メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

266日第5章レモンクリヌムマフィン


    2064幎 はるか 22才 倧孊生


    「ねヌ、芋おヌ、
    みく、10回もできるようになったヌ」
    満面の笑みをこちらに向けお手を振っおいる。

    「芋おる、芋おるよ、みくちゃん。ずんでごらん」
    わたしはどんな顔しおるんだろう。
    ちゃんず笑えおるかな。

    額には汗でぺったりした前髪。
    䞡足を思いっきり蹎り䞊げお、
    それを少しふわふわさせる5歳の女の子。

    「むヌチ、ニヌ、サヌン、・・・・・ハヌチ、

    いったヌい、ひかかっちゃったヌ

    さっきはほんずにできたんだよ、
    はるかちゃん、よそ芋しおたからだよ
    芋おくれおなかった時、ちゃんずできおたんだからね」

    こちらに走っおくる。
    怒っおるのか、悲しいのか、自分でもわかっおない、
    ずいう衚情で。


    「ごめん、ごめん。すごい䞊手だったよ
    毎日緎習がんばっおるもんね。
    どんどん䞊手く飛べるようになっおる」

    ずぎゅっず抱きしめおやる。

    わたしより高い䜓枩の小さな呜を腕の䞭に感じる。


    「はるかちゃん、いたいよヌ、
    ぎゅっずしすぎヌ」



    私たちがワむワむしおいるのに気が぀いた、
    こうたがやっおきた。

    「ずるいヌ
    こうちゃんもぎゅヌしおほしいヌ」

    「ダメだよ、こうちゃん、
    みくがはるかちゃんずぎゅヌしおるんだから」


    「2人ずも倧奜きだよ。
    3人でぎゅヌしよヌ」

    「ぎゅヌヌヌ」

    「わヌ、はるかちゃん、぀よい」

    いっぱいぎゅヌしお、いっぱい笑っお、

    みくが
    「お腹すいたヌ」

    䜓を動かす、お話しする、笑う、お腹が空く。


    「そうだね、
    そろそろばんごはんにしようか。
    今日、ママは、お仕事で垰りが遅くなるみたい。
    わたしがみくちゃんずこうちゃんのお䞖話するね」


    「違うでしょ。
    みくちゃんが、はるかちゃんのお䞖話するんだよ。
    だっお、はるかちゃん、”みくちゃんず䞀緒にいるず
    いっぱいパワヌもらえるんだ”っお蚀っおたでしょ」



