「理想を下げれば会える」は半分だけ正しい。婚活の条件の話
条件で選ぶとまた会いたいは全然違う
飲食店のお手伝いをしていると、お客さんがお店を選ぶときの話を聞くことがあります。
「口コミの点数が高かったので」「駅から近かったので」「個室があるって書いてあったので」
初めて来るお客さんは、だいたいこういう条件で選んでいます。点数、場所、値段、雰囲気の写真。それは自然なことだと思います。行ったことのない店を、他に選びようがないので。
でも、また来てくれるかどうかは、その条件ではほとんど決まりません。
店員さんの感じがよかった。グラスが空くころに、ちょうど声をかけてもらえた。なんとなく居心地がよくて、気づいたら長居していた。常連さんになってくれる人に理由を聞くと、だいたいそういう答えが返ってきます。口コミの点数を理由に通ってくれる人は、あまりいません。
選ぶときに見ているものと、また来たくなる理由は、別のところにある。
婚活の場を見ていると、これとまったく同じことが起きているなと思います。
婚活には、審査が2回ある
アプリでも結婚相談所でも、最初は条件で相手を選びます。年齢、住んでいる場所、仕事、写真。そこを通った人とだけ、会う約束をする。
これが1回目の審査です。「会うかどうか」を決める審査。
そして、実際に会ったあとに2回目の審査があります。「また会いたいかどうか」を決める審査。
この2回目で見られているのは、プロフィールのどこにも書いていないものです。前の記事で書いた、顔が好みかどうかと、話しているうちに興味が失せないかどうか。
お店でいえば、1回目がグルメサイトで、2回目が実際にお店に入ってからです。
条件は、会う理由にはなります。でも、また会う理由にはほとんどなりません。
会った時点で、条件の差はもう消えている
もう一つ、見落とされやすいことがあります。
会った相手は、すでにあなたの条件を通過した人です。そして相手から見たあなたも、相手の条件を通過しています。
つまり、会った時点で、お互いの条件はだいたい満たされている。そこから先は、条件で差がつかない場所に入っています。
お店の話でいうと、「口コミ4点以上、駅から5分以内」で絞った候補の中から、何軒か実際に行ってみたとします。どのお店も条件は満たしている。だから、次もまた行くお店を決めるときに、点数や駅からの距離はもう判断材料になりません。
婚活でも同じで、年収や身長で「会う」までは進んでも、そこから先はそれで選ばれるわけではない。
ここを混ぜて考えてしまうと、うまくいかない理由を探す場所を間違えます。
2回目につながらないのに、プロフィール写真を撮り直す。自己紹介文を書き直す。条件の欄を見直す。どれも1回目の審査の対策です。会える数は増えるかもしれないけれど、会ったあとに次がない、という悩みはあまり変わりません。
「理想を下げれば、うまくいく」は本当か
婚活でよく言われるアドバイスに、「条件を下げれば結婚できる」というものがあります。
これは、半分は合っていると思います。
1回目の審査の話としては、ちゃんと意味があります。条件を広げれば候補が増えて、会える人も増える。そもそもマッチしない、会う約束までいかない、という人には効くことが多いはずです。
ただ、「会えるのに続かない」人にとっては、話が違います。
条件を下げても、2回目の審査は何も変わりません。相手が「また会いたいか」を決めるのは、あなたの希望条件ではなく、一緒に過ごした時間のほうだからです。
むしろ、会う人数だけが増えて、初対面を毎週のように繰り返すことになる。そういう時期の人を見ていると、自己紹介がどんどん同じ言い回しになっていきます。仕事の話、休みの日の話、出身の話を、同じ順番で。本人は慣れてきたと思っているけど、横から見ると、ちょっと疲れて見えます。
条件を広げてみたけど何も変わらなかった、という人は、下げる場所が違ったんだと思います。直すべきだったのは条件ではなく、会ってからのほうでした。
