
Second Wind|第68話 相手役の評価[唯]
Second Wind
第2章 霧の中の岐路
第68話 相手役の評価[唯]
朝の時間帯。眩しいほどの明るさで展開される、生放送。
……仕事柄、こうして自分の姿を見られる機会が少しでもあれば、自然にチェックをしてしまう。イクスさんの方が私より20cm以上背が高いので、こうして横に並んだ時のバランスも、今日は上手くまとまっていた。
私たちは盛り上げにかかるスタジオメンバーからの問いかけに合わせて、撮影中の苦労話やエピソード、ドラマの見どころなどを語りながら、丁寧に質問に答えていった。
彼は質問を浴びせられるとまず私に譲り、その後、言葉を選びながら、一つ一つ日本語で対応していった。そんなふうに、私たちは時折軽く微笑み合いながら、楽しく撮影の想い出話を語ることができた。
私の苦手な生放送は、こうして終わった。
「本当に貴女って、“苦手”という割にはいつも安心して見ていられるから助かるわ」
出演を終えて楽屋に戻ると、京子さんがポンポンと台本を手で叩きながら上機嫌でそう声をかけてくる。
「いや、もう本当、緊張するのは嫌なんだから……」
私はどっと疲れが出た気がして、ソファにもたれかかる。そんな私に、京子さんはすぐさまコーヒーを淹れてくれた。
「彼も、さすがにメディア関係の対応には慣れているようね。時々日本語が怪しくはなるけれど、できるだけ自分の言葉で話そうとするところは好感が持てたわ」
……最近、京子さんはイクスさんにかなりやさしくなった気がする。そんな私の心の声が伝わったのか、京子さんは視線に気づくと、こちらをちょっと睨んで言った。
「勘違いしないでよ。私が言っているのは、あくまで"有石唯の相手役"としてってこと」
その後、私たちはイクスさんたちと簡単に挨拶を交わし、次の仕事現場へと移動した。
ひと仕事終えたと思うと少し名残惜しくもあったが、またすぐに打ち上げが控えているので、お互い笑顔であっさりと別れた。
……けれど。この時は、まだ誰も思いもしなかったのだ。
"有石唯の相手役" という言葉の中に、この後、とてつもなく重い意味が加わることを――。
*続き | 第69話 打ち上げの夜[唯]
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