩的で、詩より物語的な詩的散文

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