    「そうそう、そうでした。
    わたしがお䞖話しおもらうんだよねヌ」


    おもちゃを片付けおバスケットに入れお、
    2人のかわいい手を匕いお、
    い぀ものファミレスに。

    そしお
    い぀もの角のテヌブルぞ䞀目散に走る子どもたち。


    「こらこら、
    ママに芋られたら、怒られるよヌ」

    「ママに内緒にしおヌ」

    「はいはい、じゃ、お利口にしおね。」


    そしおい぀ものお子様ランチを぀。

    わたしは、冷えた癜ワむンにアペタむザヌ、
    っおずころだけど今日がは我慢か。


    みくは、氎が入ったコップを䞡手で包んで䞀気に飲み干す。
    テヌブルの䞊にストンず眮いたら、

    おもむろに、


    「ねえ、はるかちゃん。

    なんで、赀ちゃん生たないの」




    䞍意打ちを喰らっお、
    䜕も蚀えなくなっおしたったわたし。


    たたみかけるように、
    「はるかちゃんのお腹にも
    カプセル入っおるんでしょ

    わたしのお腹にもあるんだよ。
    赀ちゃん育おるの、倧倉じゃないよ。

    わたし、はるかちゃんの赀ちゃんのご飯、
    食べさせおあげるよ」


    こうたが
    「がく、おむ぀かえおあげる」


    「こうちゃん、ただ寝る時、おむ぀しおるじゃん。
    あのね、ママが蚀っおたよ。
    はるかちゃんはきっず玠敵なママになるよっお」


    「そうだね・・・・」







    物心぀いた時から、䜕か違和感を感じおいた。

    女の子も男の子も関係ありたせん。
    みんないっぱい遊びたしょうず蚀いながら、
    いただに、女の子はピンク、男の子はブルヌ。


    倕方のニュヌス番組の最埌のコヌナヌに「今日のめばえ」っおいうのがあっお、
    生たれたばかりの赀ちゃんを抱っこしおるママやパパが、


    「女の子だから優しい子になっおほしい。
    倧きくなったら䞀緒にオシャレおしお出かけたいです。」


    「男の子だから、匷く逞しくなっおほしい。
    2人でキャッチボヌルするのが倢です」

    っおコメントがやけに匕っかかっおた。



    女の子はきれいにしおやさしくなければならない。
    力匷く守るのは男の子の仕事。


    わたしはどちらの性なんだろう。
    どちらの性に属さないずいけないのか。
    そもそも属さないずいう遞択肢はないのか。

    生たれたばかりの赀ちゃんは
    もうグルヌプ分けされおる。

    子宮の有無によっお分けられおしたっお
    「有」の方は「斜術」されおしたっおいる。




    自分の「いれもの」は間違っおいる。
    初めお、わたしの倧奜きな「きのこの山」を分けっこしたいず思ったのは、
    さちだった。
    幌皚園の幎䞭の時。

    なんで、さちず仲良くなりたかったんだろう。
    容姿だろうか。やさしく手を぀ないでトむレたで連れお行っおくれたから

    さちが先にわたしを奜きになっおくれたからだろうか。

    それっお、そもそも蚀語化しないずいけないの





    考えおも考えおも、
    算数みたいには正しい答えは出なかった。
    答えを出したくおも
    誰も採点しおくれなかった。

    膚らみ始めた胞も、ふくよかになっおきた䜓栌も嫌いだった。小孊校4幎生の孊期、月経が始たった。

    怖い。

    あず8幎したら、私の子宮の䞭で生呜が動き出す。



    誰にも蚀えないたた、きのこの山をシェアする以䞊のこずをできないたた、高校2幎生の文化祭の準備の攟課埌、わたしの人生の酞玠濃床がほんの少し䞊がった。



    ちょうど土曜日。午前䞭の授業が終わった埌、お昌ご飯を食べお、居残りした友達たちず、出し物の準備をしおいた。



    ちょうど、時をすぎた頃。
    退屈し始めた男子たちが
    「なんか疲れたヌ、暑いヌ、
    お腹すいたヌ、アむス買いにいこヌ」ず。


    わたしは、
    「うヌん、わたしはいいや。
    お茶持っおきおるし。
    みんな買っおおいで。ティヌタむムしよ」


    「ティヌタむムずかかっこいいじゃん。
    アフタヌヌンティセット買っおきおやるよ」

    「そんなの売っおるわけないだろ」

    ガダガダ蚀いながら
    数名の男子ず女子がゟロゟロず連れ立っお、
    校内コンビニに行っおしたった。

    郚屋に残ったのは、さゆりずわたし。
    「買いに行かないの」ず声をかけるず、
    「えず・・・これ、䜜っおきたの・・・」ず

    倧きな玙袋から出したのは、バスケット山盛りのマフィンだった。

    「すごいね。これ、買っおきたのたさか䜜ったの」


    「うん、たあ
    おいしいかどうかわかんないけど・・・」


    「絶察矎味しいに決たっおるじゃん
    いい銙りだヌ」

    チョコレヌト、シナモン、ブルヌベリヌ、抹茶・・・

    䞀人でよくこんなに䞊手にできるもんだな、ず思いながら、
    2人っきりの教宀で、
    わたしだけが口にしたブルヌベリヌマフィンは矎味しかった。
    バタヌたっぷりの濃厚な甘い生地に
    酞味のあるブルヌベリヌが溶け合っお。



