
NetSuiteも対応!クラウドERPとMCP/AIエージェントで広がる可能性
こんにちは!米田です。
生成AIの業務利用が進んでいます。用途としては「文章/議事録作成・要約・翻訳」「カスタマーサポート」「コード開発・IT運用」「リサーチ・分析」「教育・トレーニング」「クリエイティブ作成」が多いですが、組織内に眠っている様々なデータを活用できれば、それぞれのシナリオは更に深化し、かつ他の領域にも広がっていく可能性を秘めています。
今回の記事では、生成AIとの連携に対応したクラウドERPによって広がるシナリオ、実際に連携を触ってみての感想、今後の方向性について考察してみます。
生成AIが扱うデータに関する課題
2022年に生成AIが話題になり始めてから常に言われてきている課題として
● 最新情報や組織内データが大規模言語モデル (LLM) に取り込まれていない
● 汎用的なLLMでは、特化領域の課題に対応できない
といったものがあります。生成AIのLLMが進化してくる中で、一部の課題、たとえばOpenAIのChatGPTは日本語や日本の文化・法令等への対応が当初は弱かったのですが、バージョンを重ねるにつれて言語別、国別の情報も学習が進み、最近では気にならなくなってきました。
最新情報への対応も、当初は「学習データは202X年XX月までのものです」という回答を返し言い訳をしていました。しかし、2024年10月にOpenAIがChatGPT Searchを実装してリアルタイムWeb検索を行うようになったことを始め、主要なLLMもWeb検索に対応することでクリアしました。
しかし、「組織内のデータがLLMに取り込まれていない」という課題は、生成AIベンダーが機能拡張を頑張っても解決できる課題ではなく、2025年8月にGPT-5が登場しても状況は変わっていません。

MCPとA2Aによる、生成AIからの外部呼び出しや生成AI同士の連携の標準化が進んでいる
LLMが組織内データを参照する仕組みは、いままでRAG (Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)による手法を中心に試行されてきました。しかし、LLMとのインターフェイス部分も含め各社が独自実装を行っており、品質や情報連携範囲が限定的でした。生成AI同士の連携も、MoE (Mixture Of Experts、混合専門家モデル)のような概念が提案されていました。
2024年末から2025年にかけて、生成AIからの外部呼び出しや生成AI同士の連携のプロトコル (通信手順) の標準化が業界で行われ、前者はAnthropicによるMCP (Model Context Protocol)、後者はGoogleによるAgent2Agent (A2A) プロトコルが有力視されています。
MCPについては2024年11月にMCPが公開されて以来、Python、TypeScript、C#、Javaなど複数言語のSDKが提供され、データベース参照、バージョン管理、プロジェクト管理、コミュニケーション、ナレッジ検索、システム・アクセス等、さまざまな分野で、開発者コミュニティや企業の実験的導入も含めると、250以上のリファレンス実装が行われ、実運用レベルのMCPサーバは少なくとも1万を超えていると見積もられます。
A2Aについては、GoogleがAWS、Cisco、Microsoft、OracleやLinux Fundationなど50社以上の主要テクノロジーパートナー・サービスプロバイダーと共に設計・支援しており、企業規模での支持基盤が構築されつつあります。プロトコル仕様はまだ進化中の段階ですが、既に100 社以上の企業がサポートしているとも言われています。ちなみに、A2A は MCP と競合するのではなく、MCP と連携するように設計されています。

2025年にはクラウドERPでMCPやAIエージェントの対応が始まった
さて、MCPやA2AはクラウドERPの分野でも実装が始まっています。私が知る限り、2025年8月現在で1st partyがネイティブにMCPを実装しているクラウドERPはMicrosoft Dynamics 365 ERP (finance and operation)とOracle NetSuiteのみです。
AIエージェントについては、まだA2Aプロトコルの実用アプリケーションでの実装には至っていないものの、AIエージェントの実用的実装が進行中です。
MicrosoftではMicrosoft 365 Copilot、Windows 11 (Copilot+PC)や開発環境・プラットフォームのGitHub Copilot、Azure AI Agent Serviceなど、生産性向上やソフトウェア開発の分野での実用化が進んでいます。
Oracleでは業務アプリケーションであるOracle Fusion Cloud Applicationに約50種類のAIエージェントが組み込まれている他、Oracle AI Agent Studio for Fusion Applications、OCI Generative AI Agents Platformといった開発環境が準備されています。

