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Second Wind第65話 胞に残る人むクス

    Second Wind

    第2ç«  霧の䞭の岐路
    第65話 胞に残る人むクス


     「たあ、僕がたず、ただ䞀぀だけ蚀いたいこずがあるずすれば――。  むク、自分を責めおしたっおは、ダメですよ」

      蚀っおキオは、僕を真っ正面から芋据えるず少し怖い顔で睚む。

     「  ほら。今、"ARKLINEアヌクラむンにずっおのこの倧事な時期に、俺は䞀䜓䜕をやっおるんだ"、っお思っおたでしょう 気持ちはよくわかりたすが、でも意味ないんですよ、そんなこず」

     あっさりずそんなふうに蚀うものだから、僕も思わず熱くなる。

    「意味ないっお、なんだよ  今、それ以䞊に倧事なこずなんお俺たちにないだろうが」

       思わず、故郷の方蚀が出おしたった。

     ”だからこそ、人がこんなに真剣に悩んでるのに――”

     ぀い、そんな蚀葉が喉元たで出かかる。

     するずキオは、「ちがう、ちがう」ず蚀うように、慌おお銖を振っおみせた。

     「"意味ない" っお、そういう意味じゃないんです ただ、よく蚀うでしょう、"人を奜きになるのは、道端の石に圓たるみたいなものだ" っお」

     「そんなこず  蚀うか  うん、たあ䌌たようなニュアンスなら聞いたこずはあるけど」

     「芁するに、どんなに自分の気持ちに蓋をしおも、奜きになる時はなるんです。そしお、䞊手くいく時は䞊手くいく。そのたた逆も、然しかり」

     「絶察、ならないように、気を぀けおたんだけど  」

     それはあながち、嘘ではなかった。
     二人きりで過ごしたスペむンでの倜も。僕はただこの䞀倜、圌女ず倢の時間を過ごせたらそれでいいず思っおいた。

     心が浮き立぀ような久しぶりの感情を、ただひずずき楜しめればそれでいい、ず  ――。思えばそんなふうに、むしろ圌女のこずは“決しお奜きになっおはいけない人”だず、自分に蚀い聞かせおいたはずだった。

     「ならないように  無理ですよ、そんなの。人間の感情なんお、そんなに単玔にコントロヌルできるもんじゃありたせん。それにむク、最初っから唯さんず、ものすっっっごく嬉しそうに話しおたしたよ」

     しかしキオは、そう蚀っおあからさたに顔をしかめおみせる。

     「えっ、さすがに嘘だろ、それは。」

     「むク 。本圓に、自芚が、ないんですね  。だっお、透明感のある矎しさがあっお、知的。手足がすヌっず長くお、綺麗な黒髪――。どう考えおも、唯さんはむクの理想のタむプ、ど真ん䞭の人じゃないですか」

     それを蚀われるず、僕も匱い。 最初に䌚った時から、たしかに圌女は僕のタむプだず思っおいたのだ――。

     「しかもむクは、顔に出やすいんです。ものすっごく 䜕お蚀うんですかね、ずにかくりキりキしおるんですよ、傍から芋おるず っお。あ  」

     蚀われるうちに、少し萜ち蟌んできた僕の様子に気づいたキオは、そこで蚀葉を切っお慌おお話を戻した。

     「ずにかく です。だいたい、圌女を奜きになったずころで䞊手くいくかだっおただわからないんですし、そんなふうに自分を責めたり、必芁以䞊に気持ちに蓋をしようずする必芁はないず思いたすよ それに――」

     "それに  "

     最埌にキオが、やけに意味深な口調でそう蚀い添えたので、僕は怪蚝に思った。

     「真剣な話、もしむクず唯さんが䞊手く付き合えるようになったずしお――。それはおそらく必然的に、いわゆる“事務所公認の亀際”になる可胜性が高い。  圓然、わかっおいたすよね」

     "公認亀際"――。

     キオの口から飛び出したその蚀葉を聞いお、僕はみぞおちの蟺りがずしりず重くなるのを感じた。

     「いや、それだけは、やっぱりできない。だからこそ圌女のこずは、やっぱりこのたた忘れなきゃダメだ」

       "公認亀際public relationship" ずいうのは、芞胜人などが自分の恋愛をオヌプンにするずいう意味がある。

     特に、芞胜人同士で付き合っおいる堎合によく䜿われるのだが、䞀床熱愛宣蚀をすれば、二人の関係が互いのファンにも知られるこずずなり、倚くのファンを傷぀け、倱うこずにもなりかねない。

     けれど、それでも最近、"公認亀際" を宣蚀するカップルが埌を絶たないのは、そうすれば、自分たちが自分たちらしく、それ以降、堂々ず付き合いを続けられるからにちがいなかった。

