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1年で1,095時間情報を浴び、真っ白な空白しか残らなかった40代の夜

1時間かけて、私が発信したのは、真っ白な空白だった。

情報を、浴びるだけ浴びていたのに、
何も残らなかった男の話をしよう。


今日もスナックゆきで、一杯だけ頼んだ。
ダルウィニー15年にした。

標高の高い場所で、
ゆっくりと熟成される酒だ。

急がず、
時間をかけるほど、
深くなっていく。

今日の相棒 ダルウィニー15年

時間がない。忙しい。

現代人はみんなそうだ。
私もそうだ。

だから、
1日のスケジュールを、
紙に書き出してみた。

仕事に10時間。
睡眠に7時間。

身支度、通勤、
ご飯、入浴で4時間。

残りは、3時間。

その3時間を振り返ると、
私はSNSで溶かしていた。


帰ったら、YouTube。

隙間時間には、
XやInstagram。

昼休みには、note。

でも、
私には免罪符があった。

常にニュースやビジネス系を見ていれば、
最新トレンドが把握できる。
スキルが上がる。
仕事の質が高まる。

そう、信じていた。


noteを書き始めた。

最新の情報は、
持っているつもりだった。

時事ネタもいい。
この前見た自己啓発の話もいい。

色々な情報があるから、
発信できる内容も、
たくさんあるはずだった。


実際は

1時間、
noteは真っ白だった。

書きたいことが、
浮かばない。

何を書けばいいのかすら、
わからなかった。

書いては消して、
書いては消した。

1時間かけて、
私が発信したのは、

真っ白な空白だった。


その足で、
スナックゆきに向かった。

カウンターに座るなり、
ママにその話をした。

ママは、
グラスを磨きながら、
こちらを見ずに言った。

「浴びてただけで、食べてなかったのね」


無駄だとか、
意味がないとか、
やめろとは言わない。

ただ、
自分がSNSで得た情報を、
振り返ってみた時。

脳の隙間からサラサラと流れ出ていく情報の残骸を、私はただ、呆然と見つめていた。

残ったものは、
何もなかった。

何かあったのではない。
何もなかったのだ。

あなたにも、
そういう時間はありませんか。


20代で会社に入り、
仕事を覚えた。

30代で、
必死に実績を積み上げていった。

気がつけば、
私たちの生きる世界は、

「常に最新の情報を浴び続けなければ、
脱落する」という、

終わりのない劇場のように、
なっていた。

全員が猛烈に疲弊しているのに、
誰も椅子から立ちあがろうとしない。

この劇場には学ぶべき、
きっと大事なものがあるはずだと、
思い込んでいた。

僕はただ、
置いていかれる恐怖から逃げるために、

必死に座り続けていただけだった。


でも40代は、
そろそろ、

その狂った劇場から、
静かに去ってもいいのかもしれない。

私は、もう
背伸びをやめる。

自分の手元に、
10年、20年とかけて残ってきたものだけを、

静かに棚卸ししていく。

誰のコピーでもない、
拙い自分の言葉を、
1行ずつ書く。

それは、
時代の速度に対する、
私なりの、
静かなやせ我慢だ。


ダルウィニーをもう一口飲んだ。

急がず、
ゆっくりと、
積み上げてきた酒だ。

浴びるように過ごした時間より、

一口ずつ、
確かめながら飲む時間の方が、

ずっと、
自分の血肉になる。

たぶん、だけど。

グラスが空いた。
今日はここまでにする。



はじめてスナックゆきに 来てくれた方へ。
私がどんな人間で、 なぜこのエッセイを書いているのか。
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