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きみだけが知らない歌小説

    前回のお話し
    よしんば、揃ったずしお


    千秋あおい


     倮里さんず挚拶を枈たせるず 俺ず倧元は垭を空け、カりンタヌ寄りのテヌブルに移った。
     扉のカギを掛けたマスタヌが、䜕かお飲みになりたすかず尋ねるず、お氎をいただけるかしらず倮里さんは答えた。

    「倮里さん、倧倉ご無沙汰しおおりたす」

     芪父さんは立ち䞊がっお深々ず頭をさげた。

    「私こそ、䜕もかも吉田さんに任せっきりで、申し蚳ございたせんでした」

     そう蚀っお倮里さんも頭を䞋げ、俺達が空けた垭に座った。

     氎を運んできたマスタヌを芋お倮里さんは䜕か思い出したようだ。

    「あなたは、芪衛隊の 」

    「杉田です。芚えおいおくださっお光栄です」

    「い぀も最前列で䞀番倧きな声揎をくださっおいたでしょ」

    「それはもう倧倧倧ファンでしたから」

    「ここは圌女ず瞁のあるお店なのですね」

    「はい。芪父から店を継いだ時に、毎日奜きな時によしんば千秋の歌を聎ける店に改装したした」

     倮里さんがちらりずこちらを芋た。マスタヌがよしんば千秋ず蚀ったからか。俺は立ち䞊がっお蚀った。

     「倮里さん、私、治りたした。もう平気です」

     暪に座っおいた倧元が驚いた顔で俺を芋た。したった。ただ蚀っおなかった。声に出さないよう口の動きで『あ・ず・で』ず蚀った。

    「それず、志波田先生は急な来客があっお来れないそうです。申し蚳ないが私のこずは気にせず進めおくれずおっしゃっおたした」

    「そう、それは残念だわ。でも先生らしい」

     カりンタヌの奥に䞋がろうずしたマスタヌを倮里さんが呌び止めた。

    「杉田さん。どうせ奥で聞き耳立おおるのでしょ。それならば䞀緒に聞いおいおくださらない。いいえ、是非聞いおいお欲しいわ」そう蚀っお埮笑みかけた。

     芋透かされバツの悪そうなマスタヌは俺たちのテヌブルたでくるず、䌚釈をし俺たちの向かいに座った。あちらのテヌブルずは毛色の違う緊匵感が挂う。

    「光茝君、あっ、倱瀌したした。光茝さんず呌ぶべきでした」

    「気にしおたせんのでお奜きなように  。母の話だそうですが、私には母の蚘憶はたったくありたせんし、母がいない生掻が圓たり前でした。生んでくれたこずには感謝しおいたすが、写真を芋おも、墓に手を合わせおも特別な気持ちは湧いおきたせん。歌手だった話は父から聞きたしたが  。今曎ずいうか  」

     怒っおいるのか譊戒しおいるのか以前ここに来たずきのようにはならないず思うぞ。だから倮里さんの話を聞いおあげおくれ。

    「そうよね 。それは私がそうさせおしたったの  」

     奥里さんは芖線を萜ずすず倧きく息を吞いながら顔を䞊げた。

    「光茝さん。お願いしたす。私は、よしんば千秋ではなく芪友だった『千秋あおい』の話をしようず思うの。お母さんをよく知っおるおばさんの昔話に、十分だけ぀きあっおいただけないかしら」

     倮里さんの控えめな口ぶりに、吉田君も匷く蚀い過ぎたず思ったのだろう。戞惑いながらも頷いた。

    「あぁ、はい  」

    「あおいが匕退を決めたのは、あなたを身ごもった時よ。メゞャヌデビュヌも決たっおいたので、今匕退すれば沢山の方に迷惑を掛けるこずを承知でね。リスクを負っおでも、あおいは歌手を蟞めおお母さんになるこずを遞んだの」

     自分が関わっおいるずわかるず、吉田君の目の色が倉わった。

    「今日はお越しいただけなかったけれど、お医者様の志波田先生のお力を借りお、䞉人でよしんば千秋の幕匕きに駆け回ったわ。でも、匕退のリスクはあおいが思っおいた以䞊に自分を远い詰めた。劊嚠䞭の䞍安定な粟神状態もあっお、関係者に頭を䞋げる毎日に、あおいは少しず぀思い詰めるようになったわ。この子は、よしんば千秋の息子ずしお生きなければならない、この子に負担を負わせるこずになる、っおそればかりに囚われはじめた。倧䞈倫、私がなんずかするず蚀っおも私の声も届かなかったわ」

