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Second Wind第80話 半分だけの嘘唯

    Second Wind

    第2ç«  霧の䞭の岐路
    第80話 半分だけの嘘唯


     遅れるずいう電話が䞀床来たきり、むクスさんはなかなか店に珟れなかった。

     倩気も悪いし、道が盞圓混んでいるのかもしれない

     玄束の時間は、二十時半。
     仕事を終えた埌、私は京子さんの送迎で䞀旊垰宅し、着替えおからタクシヌで店ぞず乗り付けた。すでに道は混み始めおいたので、しばらく個宀で埅぀こずになるだろうず思い、チェックしおおきたかった台本を䜕冊か鞄にしのばせおいた。

     二十二時半をたわった頃、仲居さんの案内で、ようやく圌は姿を芋せた。

     「お埅たせしお、すみたせん  」

     あたりの勢いで郚屋ぞ入っお来た圌に、私は台本を閉じる間もなく顔を䞊げるのが粟䞀杯だった。その瞬間、芖線がぶ぀かる――。

     「あ  ごめんなさい。ちょっず、気になる箇所があっお  」

     私は急いで台本をしたうず、蚀葉を遞んで立ち尜くしおいるむクスさんに向かいの垭を勧めた。

     郚屋に入るず同時に倖したサングラスを、圌がテヌブルの䞊に眮く。
       以前䌚った時よりも髪の色が明るくなっおいお、毛先にシャギヌの入った倏らしい髪型になっおいた。

     やがお、仕事䞭には䞀床も芋せたこずのない焊りをにじたせながら、あの印象的な黒い目が卓䞊をずらえた。

     「もしかしお、ただ、䜕も召し䞊がっおいないですか  」

       ああ、したった――

     気を遣わせるずいけないので、圌が着くたでには䜕か少しは頌んでおこうず思っおいた。けれど、台本に集䞭しすぎおしたっお、うっかり忘れおいた。

     「あ  ええ。ただそんなにお腹が空いおいなかったので、どうせなら、䞀緒にず思っお」

     私は空腹を悟られないようにず祈りながら、半分だけ本圓のこずを蚀った。


     料理が運ばれおくるたでの間、むクスさんはひたすら私に謝っおくれた。
     撮圱䞭にトラブルがあったずだけ蚀っおなかなか事情を話そうずしなかったが、どうやらスタッフに怪我人が出おしたったようだ。

     「それは  本圓に、倧倉でしたね」

     自分の遅刻を、他人のせいにする人間だず思われたくなかったらしい。あたりにも圌らしい答えに、私は苊笑するしかなかった。

     料理が運ばれ、お酒が入るに぀れお、私たちは少しず぀緊匵がほぐれおいった――。

     「今週は、今床やる新しいステヌゞのプロモヌションだったんですけど、昚日は歌番組の生攟送があっお。だいぶ日本語が䞊手くなったっお耒めおいただけたした」

     あたりお酒には匷くないのか、ほんのり頬を染めながらそう話すむクスさんは、鍋を頬匵りながら嬉しそうに目を现める。

     「叞䌚者さんたちは、いろいろなアヌティストの方をご芧になっおいたすから。ARKLINEアヌクラむンの皆さんがずっず努力を続けられおいるこず、本圓に感心なさっおいるんだず思いたすよ」

     私はそう答えながらも、い぀か圌らず番組で共挔する日もくるのだろうかず、がんやり考えおいた。

     「あっ、そう蚀えば  。この間、途䞭で終わっおしたったPVのお話なんですが。もしよければあの、もう䞀床䌺っおも、いいですか」

     今ほわんずしおいたかず思えば、次の瞬間にはこんな鋭い県差しを投げかけおくる。
       どうやらこの人は、やはり䞀筋瞄ではいかないさたざたな顔を持っおいるらしい。

     やがお、先日のPVに぀いお私がひずしきり感想を述べるず、圌は暪に眮いおいたリュックの䞭身をごそごそかきたわしながらメモ垳を取り出し、「忘れないように」ず䞁寧に曞き留め始めた。

     テヌブルの端に遠慮がちに広げられた、緑色の矎しい装䞁の手垳。
     そこに圌は、男っぜい無骚さず少女のような繊现さでペンを走らせながら、䞀蚀䞀蚀、䞁寧に文字を刻んでいく。

     その間に鍋が煮詰たっおしたいそうだったので、私は仕方なく、なんずはなしに具材を远加した。

       正盎、誰かのために鍋に気を配るこずが、こんなに新鮮だずは思わなかった。

     ふいに先ほどたで時折こちらを気にしおいた圌が、䜕かに気を取られたのか、手元のメモを䜕床も読み返し始めた。

     ただしばらく食べるのを再開する気配がないので、邪魔をしないようにそっず少しお皿に取っおあげるず、぀いに圌は、ハッず匟かれたように顔を䞊げた。

     「あっ、すみたせん   自分で、したすから  」

     結局、邪魔をしおしたったようだ――。
     途端に苊い気持ちに包たれかけるが、そんなあたりに慌おた圌の様子に、思わずふっず笑みがこがれた。

     「いいんです、気にしないで。私の意芋をそんなふうに真剣に聞いおくださっお、むしろ嬉しいですよ」

     自然な気持ちで、そう蚀った。
     自分たちぞの批評を、少しでも掻かそうずする努力――。そんな圌の姿勢が奜たしかったのだが、圌は自分の今の行動を、いたく深刻に受け止めたようだった。

     「すみたせん  い぀も、倱瀌なこずばかりで。あのドラマの撮圱のずきも、唯さんにいただいたアドバむスがあったから、僕はアレンを最埌たで挔じ切れたんです」

     テヌブルに眮かれた、ペンを持っおいない方の手が、ぎゅっず握られる。
     やがお圌は真剣な面持ちで私を芋぀めるず、驚くほど深々ず頭を䞋げた。

     「あの、ラブシヌンの撮圱の時――。前の晩に唯さんずあんなふうに話ができおいなかったら、僕はアレンをどうやっお挔じたらいいか、最埌たでわからなかったず思いたす」

     ただ話したそうな圌の様子に、私は菜箞を持぀手を䞀旊䞋ろしお沈黙で先を促した。

     「あのシヌンの撮圱を終えお、初めお僕は、アレンずいう人間がわかりかけた気がしたんです。圌の孀独や、痛み、愛情、そしお䞍噚甚さ――。あずのシヌンは、アレンの気持ちを衚珟するこずにただ必死で、あっずいう間に過ぎおいきたした」

     盞倉わらず芖線を静かに合わせたたた、わずかに照れたようにそう語る。
     そんな圌の蚀葉に、私は撮圱時のこずを䞀぀䞀぀思い返しながら、じっず耳を傟けおいた。

     「そしお最埌は、どうしおもアレンを助けおあげたいず思いたした。ストむックなたでにスタヌずしおの宿呜で自分を瞛り、自分の幞犏さえ封じ蟌めおしたおうずする圌を」

     「助けたい  」

     思いもかけない圌の蚀葉に、思わず私はそう問い返しおいた。



    続き  第81話 動き出す意志むクス
    目次  長線小説『Second Wind』


     
     
    長線小説『Second Wind』を連茉䞭。 華やかな䞖界の片隅で、静かに止たっおしたった時間が 再び動き出すたでの物語。 静かな始たりから、やがお運呜を揺るがす奔流ぞ。