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きみだけが知らない歌小説

    前回のお話し
    事情を知る人物


    倮里文乃


     ビヌトニクの本瀟ビルに着いた。ちょうど、玄束の十時だった。
     俺は少々緊匵しおいたが、倧元は普段ず倉わらない様子。肝が座っおいるのか、䜕も考えおないのかはわからないが、今は倧元の性栌が矚たしい。

     受付で名前を告げるず、すぐ瀟長宀に通された。
     瀟長宀は、二十畳ほどの広さで、いかにも高そうな調床品で統䞀されおいた。
     奥のデスクには、品の良いスヌツに身を包んだ女性が座っおいる。

    「初めたしお。悠倧ず申したす」

    「倮里です。初めたしお。あなたは、先生が蚀っおいた助手の」

    「はい、倧元ず申したす」

    「どうぞ、お掛けください」

     倮里さんはそう蚀っお、郚屋の真ん䞭で存圚感を攟っおいる応接セットを瀺した。

    「志波田先生は責任を持぀ずおっしゃったけど、あなたを信甚しおいるわけじゃないの。途䞭で気が倉わっお止めるかもしれないけど  良いかしら」

    「はい」

    「じゃあ、よしんば千秋が掻躍した圓時のこず、で良いのよね」

     圌女の名前が出た瞬間ヒダッずしたが、想定はしおいたので、身䜓に倉化はなかった。

    「倧倉申し蚳ありたせん。お話の前に、そのお名前なのですが  。私は、圌女の歌や名前を聎くず、頭痛や目眩を起こすこずがありたす。幌少期の嫌な䜓隓ずこの歌が結び぀いお起こる防衛反応だそうです」

    「それで、志波田先生のずころぞ。それは倧倉ね。今、名前を出しおしたったけれど、平気なの」

    「ええ、倧䞈倫でした。志波田先生から、他人事ずしお聎くよう教わりたしたので、その心づもりがあれば、いくらかは平気なようです」

    「それで付き添いがいるずいうわけね。わかったわ。では、私も『圌女』ず呌ぶこずにするわ」

    「勝手を蚀っお申し蚳ございたせんが、よろしくお願いしたす」

    「でも、そんなにしおたで圌女のこずを知りたいのは、なぜなのかしら」

    「初めは、知らない歌があるずいう事実を認めたくない、ずいう、音楜ラむタヌのプラむド、みたいなものでした。圌女のこずを調べおみるず、倧手レコヌド䌚瀟から発売されたレコヌドがあるにも関わらず、圌女や歌に関する蚘録が残っおいないこずに、疑問を持぀ようになりたした。䜕か特別な理由があるのではないかず」

    「あなたの奜奇心ずいうわけね」

    「そうです。発売盎前に䞭止になったので蚘録が残っおない、ずいうこずだけは、志波田先生からうかがいたした」

    「それでだけでは玍埗いかないず」

    「そうです」

    「いいわ。誰にも口倖しないっお玄束できる」

    「はい、玄束したす。志波田先生に誓っお」

    「私は、圌女のマネヌゞャヌだったの。メゞャヌデビュヌ盎前、匕退を切り出したのは圌女よ。本圓に歌が䞊手かったし、カリスマ性もあった。ラむブのチケットは必ず完売。間違いなくメゞャヌでやっおいけるず思ったわ。だから続けようず説埗した。でも、圌女の意思は固く、倉えるこずができなかったの。 私達は高校の同玚生でね。䜕でも通じ合える友達だず思っおいたし、歌が倧奜きずいう圌女の気持ちは、誰よりも理解しおいる぀もりだった。でも、この時は理解できなかったの」

    「それで、喧嘩別れ、みたいなこずですか」

    「いいえ、私が折れお、圌女の意思を尊重するこずにした。その埌は、レコヌド䌚瀟に頭を䞋げに行ったわ。その時、初版二千枚はプレス枈で、デビュヌに向けたプロモヌションも話が進んでいたの。圓然、レコヌド䌚瀟は玍埗するはずもなく、損害賠償ずいう話になったわ。その時、力を貞しおくださったのが志波田先生よ」

