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Second Wind第84話 霧の䞭の岐路むクス

    Second Wind

    第2ç«  霧の䞭の岐路
    第84話 霧の䞭の岐路むクス


     こんなふうになるこずを、たったく考えたこずがないわけじゃなかった。

     むしろ、その逆だった。
     今日、この日たで――。いや、おそらく圌女に自分の連絡先を枡した時にはもちろん、スペむンでの䞍思議な倜を過ごした、あの時からすでに。

     僕は心のどこかで、䜕床も䜕床も自分に問いかけおいた。

     “䞀床螏み出したら、もう埌戻りはできないかもしれない”――


     護たもれるだろうか。いたの自分に。
     愛する者ず、そしお、自分自身を。
     圌女のような、比類無く茝く、垌有な存圚を前にしおも――。

     「さっきのお話ですが。  かたいたせんよ。明日は半日䌑みをもらっおいるので」

     たおやかで匷したたかな、挑むような女優の目。

     それは今、䞀歩を螏み出そうずする僕に、その本圓の意味を気づかせようずするような匷いたなざしだった。

     圌女の返答を聞いた瞬間、僕は、圌女もたた岐路に立っおいるこずを思い知らされた。
     二人の前に䌞びる道筋を惑わせるように、い぀しか降り出した倏の雚が、倜の街に季節倖れの深い霧を運んでいた。


     「それじゃあ  今、僕はホテル䜏たいなので、もしご迷惑でなければ――。  あ、いや、本圓に倧倉倱瀌なこずだず、十分わかっおいたす。ただ、他に萜ち着いおVTRを芋おいただける堎所を知らなくお。ほんの少しでかたいたせん。ご迷惑なら、芳終わったらすぐにお送りしたす」

     自分でも、もはや蚀っおいるこずがむちゃくちゃだず思った。

     倩䞋の有石ありいし唯ゆいを、男の郚屋、しかもホテルの䞀宀に誘うなど、普通に考えればどうかしおいる。䞋心があるず疑われおも仕方がないし、実際、たったくないかず蚀えばそれはきっず嘘になった――。

     案の定、さすがに郚屋に呌ばれるずたでは思っおいなかったのか、圌女の衚情は明らかに匷ばった。しかし僕は、動揺しおはかえっお倱瀌だず思い、ただ圌女の返事を埅った。

     店のVIP専甚扉の前に立぀二人の間に、気たずい沈黙が流れ、窓越しに芋えるにじんだ車のラむトだけが、ただ静かに時を刻んでゆく。

     やがお圌女の目からふっず光が消えたかず思うず、それきり心さえも芋えなくなったように気配が消えた。

       闇の底を芋぀めるような、静寂の瞳――。

     そしお、たるで酞玠を求めるように圌女の唇が䞀床小さく開いたかず思うず、銖がゆっくりず瞊に振られた。

    「はい」

       奇跡が起きお、もしその時がきたら。

     必ず、護っおみせる。
     どんなこずがあっおも。䜕幎かかろうずも――。

     僕はiPhoneの埅ち受けにしおいた、あの新緑の銀杏の朚のこずを想った。

     千倉䞇化する、圌女の衚情。気高く荘厳なゎヌルドず、ぬくもりず生呜の喜びに萌える緑。

     それを僕は、党郚この目で芋おみたかった――。


     「  心配しないでください。䜕があっおも、すべおの責任は僕にありたす」

     タクシヌに乗り蟌み、ホテルの名前を告げるず、僕は運転手にも聞こえるようにわざずゆっくり、はっきりした口調で圌女にそう告げた。

     䜕があっおも、圌女があずあず、蚀われなき謗そしりなど受けるこずのないように――。


    続き  第85話 期埅ず倱望むクス
    目次  長線小説『Second Wind』


     
     
    長線小説『Second Wind』を連茉䞭。 華やかな䞖界の片隅で、静かに止たっおしたった時間が 再び動き出すたでの物語。 静かな始たりから、やがお運呜を揺るがす奔流ぞ。