
大根三本のわらしべ長者——手抜きと手仕事、大事に食べたい美味しいもの
普段は家事の時短に励んでいて、それこそが効率化だと思っているのですが、たまに無性に、丁寧に作ってみたくなることがあります。
今日はそんな、わが家の「手抜き」と「手仕事」のお話です。
立ち話から、わらしべ長者?
2026年3月、福岡県朝倉郡東峰村で「光の道」が見えるという話を聞きつけて、夫とふたりで出かけた時のことです。
美しい光景を堪能して帰ろうとしていると、不意に、見知らぬご老人から声をかけられました。 東峰村の良いところ。ちょうど春でしたから、この冬の積雪の話——。
私たち夫婦は五十代も中頃に差しかかったところ。転勤族ということもあって、老後はどこで暮らそうかとちょうど話していた最中で、「静かでいいところだなぁ」と感じていたこともあり、ご老人のお話をニコニコと聞いていたのです。
気づけば辺りには誰もいなくなり、夕方も遅くなってきました。
「良かったら、野菜、持って帰らんね」
ご老人がニコニコとそう言ってくださいました。 過疎の村なので、庭で家族の食べる分だけ野菜を作っているのだそうです。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
とご老人のお宅に立ち寄ると、畑から抜いたばかりの立派な大根3本と大きな白菜を、米袋に入れて持たせてくださいました。
「また来るから、その時はお礼を持って来るね」
そう約束して、帰宅したのでした。
さて、家に帰ってあらためて眺めてみると、立派すぎる大根。夫婦ふたりではとても食べ切れません。 社宅住まいなので、加工しようにも日干しするスペースがない。 そこで、日干ししなくても作れる"たくあん"を知っていたので、初挑戦してみることにしました。
大根は皮ごと使うので、たわしで綺麗に洗います。洗い上がった白くてピカピカの大根を半分にして、さらに八等分に切ってみます。 日頃、砂糖は使わないので甜菜糖を買ってきて、塩と酢と共にジッパーバッグへ。軽く揉んで溶かしたら、大根を入れていきます。

白菜をいただいた時に浅漬けにすることはあっても、たくあんは初めてです。 ジッパーバッグを閉じて横にして……漏れるのが怖いので、大きめのイチゴのパックに入れて、全体が液に浸かるように。
もちろん残り半分は、炊飯器にうどんスープのもとと一緒に入れて、炊飯モードで"ふろふき大根"に。 味噌とはちみつを合わせた自家製の甘味噌や辛子でいただくと、蕩けるような柔らかさです。

「他におかずは要らないね」と言うくらい、夢中で大根を貪るわれら夫婦……。 採れたて野菜の美味しさ。ご老人の優しい笑顔。 気づけば話題は、見てきたはずの光の道ではなく、ご老人との会話のことばかり。
「お孫ちゃんのこと、誇らしげに話されてたね。たまに帰ってきたら、きっと畑から野菜をとってきて食べさせてるんだろうね」
その後も折々に、ご老人の話が食卓にのぼるのです。
大根がたくあんになるまで
さて、ジッパーバッグに入れた大根はと言うと、一日二回、上下を入れ替えて、まんべんなく漬かるようにしていました。 漬けた翌朝にはもう、浸透圧で出てきた大根の水分でジッパーバッグはパンパン。 その水分も大事に揉んで砂糖と塩を溶かし、くるくると漬けていきます。
漬けて三日目。試食をしてみることにしました。