     「むクが、そういうのを奜たない䞻矩だずいうのはよくわかっおいたす。それは、僕ずお同じです。やっぱり、できるこずなら僕らを想っおくれおいるファンをいたずらに傷぀けたくはないですし、正盎を蚀えば、ARKLINEに ずっお、ファンを倱うのが今は䞀番怖い――。」

     「  」

     「それに、自分たちのプラむベヌトを切り売りするようなこずになるのも䞍愉快です。たずえこんな仕事をしおいたっお、いやこんな仕事をしおいるからこそ、自分たちだけの倧事なものは守りたい。  そう、ですよね」

     キオは僕の考えを代匁しおくれるかのように、そう続けた。

     「でも、むクが唯さんずもし付き合うこずになれば、それはいずれマスコミにも嗅ぎ぀けられるでしょう。今のずころ、僕たちのファンのほずんどは女性ですし、圌女は日本が誇る倧スタヌだ。これほどの倧スクヌプはありたせんからね。だから、遅かれ早かれ、それは "公認亀際" になる。それをむクは、䞀番心配しおいるんじゃないんですか」

     そこたで蚀うず、キオはひず息吐いお、急に真剣な衚情になった。

     「 むク――。だけど、よくよく考えおみおください。逆を蚀えば、䞇䞀あなたが "公認亀際" をするこずになるずすれば、その時の盞手は圌女のような女性をおいお他にはいない、ずいうこずを」

       僕は正盎、キオが僕の話をほんの少し聞いただけですぐにそこたで思い至るこずがあるずは考えおもみなかった。そのこずに、ずおも驚いおいた。

     「その様子だず、やっぱりむクにはわかっおいるんですね  ファンはみんな、ARKLINEのJ・むクスに倢を芋おいたす。むクスずいう人が、倧奜きなんです。そんなむクスが、女性芞胜人ず "公認亀際" をする。普通であれば、圓然蚱せないしショックを受けるでしょう。ファンをやめるずいう人だっお、出おくるかもしれない」

     「  」

     「  ですけど、もしその盞手ずいうのが、誰もが䞀目眮くくらい玠晎らしい女性だったずしたら  普通の女性ではずおも倪刀打ちできないような、人栌も容姿も優れた、才胜豊かな女性だったずしたら」

     「  本囜のファンは、受け容れるだろうな。もっずも最初は倧隒ぎだろうけど」

     「そうです。ファンはある意味、"完璧" であるこずに最も䟡倀を芋出したす。キングであるむクスには、キングにふさわしい盞手を――。それには、䞖界的にも実力を認められおいる唯さんは、ある意味、文句の付けようがない盞手です」

     「日本や、他の囜のファンは  どうだろう」

     「正盎、そこのずころは僕にも読めたせん。 ただ――。珟状の僕らは皆、盞手が䞭途半端な女性であれば、"公認亀際" は決しお蚱されないでしょう。そもそもうちの事務所がそれを蚱すずは、ずおも思えない」

     「  」

     「むク。あなたは、だからこそ迷っおいるんじゃないんですか そのこずをよくわかっおいるからこそ、唯さんずいう今たでになく心惹かれる人に出䌚っお、このたたにしおしたっおいいのか、ず」

       どうやら僕の心は、䜕から䜕たでキオに芋抜かれおいるようだった。

     そんなキオが、今日たでどれほど僕の様子に気を配り、僕ずARKLINEの今埌に想いをめぐらせおいたのかを思うず、僕は申し蚳ない気持ちず感謝の想いでいっぱいになった――。

     「たあ、ずりあえず。この話はここたでにしおおいお、少し気持ちを切り替えたしょうか」

     ふいにポンずテヌブルに手を぀くず、キオは立ち䞊がり、「あずは、むクの頑匵り次第です」ず笑った。

     「ずりあえず、今回はドラマなのに打ち䞊げもできなくお残念でしたけど、たた近々やるんでしょう 日本に行く機䌚だっおしょっちゅうあるんですし。むクは䞻圹なんだから、打ち䞊げをやるずなったら、ちゃんず参加したらいいず思いたす。そうしたら、唯さんにもたたゆっくりず䌚えたすよ」

     僕は、頷く。

     「いずれにしおも  ずにかく、むクがいくらこのたた想い出にしおしたいたくたっお、圌女はこの䞖界で仕事をしおいくからには、決しお避けおは通れない人なんですから」

     「たあ  、それはそうだな」

     「焊るこずなんおないです。じっくり、ゆっくり、たずは自分の気持ちを確かめおみたらいいじゃないですか。盞手ずメヌルをするなりなんなりしお、圌女のこずを本圓に奜きだず思ったら、たた考えればいい。  責任感の匷いむクのこずだから、きっず䜕かあっおからでは遅いず思っお、僕に先に盞談しおくれたんでしょう それは、すごく嬉しいんです。でもこう蚀っおはなんですが、䞊手くいかない可胜性だっお、たったくないわけじゃないんですよ そこは、男ず女なんですから。だったら今からいろいろ考えおも、考え過ぎるだけ損ですよ」

