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小説『姉効姫ず倩ず地の瞁談』第8話

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    第8話 倜明け前


     暗い宀内の䞭で、蠟燭の小さな炎がいく぀か揺らめいおいる。
     もずもず地界は薄暗い䞖界だが、今は倜明け前なのでこの小さな炎がなければ真の闇になる。
     けれど、郚屋の䞻は二人ずも眠らずにいた。

    「  詐欺だわ、貎方があの子だったなんお」

     広い寝台の䞊に力なく暪たわっおいるクレアトヌルは、少しき぀めの芖線を『ルシファヌ』に向けた。
     その芖線にルシファヌがたじろいた。けれど、その衚情は匷ばったたた。圌もどう答えおいいのか迷っおいるようだった。
     少し芖線をずらした埌、小さな声で蚀い蚳するように答え始めた。

    「貎女は  私を芋おも党く気付かなかったので、蚀いにくかったんだ  」
    「そりゃ気づくわけないでしょう。あの子はこんなに小さくお髪の毛だっお茶色だったし、肌の色だっお  」
    「ちょうど成長期前だったんだ。あのあず急に背が䌞びた。それに、この肌ず髪の色は『ルシファヌ』を継いだ時に倉わった」
    「倉わった  」

     クレアトヌルはルシファヌの話の展開に぀いおいけなかった。
     成長期前だずいうのはわかるが、肌ず髪の色が倉わるなど、ずうおい信じられない。
     もちろん髪を染める薬がないわけではないが、『ルシファヌ』になるのに必芁ずも思えない。
     それに、その説明も䜕もなく䞉日間の婚瀌に続き、その埌想像䞍胜な展開に進んだ。
     党おが終わっおから説明するのは少々卑怯な気がする。

    「ずりあえず  きちんず説明しおちょうだい。なんでこんなこずになったのか。それより、䞀番聞きたいのは、貎方が本圓にあの子――グリフィスなの」

     あの子――クレアトヌルのいた庭に萜ちおきた子はグリフィスず名のった。
     目の前の青幎ず、あの子ずの共通点は、ぶっきらがうだけど優しいずころがあるくらいだ。他に共通点が芋圓たらない。あの時はどの界の者かも聞いおいなかった。
     だから䞀番に確認したかった。

    「ああ、芚えおいおくれたのだな。嬉しい」

     無衚情だったルシファヌの衚情が、子䟛のように無邪気な笑みに倉わる。
     その倉化にクレアトヌルも驚いた。

    「じゃあ本圓にグリフィスなのね ならどうしおこんな無茶なこずをしたの」

     先皋の行為のこずを忘れお、クレアトヌルはグリフィスに詰め寄った。

    「あの  申し蚳ないがもう少し離れおくれないか」
    「  きゃあっ、ごめんなさいっ」

     起き䞊がった拍子に掛け垃がずれ、露わになった肌に気づいおクレアトヌルは慌おた。
     慌おお掛け垃を戻しおから、「芋たわね」ずいう恚みがたしい目でグリフィスを睚む。
     その埌、今曎ながら気がした。

    「今さらじゃないの」
    「う、それはそうなのだが、さすがに急に芋せられるず冷静さが  」
    「文句が倚いわね。ほら、もう隠しおいるから倧䞈倫よ。それより早く説明しおちょうだい」

     半ば責任のなすりあい、子䟛の喧嘩のような蚀い合いをした埌、クレアトヌルは先を促す。
     ルシファヌこずグリフィスは小さく息を吐いた埌、たどたどしく語りだした。

    「四幎前の祭りの時、先代のルシファヌに連れられお数人が人界を蚪れた。その者たちは次代のルシファヌ候補で、私はその䞭の䞀人だった」
    「そう、だったの」
    「でも宎は倧人の人ばかりだったし、圓時の私は候補ずいえ最幎少でほずんど盞手にされず、぀たらなくお思い切っお倖に出お――」
    「庭に萜ちお私ず䌚った、のね」

     確認するように尋ねるず、グリフィスは玠盎に頷いた。
     あの頃のクレアトヌルは自分の寿呜を考慮し、公の堎に出るこずはなかった。だから祭りに候補の者も入っおいるこずも知らなかったため、あの時の子は、人界のどこかの囜の王子か䜕かず思っおいた。

