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今週の構図(9/27〜10/3)前編|原油は戻ったのに、なぜ軽油は最高値なのか

ニュースを毎朝読んで、分からないところを一つずつ調べています。この連載は、その週に起きたことを「何が起きたか」「どう読めるか」「誰が払うことになるか」の三つに分けて書くものです。

書いた内容は出典に基づいています。記事のリンクは末尾にまとめています。

原油は戻った。でも軽油は最高値

何が起きたか
中東からの原油の輸出量が、9月に戦争前の水準まで戻りました。ただしこれはイランを除いた数字です。
イランの輸出は止まったままで、戻ったのはサウジや UAE など他の産油国の分です。ホルムズ海峡を通らずにサウジのパイプラインで紅海側へ回す分が、戦争前の17%から40%に増えたからです。海峡を通る船も、米海軍の護衛付きでオマーン沿岸を往復し、沖で別の船に積み替えています。

ところが軽油(ディーゼル)の値段は、英国で1リットル約200ペンス、米国で1ガロン6.5ドルと過去最高です。米政権は独仏に「備蓄の軽油を放出しなければ米の軽油輸出を止める」と迫り、翌日 G7 が「軽油5000万バレルと原油5000万バレルを4か月で放出する。米は輸出禁止をしない」で手を打ちました。

どう読めるか
石油には二つの段階があります。地面から出たままの「原油」と、それを製油所で精製して作った軽油・ガソリン・ジェット燃料などの「石油製品」です。
中東は原油だけでなく、石油製品も大量に輸出していました(2025年は日量330万バレル、主に欧州とアジア向け)。欧州は使う軽油の7割しか自分で作れず、残りを中東などから買っています。

ところが、原油の迂回路は石油製品には使えません。サウジのパイプラインも沖での積み替えも、運んでいるのは原油です。だから原油は戦争前に戻っても、ホルムズを通る石油製品は戦争前の2割以下のまま。
さらにサウジの製油所が攻撃で止まり、ロシアは軽油の輸出を制限し、中国は10月の燃料輸出を止めました。
原油を軽油に変える口が、世界で同時に細ったのです。値段を決める場所が「原油」から「精製」に移った、と読めます。原油先物だけ見ていると、この変化は見えません。

どこにしわ寄せが来るか
日本の店頭の軽油・ガソリン価格は、原油が下がっても石油製品が足りない間は下がりにくい(からくりは後述)。

影響を受ける業種は、精製(もうけの幅が広がる)、運送(燃料費が上がる)、そして政府の燃料補助金(税金で差額を埋める)です。

2. イランが「保険会社」を脅し始めた(別稿で詳しく)

イランが「ホルムズ海峡当局」の名で、通航の要件に従わない船を「非準拠リスト」に載せ、保険会社と船級協会に「非準拠船に関わるな」と警告しました。
同じ日、日本政府はロシアの「影の船団」35隻に保険・修理・資金の提供を禁じています。日本を含む欧米がロシアに使った「保険を止める」手法を、イランが逆向きに使い始めた形です。

日本向けの原油は、米海軍の護衛で沖積み替えという、イランの言う「非準拠」に当たる可能性が高い形で届いています。日本は同じ日に、保険を止める側と止められる側に立った。この話は別の記事に切り出しました。→ [別稿:日本は同じ週に、保険を止める側と止められる側に立った]

仕組みひとつ:店頭の値段は二層でできている

日本の軽油・ガソリンは、輸入した原油を国内の製油所で精製して作ります。だから店頭価格の土台は「原油の値段×為替」です。ここは原油に連動します。

その上に、製油所の取り分(精製マージン)が乗ります。この取り分は、世界の石油製品の価格で動きます。世界で軽油が高ければ、国内の製油所は輸出すれば高く売れるので、国内向けにも同じ水準を求めることになります。売り手に「外に売る」選択肢がある限り、国内の値段は世界に揃っていきます。元売の卸価格が、アジアの石油製品市場(シンガポール)の値段を参照して決まるのはこのためです。

さらに税金が上乗せされ、政府の燃料補助金の分が差し引かれます。補助金が効いている間は、店頭価格は政府が決めた水準で頭を抑えられ、差額は税金で埋められます。

だから起きること。原油が下がっても、世界の石油製品の価格が高いままなら、製油所の取り分が広がって店頭は下がりにくい。今は原油が戻って石油製品が足りない局面なので、原油の見出しだけ見ていても店頭の動きは説明できません。

後編はこちら
別稿はこちら

出典

参考(中東の軍事の動き):

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