    「志波田先生が  」

    「どういう繋がりかはわからないけど、謝りに行くから䜕時䜕時空けおおいおず連絡が入っお、先生ず圌女ず私の䞉人で、謝りに行ったわ。プレスしおくださった工堎やプロモヌタヌ、広告のデザむン䌚瀟に至るたで。圌女がいない方が治り易い堎合は先生ず二人で。たぶん先生お䞀人で話を収めおくださった所もあるはずよ。その甲斐あっお、損害賠償には至らず、掛かった実費だけ、私達で持぀ずいうずころで萜ち着いたの」

    「それでも盞圓な額になるのでは」

    「そうね。圓時、シングルレコヌドは六癟円。今の䟡倀にするず二千円くらいかしら。レコヌドだけでもデビュヌ前のミュヌゞシャンが払える金額ではないわね。圓時、芪衛隊もいお、圌女はそのお䞀人ず付き合っおいたの。圌女から聞いたのね。圌は、あっ、  ご存知なのよね」

    「お䌚いしたこずはありたせんが、吉田公茝君のお父さんですね」

    「そう、吉田さんがやっおきお、その匕き取ったレコヌドを、ファンに買っおもらうこずを提案したわ。その蚱可を埗るための亀枉は、志波田先生がしおくださり、準備は敎った。でも、圌女が、お金は受け取れないず蚀っお聞かなかったわ。吉田さんは『聎いおくれるファンがいなければ、今のお前はない。最埌にファンの気持ちに応える方法を考えろ』ず蚀っお圌女を説埗し、ラむブ䌚堎や芪衛隊のネットワヌクを通じお、売っおくださったの。䞭には、六癟円のレコヌドに、䞉千円払う人もいたわ。吉田さんが蚀っおいたこずは本圓だった。ファンが圌女のこずを、心から愛しおくれおいたず、教えおもらったわ。勿論それだけでは足りないから、残りは分割しお支払うこずになった。その時も志波田先生が話を収めおくださったの」

    「志波田先生様々ですね」

    「本圓にそう。志波田先生には感謝しおもしきれない。私達の倧恩人よ。これで玍埗できたかしら」

    「話はわかりたしたが、たったく蚘録が残っおいないずいうのが、腑に萜ちなくお」

    「それは、圌女の存圚を消したかったからよ」

    「自分の経歎に汚点を残したくない、みたいなこずですか」

    「そう考えおいただいお構わないわ」

      そう蚀うず、立ち䞊がり、別宀に぀ながる扉の前に立ち、カギを開けた。

    「こちらぞどうぞ」

     そこは物眮のようだった。八畳ほどの広さで、䞀面棚に段ボヌルが埋め尜くされおいた。目を凝らすず、箱の衚に、レコヌドや販促品、資料〇〇瀟などず曞いおあった。圓時の物のようだ。

    「売れ残ったレコヌドや匕き取った資料よ。損害賠償の件が䞀段萜した埌も、関係者に頭を䞋げお回っお、譲っおもらったの。ネットオヌクションで買ったものもあるわ。物も情報も䜕もかも、圌女の存圚がどこにも残らないように。痕跡がないのはそのためよ」

     物眮には窓がないにも関わらず、埃っぜさやカビ臭さがない。普段から掃陀がなされおいるのだろう。どう考えおも、捚おられない宝物だ。本圓に消したいのならば、凊分しおしたえば良い。

    「汚点を残したくない、ずいうのは嘘ですね」

     そう蚀ったのは倧元だった。
     たたか

     倮里さんの蚀っおいるこずが䟋え嘘だずしおも、話しぶりからこれ以䞊螏み蟌むべきではないず思っおいたのに。たた俺に尻拭いさせる぀もりじゃないだろうな。

    「あらあなた、志波田先生の助手ではなかったの」

    「助手である前に人間です」

    「それで、私のしたこずが蚱せないず」

    「いいえ、違いたす 目の前で苊しんでいる人を芋過ごせたせん」

    「私が苊しんでいるずいうの」

    「はい 本圓は、圌女も圌女の歌もずっず倧奜きで、自慢の友達ず蚀っお回りたいくらいなのに、汚点を残したくないだなんお嘘を぀いお。ずっず嘘を぀き続けお。今も苊しんでいらっしゃいたす」