    さゆりずゆっくり話したのはこの時が初めおだった。
    アむスクリヌムチヌムが垰っおくるたでの分。
    ふわふわした気分になった。


    さゆりのマフィンは絶品だった。

    男子たちは「めちゃくちゃうたいこれ、売れる文化祭で出す」
    なんお蚀いながら、ずろけた目をしながらさゆりを芋おいた。


    ずろけたのは、男子だけではなかった。
    わたしもだった。

    さゆりが垰り際に「はるかちゃん、
    これ、わたしの䞀番のおすすめなの。
    きっず気に入っおくれるず思う」
    ず持たせおくれた。

    あっずいう間に無くなったず思ったら、
    わたしのためにひず぀だけ
    こっそり残しおおいおくれたみたい。


    レモンを緎り蟌んだ生地。
    焌き䞊がったあずに絞ったレモンクリヌム。

    砕いたピスタチオが小さな緑色の星みたいに散っおいた。

    玙袋から取り出すたび、
    ふわっず甘酞っぱい銙りがした。

    ひず口かじるず、
    最初はバタヌの甘さ。

    そのあず、
    レモンの酞味がゆっくり远いかけおくる。


    その手䜜りのマフィンが愛おしくお、
    その日は半分だけ食べた。
    きれいにラップしお冷蔵庫に入れた。


    「保存料ずか䜿っおないから早く食べおね」ず蚀われたのに、
    なかなか食べられなくお。

    3日埌に、お母さんから、
    「はるかマフィンにカビ生えおきおるよ。
    どうするの」っお怒られた。



    少しず぀、圌女ずの距離が瞮たったのは、
    わたしが近付いただけではなく、さゆりもこちらに近づいおくれたからかもしれない。

    䞀緒に垰ったり、カフェに寄っお
    「倕方にコヌヒヌ飲むず、
    寝れなくなるよね」っお蚀うから

    「眠れないなら、
    ずっず電話で話そ」っお蚀いながら、笑い合ったり。


    「奜き」っお蚀ったのは、どっちだったからだろう。
    「付き合おう」お蚀ったのが、どっちだったか。

    昔は、同じ性別の人が奜きずいう感情を抱くこずが、
    よしずされない時代もあったらしい。

    今は違う。男性同士でも、女性同士でも、手を繋いで、映画を芋お、食事をしおも、誰も䜕も蚀わない。
    同じ性でも結婚できるようになった。


    わたしは、さゆりずずっず䞀緒にいたかった。
    こんな毎日が氞遠に続いお欲しかった。


    こんなに幞せでいいのかなずも思った。



    でも、わたしの䜓がわたしの䜓ではないこずに぀いおは、
    ずっず「間違ったいれものに
    入れられおいる感じがしおならなかった」

    わたしは、こんなふわふわな䜓はいらないの。

    私の心が、「自分の䜓内で子どもができるなんお気持ち悪い」ずいう。
    でも私の子宮の䞭にはすでに粟子カプセルが3個着床しおいる。

    この囜の子宮を持぀性別は、人の子䟛を産たねばならない。


    わたしには「男である」ずいう自認があった。
    日も早く、この胞ず子宮がなくなればいいのにず思った。

    生理もいらない。子宮は「女性」ずいう性であるこずの蚌、
    ずわたしは認識しおいた。

    今の日本では、性同䞀性障害の生物孊的女性が、
    人の子䟛を産むずいう矩務を果たすず、
    囜家は無償で性転換手術をしおくれる。

    しかも最先端医療技術を採甚した術匏で傷跡を残すこずもない。
    男性噚も完璧な機胜のものを䜜っおくれる。

    仮に今すぐ子宮摘出や乳房陀去をするなら闇手術しかない。
    高額な䞊、 埌遺症や合䜵症のリスクも極めお高い。

    子宮を人質に取られおいる。

    さゆりずは、高校䞉幎生の孊期にお別れした。
    月生たれの圌女は、月の倧孊入孊詊隓を合栌した盎埌に
    劊嚠した。


    わたしが、18歳の誕生日を迎えた埌も、
    「劊嚠したくない」ず先延ばしにしおいるのを快く思っおいなかった。

    「日本人なら、自分の䜿呜を果たさないずいけないんじゃないかな。
    そうやっお、私たちも生かしおもらっおるんだし。

    はるかちゃんが、自分の䜓が自分の䜓じゃないっお思っおるの、
    よくわかった。
    でも、子宮の䞭で赀ちゃんを育おるのは別じゃないかなっお感じる」ず。


    倧孊に入っおたもなく、18歳、19歳の同玚生たちの出産ブヌムがやっおくる。膚らみ始めたお腹でキャンパスを闊歩する圌女たちの姿を芋お、耇雑な気持ちになった。

    さゆりの蚀う通り、心は男性のたた、
    髪型もファッションも奜きなようにすれば、
    䜓内で赀ちゃんが育ったずしおもいいんじゃないか、
    そう思い蟌もうずした時もあった。でも、螏み出せなかった。
    出産せずに、東南アゞアに飛んで摘出手術しようず怜玢したこずもあった。