条件の話が多い席は、続きにくい
パーティのような場で見ていても、この違いは出ます。
つながりにくい二人は、最初の時間が条件の確認になりやすい。「お住まいはどのあたりですか」「お仕事は忙しいですか」「ご兄弟は」。プロフィールカードに書いてあることを、口頭でなぞっていくだけ。
答えるほうもちゃんと答えるので、会話としては成立しているように見えます。ただ、一つ答えが返ってくると、すぐ次の項目の確認に移ってしまう。そうやって確認が終わったあたりで、急に話すことがなくなる。ドリンクを運びに行くと、ちょうど二人とも黙っている、ということがよくあります。
一方で、帰り際に楽しそうにしている二人が話しているのは、ほとんど条件と関係ない話です。相手が頼んだお酒を一口もらったときの反応とか、同じところで笑ったとか、二人ともお酒が弱かったとか。
どれも、プロフィールには書けないことです。
1回会っただけで決めるのは、早すぎる
もう一つ、伝えておきたいことがあります。
2回目の審査を、1回会っただけで終わらせてしまうのは、けっこう危険です。
お店の話に戻すと、初めて来た日がたまたま混んでいて、頼んだドリンクがなかなか来なかった。店員さんもバタバタしていて、ゆっくり話せなかった。それだけで「この店はいまいち」と決めて、二度と来ない人もいます。
でも、常連さんに話を聞くと、「最初に来たときは、正直そんなに印象に残らなかった」という人が意外と多いんです。二回目、三回目と来るうちに、居心地のよさに気づいた、と。
婚活でも、初回はお互いに緊張しています。
普段はよく笑う人が、初対面だと表情が硬い。話すのが好きな人が、初回は様子を見て聞き役に回る。本来の感じが出るのは、だいたい二回目からです。何度か来ている人を見ていても、初めて来た日と、慣れてきた日とでは、別人みたいに話しやすくなっていることがあります。
だから、1回会って「なんか違ったな」と思った相手でも、顔が無理というわけでなければ、もう1回だけ会ってみる価値はあります。
前の記事で「顔が好みじゃないなら、次に行けばいい」と書きました。それはその通りです。ただ、「話がいまいちだった」くらいの理由なら、それは相手の緊張だった可能性もある。1回で切ってしまうと、2回目で見えたはずの部分を、見ないまま終わらせることになります。
条件で選ぶときは慎重なのに、会ったあとの判断は1回で済ませてしまう。これも、2つの審査を混ぜて考えてしまうことで起きている気がします。
今日からできることを、1つだけ
次に誰かと会うときは、プロフィールに書いてあることを、確認で終わらせずに、話のとっかかりにする、と決めてみてください。
プロフィールの話をすること自体は、全然いいと思います。初対面で何を話せばいいか分からないときに、いちばん自然に使える材料なので。
問題は、「お仕事は何を?」「営業です」「そうなんですね。お休みは?」と、答えを聞いたら次の項目に移ってしまうことです。これだと、会う前に知っていたことを口頭でなぞっただけで終わります。
とっかかりにする人は、同じところから入っても、そこから一歩進みます。「営業なんですね。外回りが多いんですか?」「どういうときに、この仕事やっててよかったって思います?」。そうすると、プロフィールには書いていない、その人の考え方や好き嫌いが出てくる。そこで共通点が見つかれば、会話は勝手に転がっていきます。
プロフィールは入口として使って、中身は会ってから聞く。会っている時間は、2回目の審査のために使ったほうがいい。
最後に
お店を選ぶとき、口コミの点数を見るのは悪いことではありません。婚活で条件を見るのも同じです。
ただ、条件は入口までの道具で、そこから先は別の話。見ていると、そこを分けて考えられる人ほど、会ったあとの時間を大事に使えている気がします。
あなたが「また会いたい」と思った人は、プロフィールのどこに、その理由が書いてありましたか?