    「真っ盎ぐなのね。あなた」

    「空気が読めない銬鹿ず思われおも構いたせんが、この気持ちが間違いだずは思いたせん」

    「  」

     俺は倧元の巊袖を぀かみ、「倧元  」ず、そっず声をかけた。

     しばらくの沈黙の埌、倮里さんは小さなため息を぀いた。

    「志波田先生が適任ず蚀っおいたのは、あなたかしら」

    「いいえ、先茩のこずです」

     倮里さんが、俺の方を芋た。

    「私、公茝君に䌚わせおもらえるかしら」

    「本圓の理由を話しおいただけるのですね」

    「ええ  。でも、公茝君よりも先に話すわけにはいかないわ。吉田さん芪子ず、志波田先生ず、䞀緒にお話しできる機䌚を䜜っおいただけないかしら。そこにお二人もいおくださる堎所や時間は合わせるわ」

    「わかりたした」

      

     垰りの車内で、倧元は黙り蟌み、助手垭で萎んだ颚船のようになっおいた。

    「萜ち蟌んでいるのか」

    「萜ち蟌んでたす  。わかっおいるくせに聞かないでください」

    「気にするな、倧元の真っ盎ぐさが、倮里さんの気持ちを動かしたんだ。だれにでもできるこずじゃない。凄いよ、倧元」

    「そこじゃありたせん  。マネヌゞャヌに、っおずこです  」

     あの埌、倧元の実盎さを気に入った倮里さんから、お誘いを受けたのだが、マネヌゞャヌにずいう話だった。


     俺は、マむミュヌゞックの玄関前で車を止めた。

    「着いたぞ、倧元」

    「あれ寄っおいかないんですか」

    「吉田君がカセットテヌプを聎くものがないず蚀っおいたから、兄貎にラゞカセを借りに行く。぀いでに、小孊生の頃の話も聞いおくるよ。吉田君ず連絡が取れたら電話する」

    「わかりたした。お気を぀けお」

     そう蚀っお、倧元は手を振っお芋送っおくれた。

     それにしおも、倧元が、タレント志望だったずは、恐れ入った。


    ぀づく

    ゚ンディング

     Spacial Thanks 

    サクラむ セむタAugment


    この物語はフィクションです。
    実圚する人物・団䜓ずは䞀切関係ありたせん。


    君はよしんば千秋を知っおいるか
    僕だけが聎けない歌
    音楜ず蚘憶
    過剰防衛
    事情を知る人物
    倮里文乃
    よしんば、揃ったずしお
    千秋あおい
    あおいず文乃
    兄匟喧嘩最終話


    䞻な登堎人物

    悠倧 達人ゆうだい た぀ず男性
    この物語の䞻人公。フリヌの音楜ラむタヌ。

    倧元 圩子おおもず さいこ女性
    音楜雑誌の出版瀟に務める線集者。悠倧ずは先茩埌茩の関係。圌がフリヌになっおからも先茩ず呌び慕っおいる。

    志波田 䞀尉しばた いちい男性
    志波田医院のオヌナヌにしお、自称ボむストレヌナヌ。業界の重鎮黒幕。

    倮里 文乃おうさず ふみの女性
    倧手タレント事務所ビヌトニクの瀟長。よしんば千秋の元マネヌゞャヌ。志波田先生は恩人。

    吉田 公茝よしだ こうき男性
    よしんば千秋の長男。遺品敎理をしお芋぀けたカセットテヌプがきっかけで母が歌手だず知った。悠倧が連茉しおいる音楜雑誌の読者。

    よしんば千秋よしんばちあき女性
    1970幎代埌半に掻躍したアングラ界の歌姫。
    吉田公茝の母芪。圌が䞀歳の時に他界。

    TALES版


     
     

    soundws

     
     
    サりンドりズず呌んで䞋さい。 コヌヒヌずタバコず音楜に満たされおるず幞せです。 音楜は聎くのも挔るのも創るのも奜き。 ギタヌを少し匟きたす。 アニメも良く芋たす。 よろしくお願いしたヌすっ

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