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Second Wind第88話 砕けた仮面唯

    Second Wind

    第2ç«  霧の䞭の岐路
    第88話 砕けた仮面唯


     VTRが始たっお、しばらくは退屈な映像が続いた。

     海倖番組ならでは、ずでもいうのだろうか。バラ゚ティ独特の盛り䞊げ方があっお面癜かったが、剣舞に挑戊しおいる有名人たちがこれたでどんなに過酷な緎習を積んできたのか、いささか誇匵しすぎるような挔出もあった。

       しかし、さすがにむクスさんの番になるず、興味が湧く。

     私はスペむンロケの頃の゚ピ゜ヌドしか聞かされおいなかったが、この番組ではこれたでも毎回、倚忙なスケゞュヌルの䞭で盞圓倧倉な想いをしお本番の日を迎えおいたようだった。

     そしお迎えた、収録本番――。
     挔技披露の段になっお、初めおスペむンでの緎習のこずが觊れられた。

     怪我ず、極限たでの疲劎を抱える䞭、わずかな時間を芋぀けおは必死に緎習を重ねる日々。メむキング甚の映像だずわかっおはいたが、それはあの時、おそらく私だけが垣間芋たのであろう、圌のリアルな䞀面を思い起こさせた。

     「むクス、わずかに倱敗はありたしたが、玠晎らしい挔技でした」

     「皆さん、心からの拍手を莈っおおられたすね」

     圌の出番が終わるず、叞䌚者たちが口々に賞賛の蚀葉を述べる。
     完璧ずはいかないたでも、圌の挔技はずおも玠人が短期間で習埗したずは思えないほど、文句なしに玠晎らしいものだった。

       そんな時、私に思いもかけないこずが起こった。

     右頬を、静かに涙がひず筋぀たう――。

     はじめは、自分でも䜕が起こったのかわからなかった。
     が、気づいた時にはすでに、涙はしずくのように顎のあたりにたでこがれ萜ちおいた。

     これでは、手で隠す暇もない。

     いけない、むクスさんに、気づかれおしたう――

     そう思っおも、䜓が動かない。

     おそらく、今目の前で芋たむクスさんの挔技に、私の心が反応しおいるのだ――。

     いったい、どうしたずいうのだろうか。
     こんな、いかにもテレビ向けの挔出を目にしたからずいっお、安易に感激するようなタむプではなかったはずだ。

     面癜くはあるけれど、テレビ業界の裏を知る者にずっおは王道のバラ゚ティ番組。けれど――。

     圌の挔技だ。圌の衚情だ

     圌の仕事に察する真摯すぎる姿勢は、いわば、この業界で生きる者にずっおの諞刃もろはの刃やいばだった。

     どんな仕事にも、党力投球――。
     しかしそれは裏を返せば、䜕かをきっかけに䞀床でも仕事に支障が出れば、次の話はもう二床ず来なくなるずいうこずだ。

     たずえ倧手の事務所に所属しおいようずも、通垞はその事務所内でのランクずいうものがある。䜕らかの損倱を出せば、それはすぐさたランクの降䞋に぀ながり、以埌は売り出しおもらえるチャンスすら枛らされる。

     こんな過密スケゞュヌルの極限状況の䞭で、いったいこの業界のどこに、慣れない、しかも危険きわたりない剣舞などに真剣に向き合う人間がいるだろうか――。

     リスクのある仕事、極端な負担を抱えねばならない仕事ならば、いっそ断ればいい。いや、着実にキャリアを積んでいくためには、むしろ断らなければならない。

       しかし、圌を芋おいるうちに、私は気づいた。

     圌はこれがリスクのある仕事だずよくわかっおいながら、あえおそれに挑んでいるのだ。

     圌が、それがわからないほどに愚かな人間であるはずがなかった。
     ここ数日間のメヌルのやり取りだけでも、そのこずは痛いほどによく䌝わっおきた。

     聡明さず、知性。厳栌なたでの状況刀断胜力。

     ARKLINEアヌクラむンを護たもるため、より飛躍させるために、圌は日々想いをめぐらせおいた。ARKLINEの始動を賭けたこの倧事な時期に、圌は今、自分が持ちうる力のすべおを泚ぎ蟌む芚悟をしおいた。

     圌らにずっお、ARKLINEずは、それほど倧きなものなのか――。

     囜内ず海倖を飛び回りながら、リハヌサルや打ち合わせ、舞台、そのうえドラマ撮圱たでこなす。それはもはや、立っおさえいられないほど、気力だけでなんずか持たせおいるような状態だったはずだ。

     しかしそれでも、いやそれゆえにこそ、圌の必死さ、ひたむきさは真っ盎ぐに私の胞を打った。そのこずに、私はこのずき、初めお気づかされたのだ――。

     「  」

       蚀葉が、出おこなかった。

     圌が芋せた芚悟は、私にずっお、“自分が本来圚りたい姿” そのものでもあった。

     けれど、さたざたな事情から呚囲に止められ、あるいは自分自身で芋切りを぀け、砂を噛む想いでどこかに眮いおきたもの。

       だからなのだ。
     だから、圌の䞀挙手䞀投足は、こんなにも胞を打぀――。

     生き銬の目を抜くようなこの業界で、こんな真摯な態床で党力を傟け、仕事に臚むこずができたらどんなにいいだろう。

     人ずの駆け匕きも、牜制も捚おお、ただひたむきに党力を泚ぎ蟌むこずができたなら――。

       そうだ。

     メヌルの文章を読んでいる時にも、ずっず思っおいた。

     私は圌が、心底うらやたしかったのだ。


    続き  第89話 止められぬ想いむクス
    目次  長線小説『Second Wind』


     
     
    長線小説『Second Wind』を連茉䞭。 華やかな䞖界の片隅で、静かに止たっおしたった時間が 再び動き出すたでの物語。 静かな始たりから、やがお運呜を揺るがす奔流ぞ。