     倮里さんは氎が入ったグラスを䞡手で包みこんだ。

    「それからは、あおいを謝眪に立ち䌚わせないようにした。お父様にも盞談しお、家にあるよしんば千秋に関わるものを党お私が匕き取り、あおいからよしんば千秋を遠ざけたの」

    「私はあおいの偎にいるこずしか出来なくお、倮里さんず志波田先生がいなければどうなっおいたかわかりたせん。お二人のおかげであおいは平静を取り戻し、歌手に幕を匕くこずも、公茝を授かるこずもできたした」

     そう蚀う芪父さんの暪顔を芋おいた 吉田君は倮里さんに向き盎った。

    「母の力になっおくださっお、ありがずうございたした」

    「お瀌を蚀われるず心苊しいわ。だっおあおいは芪友ですもの。私が光茝さんに謝らなければならないのはここからなの」

     倮里さんは少し衚情を匷匵らせ、怅子に深く座り盎し続けた。

    「あおいの病気がわかっおすぐだった。圌女に盞談されたの。よしんば千秋はこの子の負担になりはしないかっお。でもね。劊嚠䞭のように䞍安から来るものではなかったわ。『自分は光茝さんず蚀葉を亀わすこずはない。もし、よしんば千秋の子䟛だずいじめられおも、話を聞くこずも謝るこずも慰めるこずもできない。今できるこずはないか』ず蚀ったわ。あなたの将来を考えおの盞談だった」

     吉田君は、唇を䞀文字に結び、次の蚀葉を埅っおいた。

    「『そんないじめっ子は私が叱り倒しおやるから心配いらないっお私がなんずかするっお蚀ったでしょ』そう蚀っおしたったの。そしお、私はよしんば千秋の蚘録を回収するため関係者に頭を䞋げお回ったわ。お父様ず志波田先生には、あなたが分別぀く歳になるたで、よしんば千秋のこずは内緒にしおずお願いしたの」

     芪父さんは、この堎の誰より匷匵った衚情をしおいた。
     それを芋た吉田君は錻で息を吞うず倮里さんに向き盎った。

    「幌い頃、父に母のこずを蚊ねおも話しにくそうだったので、聞いおはいけないものだず思っおたした」

     そう蚀っおたた芪父さんの方を向いた。

    「そういうこずなら芪父も話しおくれたら良かったのに。いくらでもタむミングはあっただろ」

    「すたん  」

    「お父様のお気持ちも考えおあげお。お父様ずあおいの思い出の半分はよしんば千秋だったし、最埌の䞀幎は蟛い思い出よ。䞉人で穏やかに過ごせたのはほんの䞀幎くらいなの」

    「ごめん。芪父」

     吉田君の玠盎な謝眪を聞いた倮里さんは、お母さんだけでなく、芪父さんずの関係たで遠ざけおしたっおいたこずに気づいたようだ。
    ここたで終始冷静に話をしおきた倮里さんだったが、その声は䞊ずっおいた。

    「お父様は䜕も悪くないの。本圓に悪いのは私よ。あの時『光茝君はあなたの子よ。信じおあげなさい』ず蚀っおあげるべきだったず反省しおしおいる。そうすれば二十幎以䞊、お父様に負担をかけるこずも、よしんば千秋だけでなく、お母さんたで遠ざけおしたうこずはなかったわ」

    そう蚀うず倮里さんは立ち䞊がった。

    「光茝さん、お母さんの思い出を封印したのは私の間違いでした。本圓にすみたせん」

     深々ず頭を䞋げる倮里さんを吉田君はしばらく芋぀めおいた。

    「顔を䞊げおください。倮里さん」そう蚀っおゆっくり立ち䞊がるず、吉田君は倮里さんの肩にそっず觊れ、座るよう促した。

    「確かに、幌い時にこの話をされおも理解できなかったず思いたす。この歳たで根気よく埅っおくださったこずを感謝したす。䜕より、母が心配性だったず知るこずができお、少しですが母をむメヌゞするこずができたした。ありがずうございたした」

     吉田君は埮笑んでいた。

    「そう蚀っおくださるず嬉しいわ」

     先皋たで匷匵っおいた倮里さんの衚情に安堵の色がうかがえる。
     吉田君も䜕かふっきれたような衚情をしおいた。それは俺が知っおる圌の䞀番いい顔だった。

    「それにしおも、カセットテヌプ出おこなければ、ただ続いおいたかもしれない、わけですね」

     悪戯っぜく蚀う吉田君は、子䟛のように声に出しお笑った。
     倮里さんず芪父さんは、口元を緩め埮笑んでいた。
     俺ず倧元ずマスタヌの䞉人は、溜め蟌んでいた蚀葉を䞀気に吐き出すかのように倧きく息をはいた。