     「  うん、そうだな。ありがずう」

     そんなやさしい蚀葉を聞きながら、僕は、キオは本圓に頌もしく成長したものだな、ずしみじみ思った。
       たさか、「実はただ圌女の連絡先すら聞けおいない」ずはさすがに蚀えずに。

     やがおキオは、「じゃ、僕はもう寝たすよ」ず蚀っお立ち去りかけ、ふず思い立ったように、たたくるっず䞀床こちらを振り向くず蚀った。

     「  。むクに察しお、今さらながら愚問だずは思うんですが、やっぱり念のため聞いおおきたすね。圌女のこずは、圹柄の蚭定䞊  勢いで奜きになっちゃった、ずいうわけじゃ、ないんですよね」

     キオのひどく遠慮がちなその様子に、僕は笑いながら答えた。

     「ハハ 、いや、それはないず思う。圌女は集䞭力がすごいから、むしろオンずオフの切り替えはわかりやすいし。俺は、〈早劃〉に惹かれおいるわけじゃ、党然ないから」

     「なるほど。CM撮圱の時も、切り替えが玠晎らしかったですもんね、うんうん」

     蚀いながらキオは、あの時のこずを思い出したのか、顔をほころばせお、「いや、本圓に綺麗だったなあ」ず付け加えた。

     「  で、ズバリ、勝算はどの皋床ありそうなんですか」

     もうこれで終わりかず思っおいたら、最埌の最埌に突然そんな螏み蟌んだ質問がきお、コヌヒヌを飲もうずしおいた僕は思わずむせおしたった。

     「ああ、ああ いきなり、螏み蟌みすぎたした」

     そばにあったティッシュを取っおくれながら、キオにしおは珍しく、ちょっず慌おた顔をする。

     「いや、倧䞈倫だけど――。  はあ、勝算ねぇ。正盎、たったくある気がしない」

     これは、僕の本心だった。

     
       それから数日が過ぎお、僕は先日のドラマの䞻題歌ずタむトルに、ARKLINEの『Superstar』が採甚されたこずを聞いた。

     「あぁ、なんでもお前からCDをもらった唯さんが曲を聎いお、自分の持ち歌よりもドラマの雰囲気に合っおいるからず掚薊しおくれたんだそうだ。たったく、ありがたい」

     マネヌゞャヌのリりさんも、これには倧喜びだった。

     「すごい むク、やったじゃないですか ご自分の曲を取り䞋げおたでっお、いやあ、よほど気に入っおくれたんですね。なんか嬉しいですね」

     キオも玠盎に喜んでいる。

     「  ふヌん、なるほど。むクの情熱が、圌女に芋事届いたっおわけか」

     その暪で県鏡を抌し䞊げながら、やけに意味深な顔でトりマがニダリず笑う――。

       たしかに、唯さんの埩垰䜜、そしお僕にずっおの日本ドラマデビュヌ䜜の䞻題歌ずもなれば、宣䌝効果は抜矀のはずだ。日本での掻動を本栌化させお間もない僕らにずっおは、これはたさに願っおもない話だった。

     これじゃたすたす、唯さんには、䌚ったらちゃんずお瀌を蚀わないずな――

       こんなこずになるのなら、やはり連絡先くらい、遠慮せずにちゃんず聞いおおくべきだった。

     リりさんに確認したずころ、ドラマの宣䌝でたもなく日本に行くこずになるので、その時には圌女にも䌚えるだろうずいうこずだった。

     それを聞いたキオが、ちらっずこちらに芖線を投げる。

       この間、僕がキオに「自信がない」ず告癜した時、なんず奎は、最埌にしらっずこう蚀ったのだ。

     「そう、なんですか。  なら、むクがもし唯さんにアタックしないのであれば、その時には僕がさせおもらいたしょう 僕だっお、圌女のような人ならぜひお付き合いしおみたいですから。それでも  文句は蚀わないでくださいよ」

     ニダリず䞍敵に笑うキオの衚情を芋る限り、さすがに本気だずは思いたくなかったが、それでもこずのほか萜ち着かないこずには倉わりなかった――。


    続き  第66話 畏れ知らず唯
    目次  長線小説『Second Wind』


     
     
    長線小説『Second Wind』を連茉䞭。 華やかな䞖界の片隅で、静かに止たっおしたった時間が 再び動き出すたでの物語。 静かな始たりから、やがお運呜を揺るがす奔流ぞ。