まだ少し漬かり足りていませんが、それでもすでに美味しくて……。 皮を残しているので外はコリコリ、実の部分はシャキシャキ。 「これはもう少し漬けた方が美味しくなるな……」と思いながら、残りをまた毎日くるくると上下にひっくり返して。
気づけば2週間。お酢の酸味も抜けて、いい塩梅になりました。 浅漬けや梅干しとはまた違う、皮も含めて丸ごといただけるたくあん。冬ごとの恒例にしてもいいかな、などと思ってしまいました。
生姜の甘酢漬けは辛い方が好き
昔は梅干しや梅酒を漬けていましたが、最近のお気に入りは、紅ショウガ——というか生姜の甘酢漬けや生姜シロップを自分で作ることです。
新生姜をスライスして、赤いところを少し残しておきます。私はスライサーが苦手で厚めに切ってしまうので、お湯で数分茹でてから、甘酢に漬け込むだけ。 茹で時間が短いせいか、私の甘酢漬けは少し辛めに仕上がります。 なので食べる時は千切りにして、いなり寿司に入れていただくのが定番です。
酢漬けはキャベツでも作ります。苦手な千切りをがんばって、塩もみして酢漬けに。発酵まではさせないのでザワークラウトとは違いますが、それでも粒マスタードと合わせると美味しいのです。
らっきょうは漬けるのが面倒なので、市販のものを買ってきてお酢を足しています。 甘いらっきょうはどうも苦手なようで……。 みじん切りにすれば、ピクルスの代わりにタルタルソースのもとにもなります。
食欲がない時に食べたい焼きおにぎり
更年期突入と同時に糖尿病になってしまった私ですが、実はそこまで切羽詰まった状態ではなく、弱めの薬を飲みながら食事管理をしています。 絶食治療の話も出たのですが、そもそも食事は一日一回から二回。一人前は食べきれないので、体重の割に必要カロリーがとれていないのが現状です。
美味しいパンは好きですが、腹持ちを考えるとお米が食べたい。でも、お米そのままはどうも苦手。 普段は納豆茶漬け、梅茶漬け、洋風ならチーズリゾット。 おかずは噛めるのに、ご飯はできればさらさらと飲み込みたい——というのが本音です。焼きおにぎりを除いては。
焼きおにぎりの香ばしさ、食感、におい。萎えた食欲を刺激してくれるのです。 ここからは、私が特にお気に入りにしている焼きおにぎりの食べ方です。
まず、節を使うこと。鰹節だけでなく、最近はいろんなお魚のけずり節が出ています。醤油と混ぜて握ります。 自家製のネギ味噌で風味よくするのも好きです。
以前のnoteにも書いたように、レンジで簡単にネギ味噌が作れるので、作ったら表面に塗って焼いています。 焼き方もフライパンではなく、180度のオーブンで20分、じっくりと。 なるべく小さく握って、カリカリの部分を多くするのが美味しさのコツ。小さく作って、カリカリを存分に楽しんでいます。
カリカリポテトサラダ
カリカリと言えば、ポテトサラダも一度オーブンで焼きます。 新じゃがを皮ごと茹でて、瓶の底でつぶして広げたらオーブンへ。表面がカリカリになるまで焼いて、ヨーグルト・マヨネーズ・はちみつ少々を混ぜたソースに入れるんです。 粒マスタードを少し足しても美味しくて、お箸が止まりません。
時短料理、大好き
スペアリブは焼くもの???
わが家では、スペアリブは漬け込んでオーブンで焼くのが流儀です。 「普通の家は煮込むものらしい」と知ったのは、実家を出た後のことでした。 実家でどう漬け込んでいたのかは分からないのですが、私流は、中濃ソース・ケチャップ・ニンニク・はちみつを混ぜて漬け込んで焼くだけ。 漬けてオーブンに入れるだけで済む手軽さが気に入っています。
なんちゃって西京漬け
魚はいったん味噌に漬けています。 味噌とはちみつを混ぜたものに直接漬け込むのです。焦がさないためにはペーパーなどに挟んで漬けた方が良いのですが、面倒なので直接漬けて、ホイル焼きの状態でオーブンへ。
シリコン調理器で温野菜
野菜はシリコン調理器に入れて、レンジで調理しています。 キャベツの千切りは支える左手がもたないし、スライサーは苦手で毎回流血しちゃうし……。 というわけで、シリコン調理器に入れてレンジで温めて、そのまま食卓に出しています。
そういえばわが家は、フライパンのまま、レンジ調理器のまま、という食卓が多いです。小皿に取り分けたり、ご飯の上にのせたり……。 転勤族なので食卓は折り畳みのちゃぶ台ですが、その上には鍋敷きが置かれたまま。洗い物を減らすためにも、そのままでいただいています。
人付き合いから教わる手仕事
目から鱗のかき揚げ
野菜は本当はあまり好きではないし、揚げ物も苦手なのですが、かき揚げだけは別。 細く切った野菜をサクサクと食べる食感がたまりません。
かき揚げも、当初は作ったことがありませんでした。子どもが小学生の頃、公民館の老人会のお手伝いをしていた縁で、子ども会の流しそうめんの時に老人会が天ぷらを作ることになり、そのサポートについたことで、いろいろな天ぷらのコツを教わったのです。中でも特に目から鱗だったのが、野菜のかき揚げでした。
細く切ったにんじんと玉ねぎに、軽く粉をまぶすだけ。あとは野菜から出る水分でまとまったところで揚げる。 苦手な衣がほとんどなく、サクサクの仕上がりに。同じく教わった、片面だけ天ぷら液につける大葉の揚げ方は息子のお気に入りで、時折作っていました。
昼休みの唐辛子味噌
保健所勤務の頃、休憩時間はアルバイトの主婦だけで過ごしていました。 私は基本、寝ていることが多いのですが、たまに「これ作ったから食べて」とご相伴にあずかるものがあります。 その中のひとつが、唐辛子味噌でした。
青唐辛子を使ったそれは辛くなく、「青唐辛子だからだよ」と聞いて、いつか作りたいと思っていました。 アルバイトのみんなは自宅に庭があったり、実家が家庭菜園をしていたり。社宅住まいの自分には、青唐辛子は手に入らないものだったのです。
保健所を退職し、主人の転勤に付き合って田舎(ごめんなさい)の方へ引っ越したり、旅行で道の駅に立ち寄ったりするうちに、手に入るようになりました。 わが家では私しか食べないので、数本をみじん切りにして炒め、味噌と砂糖で味付けます。炒め足りないのか、やや辛め。でも、むしろシャキシャキの食感も相まって美味しいのです。 あとはジッパーバッグに入れて薄く延ばして冷凍。必要な分だけパキッと割って使います。 焼いた肉に添えると最高です。
洗い片づけは、何故か主人が
料理をするのは大好きです。手抜き料理だってプロセスの一環ですし、そもそも手順を組み立てて進める「マルチタスク」な作業が大好きなのです。 苦手なのは後片付けと掃除……。
B型なので、手元に自分の使うものさえあればそれでいい、というのが私のスタイル。片づけるのは、二年に一度、主人の転勤で引っ越す時だけ……。 最近は段ボールを開けることもなく、パソコン3台と読みたい本、ヘッドホンや展示会の道具だけ出して、あとは押し入れに段ボールが積まれたままです。
あと数年で、主人も定年。 そうしたら、どこかに定住することになるのでしょう。 東峰村のご老人のように、庭で野菜を育てる暮らしも、もしかしたら——。
そうなれば、また暮らし方も変わるのかもしれません。 手仕事をしながら、手抜きをしながら。これからも上手に、美味しく生きていきたいと思います。