早速NetSuiteとClaudeとの連携を触ってみて感じた可能性と課題
Oracle NetSuiteは、2025年8月中旬に「NetSuite AI Connector Service」という名前のMCPサーバー機能が発表されました。既に実行環境に実装されているため、早速試してみました。
技術的詳細はQiitaにて:

生成AI (今回はClaude) とMCPを通してのクラウドERPとの連携を実際に試してみていくつか気づきや学びがありました。
● 問題の解法に複数の経路や異なるツールを使える可能性がある場合、結果が安定しない。
● 似たような出力をしたり、似たような名前のツールがあるとAIが迷ってしまう。
● どの解法が最適なのかをAIが本来理解していないといけないが、一般のAI (LLM)にはその知識がない。
● AIの知識不足を補うために、人間がプロンプト内で細かい指示を与える必要があるが、限界がある。
クラウドERPは、さまざまな業務データが詰まった沢山のリレーショナルDBの塊であり、データの種類、データの取得方法が複数存在し、問題の解法に複数の経路や異なるツールを使えるという複雑なデータソースです。
そのため、MCPサーバー側では生成AIが理解できるような粒度で「ツール」(生成AIが呼び出すAPIのようなもの) の実装やその説明の記載を行う必要があります。
また、生成AI側は複雑なデータソースであるクラウドERP内のデータを正しく取り扱い抽出するための知識が必要になります。現状では汎用的な生成AIはこの知識を持っていないようです。
そのため、「売上高Top 5顧客を教えて」というプロンプトを送った際に、その都度解法のアプローチが異なり、使うツールの種類や順番が違ってしまう、そしてこれが違ってしまうと導き出す回答も異なってしまいます。
ERPで売上を求める方法は、顧客カットで行くか、商談カットで行くか、発注書カットで行くか、請求書カットで行くか、など色々なアプローチが考えられます。それぞれの方法により求められる値も異なってきます。人間でも、ERPをよく知らない人に売上高トップ5レポートを作って、といったときに、同じ課題が出てくることは容易に想像できます。
現在のNetSuiteのMCPサーバーはまだサンプル実装で、今後さらにブラッシュアップされていくはずですが、❶MCPサーバーのツール実装の粒度・種類・数の工夫、そして❷ERPデータの扱いに長けた「NetSuite AIエージェント」の実装とA2Aプロトコルを通しての共同作業、が必要になってくるものと思われます。

生成AIからクラウドERPのデータが参照できるようになることで広がる可能性
今後、MCPやA2Aによる生成AI同士や外部データソースとの連携方法に関する標準化が業界内で進み、対応する実装が増えてくれば、生成AIはさまざまな組織内データとも連携ができるようになります。
もともと、生成AIには大規模言語モデル (LLM) の学習に使える公開データは2026~2032年までに枯渇する可能性があるという「AIの2026年問題」と呼ばれる課題がありました。しかし、組織内データへの拡張が行われれば、この限界を超えることができます。
生成AIの活用シナリオについても、現在は「文章/議事録作成・要約・翻訳」「カスタマーサポート」「コード開発・IT運用」「リサーチ・分析」「教育・トレーニング」「クリエイティブ作成」が多いですが、組織内に眠っている様々なデータを活用できれば、それぞれのシナリオは更に深化し、かつ他の領域にも広がっていく可能性を秘めています。
つまり、現在は「生産性向上」「アイディア創出」の一部に留まっている生成AIの活用シナリオが、組織内データを活用した「データ可視化」「分析」「判断」といったより広い業務分野に広がり、組織の競争力をより高めるための源泉となっていく可能性を秘めています。
そして、これを実現するためにはクラウドERPになるべく多くの業務データを集め「Single Source of Truth (SSOT: シングル・ソース・オブ・トゥルース)」(組織内で情報の一貫性と正確性を担保し、全員が同じデータに基づいて意思決定を行うための、信頼できる唯一の情報源の確立)を早期に実現しておくことが肝要です。
このような最先端のAIテクノロジーとプロトコルを実装したクラウドERPを使うことで、組織の競争力を飛躍的に高めるための準備を今からしておくことは、優先的な経営課題のひとつに今後なっていくのではないかと思われます。

最後までお読みいただきありがとうございました!
では、また!
参考記事: