メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【昌ず倜の番人】第䞀章遞定の幎出立の日ノア線


    朝は、静かに来た。

    鳥たちが朝を教えるように歌っおいた。

    屋敷の窓から淡い光が差し蟌む。

    い぀もの朝だった。

    ノアは鏡の前に立っおいた。

    癜い瀌装。
    銀の髪食り。
    襟元のルクレシア家の王章。

    䞀床着た衣なのに、今日は少し違っお芋えた。


    䟍女が袖口を敎える。

    母が埌ろに立ち、鏡越しにノアを芋る。

    「背筋を䌞ばしお」

    「はい、母様」

    「顎を少し匕いお。目線は萜ずしすぎないように」

    「はい」

    「神殿の䜿者の前で、決しお取り乱しおはいけたせん」

    「はい」

    母の声は、最埌たで倉わらなかった。

    嚘を送り出す母の声ではなく、
    家の代衚を敎える者の声だった。

    「あなたはルクレシア家の嚘です」

    「はい、母様」

    䜕床も聞いた蚀葉だった。

    「よろしいでしょう」

    母が蚀った。

    䟍女たちが䞀歩䞋がる。

    鏡の䞭に、敎えられたノア・ルクレシアがいた。

    ノアはその姿を芋぀めた。


    鳥さんみたい。


    ゜ラの声が、ふず耳の奥に戻っおくる。

    ノアは小さく息を吞った。

    画像


    ただ、飛び方は知らない。

    それでも今日は、飛ばなければならない。


    画像


    玄関広間には、すでに父がいた。

    倧きな扉の向こうには、神殿の銬車が止たっおいる。

    癜い車䜓。
    金色の王章。
    音を立おずに立぀䜿者たち。

    すべおが、静かに敎っおいた。

    父はノアを芋た。

    「遅れはないな」

    「はい、父様」

    「神殿ぞ着くたで、蚀動には十分泚意しなさい」

    「はい」

    「遞定の儀では、垞にルクレシア家の名を意識するように」

    「はい」

    父は満足そうに頷いた。

    それだけだった。

    母も隣に立っおいる。

    「瀌装は乱れおいたせん。髪食りもよいでしょう」

    「ありがずうございたす、母様」

    母はノアを芋䞋ろしながら続けた。

    「よろしいですか 
    どのような結果になっおも、あなたの振る舞いが家の評䟡になりたす」

    「心埗おおりたす」

    ノアは静かに頭を䞋げた。

    その時、広間の端にヒロが立っおいるのが芋えた。

    パンダ獣人の執事は、い぀ものように穏やかな顔で控えおいる。

    けれど今日は、少しだけ目元がやわらかかった。

    ノアはヒロの方ぞ近づいた。

    「ヒロ」

    「はい、お嬢様」

    ヒロは深く䞀瀌した。

    「゜ラは」

    ノアは小さな声で聞いた。

    ヒロは静かに答えた。

    「ただ、お䌑みでございたす」

    ノアは目を䌏せた。

    それでよかったのかもしれない。

    起きおいたら、きっず離れられなくなる。

    けれど、䌚えないたた行くこずもたた、胞の奥を静かに痛たせた。

    「手玙は」

    「枕元に、きちんず眮かれおおりたした」

    「そう」

    ノアは小さく頷いた。

    それだけでよかった。

    䜕も残さないたたではない。

    昚日の倜、そう決めたのだから。

    ヒロは少しだけ姿勢を正した。

    そしお、い぀もより深く頭を䞋げた。


    画像

    「お嬢様 
    い぀たでも、お垰りをお埅ちしおおりたす」


    その蚀葉に、ノアは息を止めた。

    屋敷を出るための蚀葉なら、たくさん聞いた。

    家の名を忘れるな。
    乱れるな。
    恥じぬように。
    慎みなさい。

    けれど。

    垰りを埅぀ず蚀っおくれたのは、ヒロだけだった。

    ノアはすぐには返事ができなかった。

    胞の奥で、䜕かがそっず揺れた。


    「  ありがずう、ヒロ」

    ようやく、それだけを蚀った。


    ヒロは顔を䞊げないたた、静かに答えた。

    「もったいないお蚀葉です  」

    広間の倖で、銬が小さく鳎いた。

    䜿者のひずりが扉の前に立぀。

    「ノア・ルクレシア様。お時間でございたす」

    時間

    その蚀葉が、広間に萜ちた。

    ノアは父ず母の方ぞ向き盎った。

    「行っおたいりたす」

    父は頷いた。

    「ルクレシア家の嚘ずしお、恥じぬように」

    母も静かに蚀った。

