
Second Wind|第26話 不穏な知らせ[唯]
Second Wind
第1章『Superstar』
第26話 不穏な知らせ[唯]
「イクスさん、怪我をしたらしいわ」
その話を聞いたのは、スペイン国内でも最高級に位置するホテルの一室でのことだった。
「え……いったい、どうしたの?」
大きなパラソルのが置かれたベランダのテーブルで台本を開いていた私は、思いがけない知らせに驚いて京子さんを振り返った。
「何だか、海外のテレビの仕事だとかで、剣舞の特訓をやっているのだそうよ。……ステージ活動がメインだと思っていたけれど、あれほどのトップグループになってもいろんなことをやらせるみたいね、あの、ARKLINEプロジェクトというのは」
「撮影には……響かないのかしら。怪我をした場所は、どこなの?」
このところ疲れた表情をよく見かけていただけに、内心では彼にひどく同情していた。が、ただでさえ短いこのスペインロケの撮影日程を考えれば、これは明らかに非常事態だ。
「…あら、さすがはプロというところかしらね。場所は、足だという話よ。さしあたりこちらとしては、ベッドシーンに差し支えのない箇所で不幸中の幸いという感じかしら」
そう言って、京子さんは少し意地悪な目つきで私を見たが、それでも私の敏腕マネージャーがさまざまな理由からイクスさんを心配していることが手に取るようにわかった。
その証拠に。
「……あいにくね。彼も、今度のシーンはいつも以上に緊張しているでしょうに」
言って少し考えるような表情になると、彼女はもう一度監督と打ち合わせをし直すと告げて、部屋を出て行った。
*続き | 第27話 めぐり逢いの地[唯]
*目次 | 長編小説『Second Wind』