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第4章|20分間の星空

    深夜のサービスエリアで見上げた、渋谷では見えない星空。
    未来に届く光の話、ささやかな沈黙、そして照人の思わぬ優しさ。
    わずか20分の休憩が、二人の距離に静かな変化を落とし始める。


    バスが停まる。
    山間に佇むサービスエリア。
    深夜0時を回り、夏の熱が残る空気は、風の冷たさで少し和らいでいた。

    「20分休憩です」と運転手の声。
    ルナと照人は、他の乗客に続いてバスを降りる。

    「わー……星、見える……」

    ルナが空を見上げ、ぽつりと呟く。
    渋谷では見えない小さな星々が、夜の闇に粒のように浮かぶ。

    照人は自販機で缶コーヒーを選びながら、ふと思いつく。

    「今、この星の光を見てるけど、実際は何十年、何百年も前の光なんだよな」

    「うん、知ってる。時間を越えて届いてるんだよね」

    ルナの返事は、さらりと自然だ。

    照人は缶を開け、続ける。

    「ってことはさ、今この瞬間に新しい光が生まれたとして、それを見るのは、もっと未来の誰かだよな」

    「……うん、そうだね」

    ルナの返事が一拍遅れる。
    照人の横顔をちらりと見るが、何も言わない。

    「今の出来事が、未来にだけ届くって……なんか不思議だよな」

    照人は夜空を見上げ、軽い口調で言う。

    「……たしかに」

    ルナも星を見つめる。
    その目は、どこか遠い場所を映しているようだった。

    数秒の沈黙。
    夜風が、二人の間をすり抜ける。

    「まあ、今の俺には未来より、次のサービスエリアが気になるけどな」

    照人は缶コーヒーを掲げ、笑う。

    ルナはくすっと笑い、肩をすくめる。

    「ほんと、話が深いのか浅いのか分かんないね」

    「よく言われる」

    何気ないやりとり。
    でも、照人の胸に、微かなざわめきが残る。
    ルナのほんの一瞬の間が、何かを隠しているように感じられた。
    けれど、それが何かは、まだ掴めない。

    その時だった。

    「Excuse me… do you know where is the main gate? I think I’m lost…」

    売店近くの案内図から、若い外国人男性が不安そうに英語で話しかけている。
    スタッフは困った顔で首を傾げる。

    ルナが一歩踏み出そうとした瞬間、照人が先に動く。

    「……ちょっと行ってくる」

    自販機の光に照らされた横顔が、いつもより少し大人びて見える。

    「Here. You came from this gate, but the bus stop is this way. See this? It’s drawn from the front entrance, but your exit is here. Opposite. Easy to get lost.」

    流暢ではないが、的確な英語。
    男性は「ああ!」と目を輝かせ、スタッフに頭を下げ、照人に従う。

    数分後、照人が戻る。
    ルナは呆れたように、でも少し嬉しそうに声をかける。

    「英語、話せたんだ?」

    「ちょっとだけ。単語並べただけ」

    「案内図も、よく分かったね。私、あれ見てもさっぱりだった」

    「配置がおかしかったんだ。バスの到着口と案内図が逆で。しかも“西棟”が下に描いてある。普通、地図は北が上だろ?」

    「そんなの気にする人、少ないよ」

    「……迷う側の人間だからさ。道に迷うこと多くて、いつも人の動き見てると、自然と“迷わせない地図”が分かる」

    ルナはふふっと笑う。

    「地味だけど……頼りになるね、君」

    「それ、褒めてる?」

    「たぶん」

    照人は照れたように目を逸らす。
    夜風が、ルナの頬を撫でる。

    ──この人、困ってる人を見過ごせないんだ。
    外国人なら、なおさら心細かっただろう。
    もしかして、私にも通じることじゃない?
    知らない場所で、ひとり取り残された感覚。
    それを、ほんの少し軽くしてくれる存在。

    「……ありがとね、照人」

    「え、何が?」

    「なんでも」

    素直に言うのは、ちょっと恥ずかしい。
    でも、ルナは彼への印象が確かに変わったのを感じていた。

    二人は黙って星を見上げる。
    空を、流れ星のような光が横切る。

    「ほら、見て」

    「うん……願い事した?」

    「しないよ」

    「なんで?」

    「願うんじゃない、叶えたい事は自分の手で切り開くの」

    照人は少し驚いたように笑う。
    その笑顔が、ルナの胸に静かに染み込む。

    バスが再び動き出す。
    ルナは心のどこかで、彼を自分の物語に少しだけ入れてもいいかもしれない、と思った。


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    📘 Novel × 🎵 Music × 🎥 MV すべてAIで創り続けるプロジェクト。 小説「Parallel Lights」を元にした楽曲 『Before the World…』を公開中。 小説・作詞・作曲・アレンジ・MVをSuno / Sora2 / Canva など

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