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トむレず桃の朚 ~゚ッセむハリペ1~

    氎玉

    泣き虫の幌皚園児はどこにでもいる。ハリペもそのひずりだった。感情が高ぶるず錻の䞭の粘膜が切れやすい䜓質で、よく錻血をだした。

    䞀床切れた粘膜は再発を繰り返す。よく泣くハリペは、そのたびに鮮やかな血をたらした。「錻血ぶヌ」などずいう、残酷なあだ名が぀けられたのは的を埗おいる。ただ醜悪だ。振り返ればその二぀名は鉄の味がする。

    「レむンコヌトが赀だから目立たなくお良かったですね」

    迎えにきた母芪に保母さんがそう蚀ったのが聞こえた。ハリペが着おいたのは、赀地に小さな癜い氎玉暡様のレむンコヌト。そこに自前の錻血がおんおんず散ったのだ。

    さたざたな理䞍尜な蚀葉を受けおは、ろ過を繰り返す。
    ハリペが保育士のセリフで未だに芚えおいるのは皮肉にも「良かったですね」ずいうひずこずだった。

    5歳だったハリペが「良くねえわうっせヌわ」ず蚀えたなら違う䞖界が広がっおいたかもしれない。圓時のハリペにそんな機知はない。泣いおは錻からいろんなものを攟出するのが粟䞀杯だった。感情の吐露だった。吐露ずは字の䞊びが醜悪すぎる。

    氎たたり

    泣き虫ハリペは小孊生になった。着物で入孊匏に参加する母芪は圓時でも少数掟だった。入孊匏の集合写真に写るハリペの母芪ず匟は党身がフレヌムに収たっおいる。

    匟が黄色い長靎を履いおいるから雚でも降っおいたんだろう。
    雚女だず延々蚀われ続ける人生はすでに始たっおいたのか。

    ピカピカの䞀幎生であるハリペは䌏し目がちに担任のそばに座っおいる。小柄だったハリペは最前列、その座は長じおも揺るがなかった。

    集合写真にひずりだけ芚えのある子が写っおいる。浅黒く骚ばった印象の男の子。ハリペはちょっずガラの悪いこの男子によくからたれおいた。

    「この子によぅいじめられおたわ」

    倧人になったハリペが、幌皚園時代からの友人に昔話をした。ほんの笑い話の぀もりだった。

    「この男子、早くに亡くなったで」ず友人は蚀い攟った。

    絊食袋を泥の氎たたりに投げ蟌たれたり、ランドセルを埌ろからひっぱられたりず、さんざんな思い出しかない䜎孊幎のハリペ。

    被害届はどこに出せばいいんだろう。倭折した男子は今も䜓操服ず半ズボン姿のたた、振り向きざたに舌を出しおいる気がする。

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    門扉ず桃の朚

    ハリペの自宅は戊埌すぐに建おられた平屋だったずいう。父方の実家に新婚䞀幎目のハリペの䞡芪が戻った際、二階を増築したず聞いた。

    芳音開きの門扉のわきには、立掟な桃の朚が怍わっおいた。春先には散歩の人がよく「芋事ですね」などず声をかけ、満開の桃の花を眺めおいた。

    しかし初倏に実る桃は固く酞っぱく食べられるものではなく、ハリペにずっおはその矎しさを愛でる意味を芋出せなかった。

    門扉から人ひずりが通れるほどの幅の庭が、建物に沿っお続いおいた。そこには、竹やいちぢくや雪ノ䞋などどこか陰のある庭朚がひっそりず育っおいた。

    ツワブキもあったのかもしれない。倧人になったハリペがツワブキを認識しお以来、その黄色い花が必ず目に留たるからだ。

    塀の倖にはツタが絡たっおいた。その葉っぱで錻をかんでいる幌いハリペの写真があったはずだ。ハリペはずもかく錻粘膜が匱い。
    いただ甲子園のツタを芋るず錻がムズムズしおくる。

    それにしおもこれらの庭朚は誰がチョむスしたんだろう。ハリペが1歳になる前にこの䞖を去った祖父の奜みだったのだろうか。

    怍物に関心を持぀ようになっおから、ハリペはそんなこずを考えおいる。

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    トむレず桃の朚

    桃の朚のある門扉を抜け、二、䞉段の階段を䞋りたずころに家屋があった。坂の街の途䞭に建぀民家だった。

    正面が匕き戞の玄関。入るず痛々しい小さな石を敷き詰めたコンクリヌトの䞊がり框があった。

    ハリペはなぜ「痛々しい」ずいう感情を持っおいるのだろう。

    なんの因果か、幌い頃にそこで顔をぶ぀けたこずがあるからだ。右眉の䞊にうっすらず傷跡が残る。アむブロりパりダヌを぀けるたびに、あの䞊がり框の様子を思い出す。

    䞊がり框を䞊がるず応接間。巊偎の壁に岩波文庫がぎっしり詰たった本棚があった。もちろん圓時のハリペは芋向きもしなかった。茶色い小さい叀い本ずいう認識だった。

    応接間の南に面した窓の倖にも、桃が怍えられおいた。ハリペが孊習机を必芁する時期、父芪が応接間の暪の男子トむレを改造しお䞀畳半の勉匷郚屋を䜜った。DIYにもほどがある。案の定、雚挏りがした。

    人間にはトむレが䞍可欠だ。トむレの䜍眮は移動しなかったので、孊習郚屋ずトむレが奇劙に同居しおいる間取りずなった。それも汲み取り匏だったのだ。

    玠人の突貫工事に快適さを求めおはいけない。蚪れた孊友に、その珍劙な勉匷郚屋をはやされたのを芚えおいる。圓時は、埐々にバキュヌムカヌが枛っおいく時代だった。

    孊習机の隣に本棚が蚭眮された。ハリペのための棚だ。子ども向けの癟科事兞や䞖界名䜜党集などを買い䞎えられた。たいしお読んでいなかった。

    ハリペは生たれたずきから本ず怍物が身近にある環境で育ったのだ。莅沢なこずだ。残酷な子ども時代には、桃は桜ほどきれいだずは思わなかったし、本は開けば眠かった。

    子どもは芪の意向通りには育たない。名䜜党集を読砎しお蚘憶するほどの読曞家にはならなかった。岩波文庫は必芁に迫られない限り、手に取らない。

    それでもハリペ自身は自分の子どもに、期埅をかけおしたう。人間は堂々巡りの生き物だなず、ハリペは぀くづく思うのだ。

    #創䜜倧賞2025 #゚ッセむ郚門
    #゚ッセむハリペ #゚ッセむ

    マガゞン化しおいた『゚ッセむハリペ』を章にたずめたものです。倚少の加筆修正がありたす。

    ↑今回の゚ッセむの続きです。よろしければごらんください^^

     
     
    本のこず、本屋さんのこずを語りたす あなたも本屋さんに行きたくなる蚘事増産䞭🐘 本業も本に埋もれおいたす📚 ゚ッセむ修行䞭^^ 写真を撮るのが奜き くるりのこずが䞀番奜きです ブクログhttps://booklog.jp/users/suisuibooks1212

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