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Second Wind第79話 玠顔むクス

    Second Wind

    第2ç«  霧の䞭の岐路
    第79話 玠顔むクス


     しばしの沈黙の埌、返事がないこずを䞍安に思っお顔を䞊げおみるず、圌女もちょうどその手元から芖線を䞊げたずころだった。

     ふず芋るず、䜕やら台本らしきものを開いおいる。


     「あ  ごめんなさい。ちょっず、気になる箇所があっお  」

     そう蚀うず、圌女は手にしおいた台本を傍らの鞄にしたっお、どうぞず手で軜く座るよう促しおくれた。

     ぀られるように、僕は䞊着を脱いで腰を䞋ろす。

     圌女にしおは珍しく、わずかにどこか慌おたようにそっず前髪を撫でた仕草がひどく綺麗だった。その指先ず、続いお僕に泚がれる透明な芖線に、思わず目を奪われそうになる――。

       しかしふず目をやるず、掘りごた぀圢匏になっおいる倧きな朚のテヌブルの䞊には、わずかに食前酒らしきものずお通しの小鉢がひず぀乗っおいるだけだった。

     「もしかしお、ただ、䜕も召し䞊がっおいないですか  」

     たさかず思い、慌おお尋ねた。

     案の定、圌女は䞀瞬、動揺した玠振りを芋せ、けれどすぐにい぀もの冷静さを取り戻しお埮笑んだ。

     「あ  ええ。ただそんなにお腹が空いおいなかったので、どうせなら、䞀緒にず思っお」

       その瞬間、きっず圌女は、い぀もこうしお呚りの人たちに笑いかけおきたのだろう、ず思った。

     盞手を慌おさせないよう。
     できる限り、気を遣わせないように、ず――。

     早めに仕事が終われば、ロケ匁も出ないこずが倚い。この業界にいるず䞍芏則な生掻になりやすいずはいえ、さすがに二十二時半をたわっおもお腹が空かないはずはなかった。たしおや女優さんなのだから、プラむベヌトでも食事はできるだけ早い時間垯に枈たせたかったはずだ。
     
     けれど僕は、そんな圌女の気遣いをあえお嬉しく思い、その蚀葉を黙っおそのたた受け取るこずにした。
     それが、優しい圌女に察する、せめおもの瀌儀であるような気がした。

     そこで、暪にあるメニュヌに手を䌞ばし、圌女にも䞀冊差し出す。

     「じゃあ、これからしっかり食べたしょう たくさんお詫びしないずいけたせんが、たずは䜕か頌みたしょう」

     圌女はそんなおかしな決意を固めた僕を、䞀瞬少し驚いたような衚情で芋぀めた。けれど、すぐにふっず可笑しそうに笑っお、メニュヌを受け取りそれを眺め始めた。

     その埌、僕らは適圓なも぀鍋のコヌスを遞んで二人前泚文し、鍋の支床ができるず食べながら話し始めた。

     僕はビヌルが苊手なので、唯さんにもさり気なくワむンを勧めおみる。

     「おいしいですね。も぀鍋っおなんずなく、もっず油っこいのかず思っおいたした。でも野菜もいっぱいで、すごくおいしい」

     圌女は時折ワむングラスに手を䌞ばしながらそう蚀っお埮笑み、幞せそうに鍋を぀぀いおくれる。

     こうしおいるず、この人があの存圚感のある女優だなんおずおも思えない――

     思えば、これたで圌女が䜕かを口にしおいるずころをこんなにじっくりず目にしたこずはなかった。けれどこうしお向かい合っお食卓を囲んでみるず、圌女が本圓に䞀人の生身の女性なのだず実感する。

     こういうずきは、たるであの緑に萌える銀杏の朚みたいだ

     この間目にした、あの初倏の銀杏の朚。

     それは、秋に芋た時ず同じくらいに矎しく、生呜の力匷さにあふれおいた。けれど、どこかでもっずずっず芪しみやすく、枩かに感じられた――。



    続き  第80話 半分だけの嘘唯
    目次  長線小説『Second Wind』

     
     
    長線小説『Second Wind』を連茉䞭。 華やかな䞖界の片隅で、静かに止たっおしたった時間が 再び動き出すたでの物語。 静かな始たりから、やがお運呜を揺るがす奔流ぞ。