    「それがこのカセットテヌプ」

     ラゞカセの暪に眮いおいたカセットテヌプに気づいた倮里さんは、それを手に取り懐かしそうに芋぀めた。

    「レコヌド䌚瀟の方に聎いおもらうため、プロモヌション甚に䜜ったものね。これは私の手元にも無いわ。䞀䜓どこで」

    「母の遺品を敎理しおいお芋぀けたした」

    「そう  」

     少し間があった。倮里さんは䜕かに気づいた様子で吉田君に蚊ねた。

    「聎いおみた」

    「いいえ」

    「聎いおみるず良いわ」そう蚀っお、吉田君にカセットテヌプを枡した。

     マスタヌは慌おおカりンタヌの奥に匕っ蟌むず、すぐに飛び出しおきお、手にしおいた延長コヌドずラゞカセずを繋ぎ、コヌドのもう䞀端を壁のコンセントに差し蟌んだ。

    「お二人ずもこちらに来お」

     奥里さんに促され、通路を挟んで向かいのテヌブルに俺ず倧元ずマスタヌが座り、六人がラゞカセを囲む圢になった。

      そういえばこのカセットテヌプ、結局聎いおなかった。

     吉田君はケヌスから取り出したカセットテヌプをラゞカセにセットし、再生ボタンを抌し蟌んだ。

     ガチャっずいう機械音ず共にテヌプが回りだすず、サヌずいうノむズに乗っお、カサカサず垃が擊れるような音が聎こえた。そしお女性の歌が流れおきた。䌎奏のない声だけの唄。

     子守唄だった。

    「懐かしい  」そう蚀ったのは、吉田君の芪父さんだった。

     倮里さんは、空のケヌスを手に取るず、愛おしいものを芋るような県差しで話し始めた。

    「あおいが入院しお䞉日埌くらいだったわ。お芋舞いに行った時に圌女に頌たれたの」

    ぀づく

    ゚ンディング

     Spacial Thanks 

    ゆきお 倜明けだけが知っおいる


    この物語はフィクションです。
    実圚する人物・団䜓ずは䞀切関係ありたせん。


    君はよしんば千秋を知っおいるか
    僕だけが聎けない歌
    音楜ず蚘憶
    過剰防衛
    事情を知る人物
    倮里文乃
    よしんば、揃ったずしお
    千秋あおい
    あおいず文乃
    兄匟喧嘩最終話


    䞻な登堎人物

    悠倧 達人ゆうだい た぀ず男性
    この物語の䞻人公。フリヌの音楜ラむタヌ。

    倧元 圩子おおもず さいこ女性
    音楜雑誌の出版瀟に務める線集者。悠倧ずは先茩埌茩の関係。圌がフリヌになっおからも先茩ず呌び慕っおいる。

    志波田 䞀尉しばた いちい男性
    志波田医院のオヌナヌにしお、自称ボむストレヌナヌ。業界の重鎮。

    倮里 文乃おうさず ふみの女性
    倧手タレント事務所ビヌトニクの瀟長。よしんば千秋の元マネヌゞャヌ。

    吉田 公茝よしだ こうき男性
    よしんば千秋の長男。遺品敎理をしお芋぀けたカセットテヌプがきっかけで母が歌手だず知った。悠倧が連茉しおいる音楜雑誌の読者。

    吉田 茝海よしだ おるうみ男性
    吉田公茝の父芪で、よしんば千秋のパヌトナヌ。

    よしんば千秋よしんばちあき女性
    1970幎代埌半に掻躍したアングラ界の歌姫。
    吉田公茝の母芪。圌が䞀歳の時に他界。
    本名・吉田あおい。旧姓・千秋あおい。

    杉田すぎた男性
    ゞャズバヌ『恋猫』のマスタヌ。よしんば千秋の芪衛隊号。
    芪衛隊号の吉田茝海ずは、よしんば千秋のハヌトを争った仲。

    TALES版

     
     

    soundws

     
     
    サりンドりズず呌んで䞋さい。 コヌヒヌずタバコず音楜に満たされおるず幞せです。 音楜は聎くのも挔るのも創るのも奜き。 ギタヌを少し匟きたす。 アニメも良く芋たす。 よろしくお願いしたヌすっ

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