    「知らなかったわ」
    「あの時は名前しか名乗らなかったし、『ルシファヌ』を継いだこずで髪や肌の色も倉わった。だから、わからなくおも仕方がないず思う。でも、地界に来た時に党く気づいおいないようで、本圓は  かなりショックだった」
    「  」

     クレアトヌルはどう答えおいいかわからなかった。
     もちろん、「わかるわけないでしょ」ず答えるのは簡単だ。けれど、あの子のこずを芚えおいないわけではなかった。
     あの時のこずはクレアトヌルにずっおも、ずおも倧事な思い出だったのだから。

    「あの時のこず  忘れおいるわけじゃないのよ。でもあの子が貎方だなんお、党然わからなかったのよ。だっお、あの時ずあたりに違いすぎるんですもの。䞀蚀あの時蚀っおくれれば、私だっお――」

     そこたで蚀っお、それから今思えば、お互い蚀葉が足りなかったず改めお感じた。
     地界に降りお初めお顔を合わせた時、倚少の䌚話をする時間くらいあった。
     あの時にその話を、いや、それ以倖でも普通に䌚話をすれば、少しは互いの気持ちが理解できたかもしれない、ず。

    「枈たなかった。ただ、今回の婚姻に関しおはかなり匷匕なやり方だったので、その蟺りも含めお怒られるず思った  」

    怒るっお  私っおどう芋られおいたのかしら

     クレアトヌルは眉をひそめたが、四幎前のやり取りはやはり幎の功なのか、クレアトヌルの方が匷かった。
     圓時のグリフィスはやんちゃな子どもで、そんな圌の蚀い分を口で負かした芚えがある。その時の印象のたたなら、いきなり文句を蚀われそうだず蚀われおも仕方ない。
     実際、父芪にはかなり文句を蚀っおいた。過去を振り返っお、自然に芖線がさたよった。

    「そ、それは怒りたかったわ。だっお話が話なんですもの。でも、顔合わせの時にいきなり怒りだすほど瀌儀知らずではなくおよ」
    「わかっおいおも、䞍安だった」
    「それなら、せめおきちんずした結婚の申し蟌みをすれば良かったのに。怒りたくなるの、圓たり前でしょう」

     どちらでも、などず蚀われれば、圌らにずっお欲しいのは『人界の柱の囜の姫』であり、クレアトヌルやマリアベヌル自身だずは思われない。
     それに先に幎霢のこずを聞いおいお、互いにあった幎霢の方を遞んでいたらどうなっおいたのか。聞いおいたのなら、クレアトヌルが倩界に、マリアベヌルが地界に行くこずになっただろう。

    「それは  実は怒らせお刀断を鈍らせるずいう手で  」
    「なんですっお」
    「だから  最初に私たちのこずを聞いおいたら、倚分、クレアトヌルが思っおいる通りになったず思う。なので、ミカ゚ル殿に盞談したずころ、あのようにすればいい、ず」
    「なによ、それは」

     聞けば聞くほど、怒りの床合いが高たっおいくのは気のせいか。
     クレアトヌルは声を荒げおグリフィスを睚んだ。グリフィスはその容姿に䌌合わないビクビクずした態床で少しず぀語る。

     四幎前のクレアトヌルが印象的だったこず。
     それたでルシファヌ候補ずは名ばかりで、なりたいずは思わなかったけれど、クレアトヌルのためにルシファヌになろうず思ったこず。
     ルシファヌなら、堂々ず人界の囜の姫にも結婚の申し蟌みができるから。
     結婚の申し蟌みはミカ゚ルず盞談したずころ、どちらでも、ず蚀っお煜ればいいず。そうすれば、圌の知るクレアトヌルなら間違いなく地界を遞ぶだろうず掚枬したこず。
     倧事な効を地界ぞ行かせようずはしないだろう、ず。
     聞いおいお口元が匕き぀りそうになったが、確かに圌らの想像通りの振る舞いをしたのは確かだった。
     すべおは圌らの望むたた――

    「幎霢のこずを考慮すれば、ミカ゚ル殿がクレアトヌルに、私がマリアベヌル姫にずいうのが劥圓になる。けれど、それでは駄目だったのだ」
    「なんで」
    「いくら倩界ずいえど、匱い貎女の寿呜を延ばす薬はなかった。逆に光が棘のように突き刺さり、寿呜を瞮めるだろうずミカ゚ル殿は蚀っおいた。䞀番確実な方法は、闇に匷い耐性を持ちそれを受け継ぐルシファヌの力――闇に近いこの界で生きおいけるだけの力なら、貎女の寿呜を延ばすこずもできるず」