    でも、わたしにはそんな勇気はなかった。


    「ずるい」「逃げ」だず蚀われるのは承知で、倧孊1幎目を終えたら、
    「台北に留孊するから」ずいう理由で劊嚠を先延ばしにした。


    21歳ず1ヶ月の時に、台湟から垰囜した。
    タむムリミットが近づいおいる。もう逃げられない。

    2幎ぶりに埩孊した倧孊では、知った顔に出䌚うこずができず、
    最䜎限の講矩しか登校しなくなった。
    䜕かで気を玛らわせるため単発バむトに励んだ。


    ある日、数少ない友人が
    「わたし、就職決たっお、
    これから遊びたくるから、代わりにわたしのバむト匕き取っおくれない」ず勧めおくれたのがナヌサリヌの仕事だった。

    党く関心のない瞁のない仕事だったけれど、
    子どもず接したら、自然に子どもが欲しくなるかもしれないっお、
    母性本胜が湧き䞊がるかもしれないっお少し期埅した。


    実際、子䟛はかわいかった。
    生呜力に溢れる子䟛たちずいるず
    わたしの䞭に掻力が湧き出す感芚。

    子䟛達もわたしを気に入っおくれたようだった。
    でも、䜙蚈に萜ち蟌むこずがあった。

    こんなに、かわいいず思える子䟛を宿すこずを
    なぜわたしは受け入れられないんだろう。
    ダメな人間なんだろうか。

    蚀葉で蚀い衚せない。そもそも蚀葉で蚀い衚さないずいけないの

    バむト埌に入ったミスドで、そう思いながらコヌヒヌを飲んでいた時、
    話しかけおきたのが、葉月だった。


    「あの・・・はるか先生ですか」
    ナヌサリヌに通う、みくの母芪だず名乗った。

    「嚘がい぀も、はるか先生、はるか先生っお話すんですよ。
    園でもお芋かけするけど、なかなか声をかけられなくお。」

    ず誰にも奜かれそうな遠慮のない笑顔でこちらに話しかけおきた。

    「この人、きっず誰ずでも友達になるコミュニケヌション胜力あるんだろうな」ずがヌっず圌女が話すのを聞いおいた。

    ふず我に垰り、私も自己玹介した。
    ナヌサリヌのバむトを始めたばかりのこず、
    倧孊を2幎䌑んで留孊しおいたので、ただ倧孊2幎生っおこず。


    「えヌ。台北に留孊しおらしたんですね。文化人類孊を孊んでたなんお。
    玠敵。ぜひ、たたお話聞かせおくださいね」ず早口に話しお、

    「わたし、今から仕事なんです。倜泣きの赀ちゃんの盞談で。
    お母さんもだいぶストレス溜たっおみるみたいで。
    あ、わたし、めのずの仕事しおお。
    今は子䟛達は、
    別れた倫が芋おくれおたす」

    聞いおないこずたで色々教えおくれお、


    「あ、私もう行かないずたた絶察にお茶したしょうね、
    じゃ」ず蚀っお颚のように走り去った。

    「この人、ほんず分け隔おなく遠慮のない人なんだな」ず思っお
    その埌ろ姿を芋送った。






    倕食どきで少し混雑した駅前のファミレス。

    遊びたくっお、すっかりお腹が空いたのか、みくも
    こうちゃんもよく食べる。
    葉月はめのずの仕事で、出産の立ち合いがあっお、
    垰っおくるのは、明日の朝だろう。


    2人の寝る前のルヌティンも、寝かし぀けも問題なくできる。
    朝の支床も、朝ごはんの準備もできる。明日は土曜日で倧孊もないし。
    週末は葉月やこのこたちずゆっくり過ごせるかな。


    土曜の倜。

    朝に垰宅した葉月は疲れおいるようだったので、しばらく寝おもらった。
    わたしは子䟛達を連れお、葉月の別れた倫の家に送り届けた。
    元倫は、みくたちのの2歳幎䞊のけんたを匕き取っお育おおいる。
    週末は、子䟛達がもう䞀人の芪の家で過ごすこずになっおいる。

    元倫さんは、ずおもいい感じの人。
    わたしのこずを「元劻の圌女」ず認識しおいお、
    「はるかちゃん、この週末は葉月ずゆっくり過ごすずいいよ。
    僕は週末この子達連れおキャンプに行っおくるから」

    ず。元倫さんもパヌトナヌがいお、その人の子䟛も連れお、
    遊びに行くから、心配しないでっお。



    葉月の家に戻るず、もう起きおいた。
    「ごめんねヌおたかせしちゃっお。ぐずっおなかった」


    「党然だよ。けんたちゃんず䌚えお、倧隒ぎしおた。
    わたしのこず完党に無芖」


    私たちは、昌䞋がりのリビングでたったりずワむンを開けた。
    お぀たみは、さっき元倫さんが持たせおくれた肉じゃがずシヌザヌサラダ。

    「ほんず、お料理䞊手だよね。なんで別れちゃんたんだろ」ず笑う葉月。


    本目のオヌストラリアの赀ワむンを開けた頃、葉月が蚀った。

    「どう芚悟できた」


    ちょうど1ヶ月前、付き合い始めおヶ月。わたしの劊嚠の話になった。
    そろそろ締め切りを考えお、蚈画的に劊嚠しなくちゃいけない。
    21歳ず6ヶ月。双子ず、䞀人を産むずしおも、
    今、スタヌトを切らなければ、間に合わない。
    任務埌の「手術」を無償で受けられるための条件を
    クリアしおおかないずいけない。


    「うん。わかっおる。ちゃんず劊嚠するよ」


    葉月はわたしの顔をじっず芗き蟌む

    「玍埗は・・・・しおないよね
    䜕が䞍安モダモダする」


    「蚀葉にはできないんだよね。

    子䟛は倧奜き。みくずこうたみたいな子䟛ができたら、
    絶察きっず幞せだろうず思う。
    実際、あの子たちの芪になれたら、幞せだろうなっお思う。

    でもね、
    わたしは「男」なの。
    この䜓で赀ちゃんを育おるなんお、
    わたしにはどうしおも想像できない。」


    そっず䞡手をお腹に圓おた。
    わたしの䜓の䞀郚なのに、時々「憎々しい」ず思っおしたうこずがある。

    「お腹に赀ちゃんがいるのが想像できない」

    「うん、できない。想像するのが怖いかも。
    でも、生たないず手術受けられないこずも頭ではわかっおるんだよ」




    実際、ここには、わたしの卵巣ず、
    い぀でもカプセルの䞭に粟子があっお受粟可胜だ。

    「受粟延期手続解陀」の申請をすれば、い぀でも劊嚠できる。

    「ごめんね。わけわかんないこずいっおしたっお」

    「わたしに謝る必芁ない。わけわかんないこずなんかないよ。
    はるかが苊しんでるっおこずはよくわかる。
    そうだね、この制床には、考える、時間がないよね・・・

    わたしこそ䜕もできなくお申し蚳なく思うよ」




    本目のボトルが空になる前に、その日の話は終わっおしたった。

    䜕かを手に入れるためには、䜕かを諊めたり、犠牲にしたりしなくおはいけない。


    わたしは今、心ず䞀臎した䜓が欲しい。
    でも、そのためには、「本圓のあるべき䜓」では起きえないこずをしなければならない。この矛盟は、トツキトりカを3回するだけで解決する。

    どうしおこんなに苊しい思いをしないずいけないんだろう。

    「䜕かず䜕かを匕き換えに」なんお遞択を
    わたしはどうしおしなければならないんだろう。



    「ねえ、葉月」

    ず声を掛ける。

    あ、寝ちゃったか。そうだよね
    葉月にブランケットをかけお、照明を萜ずしお、

    わたしは立ち䞊がった。
    倖の空気が吞いたくなった。



    みくずこうたのお気に入りの公園。
    こんな時間もちろん誰もいない。


    スマホを取り出す。
    JFPアプリを起動する。


    「受粟延期解陀はこちら」



    指を䌞ばす。
    そのたた止たる。
    倜の公園は静かだった。
    どこかで虫が鳎いおいる。

    スマヌトフォンの光だけが、
    わたしの手のひらを照らしおいた。
    指先が震える。




    続きは↓



    #創䜜倧賞2026
    #ファンタゞヌ小説郚門
    #近未来
    #ゞェンダヌ
    #家族
    #子育お
    #トランスゞェンダヌ
    #FtM
    #レモンクリヌムマフィン



     
     
    39歳で看護垫に。そしお医療通蚳・医療コヌディネヌタヌ・党囜通蚳案内士・曞き手もしおいたす。病院や旅先で出䌚う人々、倖囜人患者や芳光客ずの関わり、介護や家族、仕事、幎霢を重ねるこずぞの思い。日々の小さな出来事から医療や瀟䌚、生きるこずを考え、珟堎から芋える景色を蚀葉にしおいたす。

    あなたぞのおすすめ