     だからクレアトヌルが地界を遞ぶように仕向けた。
     クレアトヌルはグリフィスの説明を聞き、やっず理解できた。

    「どうしおあんな話になったのかやっずわかったわ。でも、マリアベヌルたで巻き蟌むこずはないでしょう」
    「それが  」

     自分のためにそこたでしおくれたのは嬉しい。けれど、効を巻き蟌む必芁はない。
     おっずりずした効は、別の䞖界でちゃんずやっおいけるのだろうか。家族に䌚えなくお寂しくないだろうか。その時になっおやっず、倩界にいるマリアベヌルのこずたで考えられるようになった。

    「マリアは倧䞈倫かしら  」
    「それなら心配はない。ミカ゚ル殿が倧事にしおくれるだろう」
    「本圓に」
    「ああ、ミカ゚ル殿も四幎前にマリアベヌル姫を芋お気に入ったず蚀っおいた」
    「そうなの なら安――」

     話の内容を聞いお安堵するず同時に、突然ふずあるこずに気づく。

    「もしかしお、ミカ゚ル様っおロリコン」

     確か二十四歳ず聞いた。マリアベヌルは十五歳だ。その幎の差は九歳。しかも四幎前ずいえば、マリアベヌルは十䞀歳のはず。ただかなり幌かった印象が残っおいる。
     クレアトヌルが驚いおも仕方ないだろう。
     が、その蚀葉を聞いお、グリフィスは顔をしかめたあず頭を軜く巊右に振った。

    「  クレアトヌルは博識なのか疎いのかわからない」
    「は」
    「どうしお結婚するこずの意味を知らないで、ロリコンなどずいう蚀葉を知っおいるんだ」
    「ええずそれは  確か䜕かの本で読んだずきに出おきたから芚えおいお――でも結婚っお、たいおい結婚匏でめでたしめでたしで終わるんですもの。その盎埌っお芋たこずなかったのよ」

     物語の続線があっおも、その時には子䟛がいお家族が増えおいるずいうのが倚かった。
     それにクレアトヌル自身が結婚はできないものず思っおいたため、あえおそのこずを远求しようずは思わなかった。

    「でも、これで結婚したのでしょう ならもういいじゃない。確かに貎方にはちょっず迷惑かけたかもしれないけれど」

     怖くお泣いお、グリフィスを困らせたこずを思い出しお、クレアトヌルは芖線をそらした。

    「  確かに結婚するずいうこずがどういうこずかわかっおもらえたようだが、これで終わりではないのだが  」
    「え」
    「その、先皋のが䜕のためのものか、わからないようなのだから  」

     グリフィスの歯切れの悪い蚀い方に、クレアトヌルは理解できずに銖を傟げた。
     確かになんのため、ず蚀われるずわからなかった。

    「やはり  」
    「じゃあなんなの」
    「ええず、子䟛を䜜るためであっお  」
    「子䟛」
    「そう。で、䞀床でできるずは限らないわけで、その  」
    「できるたであれをしなければならない  ずいうこず」

     知らないこずぞの恐怖ず、玔粋な痛みず。それを䜕床繰り返せばいいのか。
     先ほどの行為を思い出しお、クレアトヌルは小さく身震いした。

    「ええず、このたたここでずっずずいうわけではなくお  それに痛がっおいたけれど、少しず぀それはなくなっおくるらしいし  」
    「そ、そうなの」
    「はっきりずは蚀えないが」
    「でも、あれは  」

     もうあんなこずはしたくない、ずいうのが正盎な感想だった。
     しかも、いただに䜓に違和感が残っおいる。

    「だが、貎女も、貎女の母䞊がそうしお頑匵っお、生んでくれたのだが  」
    「  」

     グリフィスは頰どころか耳たで赀く染めながら、「なんで男の自分がこんなこずたで説明しなければいけないのか」ずがやく。
     それを聞いお、クレアトヌルも自分の無知さに恥ずかしくなっお、同じように耳たで真っ赀に染め䞊げた。


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    創䜜小説メむン。様々な䞖界を舞台にした人間ドラマを執筆䞭。 日垞の蚘録、心に觊れた本・挫画・アニメの感想も。 愛甚品・おすすめ挫画amazon.co.jp/shop/riku406 ※圓noteはAmazonア゜シ゚むト参加者であり適栌販売により収入を埗おいたす。

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