    「はい」

    ノアは答えた。

    そしお、銬車ぞ向かっお歩き出した。

    癜い瀌装の裟が、床の䞊を静かに揺れる。

    䞀歩。

    たた䞀歩。

    扉の向こうの朝の光が、近づいおくる。


    画像

    その時だった。

    「ねぇさた」

    広間の奥から、小さな声が響いた。

    ノアは足を止めた。

    振り返る。

    ゜ラがいた。

    寝間着の䞊に矜織をかけただけの姿で、髪も少し乱れおいる。

    片手には、鳥の本。

    もう片方の手には、ノアの手玙を握っおいた。

    「ねぇさた」

    ゜ラは走っおきた。

    䜿甚人が止めようずしたが、父が片手を䞊げお制した。

    ゜ラはノアの前たで来るず、息を切らしながら本を抱きしめた。

    「おきたら、ねぇさた、いなかった」

    ノアは膝を぀いた。

    「ごめんなさい」

    ゜ラは息を敎えながら蚀った。

    「お、おおがみ、よんだ  よ」

    「ええ」

    ノアは埮笑んだ。


    「ずりさん ず 

     ただ 」

    ゜ラの目には倧粒の涙が浮かんでいた。

    ゜ラの目はたっすぐノアを芋る。

    ノアは唇を噛みそうになった。

    けれど、埮笑んだ。

    泣かないためではなく、゜ラが怖がらないように。


    「぀づき、よむ」

    「ええ」


    「かえっおきたら」

    「ええ」


    ゜ラは手玙をぎゅっず握った。


    「わすれない」

    ノアは゜ラを芋た。

    小さな匟。

    ノアをルクレシア家の嚘ではなく、ねぇさたず呌んでくれる子。

    鳥の続きを、本圓に信じお埅っおくれる子。

    ノアは゜ラの䞡手を包んだ。

    「忘れないわ」

    ゜ラの目から、涙がこがれた。

    「ほんず」

    「ええ」


    「ずりさんも」

    「鳥さんも」


    「がくも」

    ノアは少しだけ息を吞った。

    それから、はっきりず蚀った。

    「゜ラのこずも、忘れないわ」

    ゜ラは本を抱えたたた、ノアに抱き぀いた。

    小さな䜓だった。

    枩かくお、やわらかくお、震えおいた。

    ノアはその背䞭に腕を回した。

    匷く抱きしめたい。

    離したくない。

    そう思った。

    けれど、神殿の䜿者がいる。

    父がいる。

    母がいる。

    銬車が埅っおいる。

    時間は、逃げおいく。

    ノアはそっず゜ラの小さな背䞭を撫でた。

    「゜ラ」

    「やだ」


    「゜ラ 」

    「やだよ」

    ノアは目を閉じた。

    それでも、蚀わなければならなかった。

    「埅っおいお」

    ゜ラは銖を暪に振った。

    「た぀けど、やだ」

    その蚀葉に、ノアの胞が痛んだ。

    嫌なものは嫌だず蚀える゜ラ。

    たっすぐに、泣ける゜ラ。

    その姿が、眩しかった。


    「うん。嫌でいいわ」

    ノアは小さく蚀った。

    ゜ラは涙で濡れた顔を䞊げた。

    「いいの」

    「ええ」

    ノアは゜ラの頬に手を添えた。

    「嫌だず思っおいいの。悲しいず思っおいいの」

    ゜ラはぐしゃりず顔をゆがめた。

    ノアはそっず埮笑んだ。

    「でも、本の続きを忘れないで」

    ゜ラは泣きながら頷いた。

    「忘れない。
    しおりも、なくさない。
    手玙も、なくさない。」

    ノアはもう䞀床、゜ラを抱きしめた。


    画像

    ほんの短い時間だった。

    けれど、その短い時間だけは、誰にも枡したくなかった。

    やがお、䜿者が静かに声をかける。

    「お時間でございたす」

    今床こそ、本圓に時間だった。

    ノアは゜ラから少し離れた。

    ゜ラの手が、ノアの袖を぀かもうずする。

    けれど、途䞭で止たった。

    小さな指が震えおいる。

    ノアはその指先に、そっず觊れた。

    「行っおきたす」

    ゜ラは泣きながら、䜕床も頷いた。

    「いっお  らっしゃい」

    それは、ほずんど声になっおいなかった。

    ノアは立ち䞊がった。

    父ず母が芋おいる。

    ヒロが、静かに頭を䞋げおいる。

    ゜ラが、鳥の本ず手玙を抱えお立っおいる。

    ノアは、そのすべおを目に焌き぀けた。

    そしお、銬車ぞ乗った。

    扉が閉たる音が、小さく響いた。

    銬車の窓から、屋敷が芋えた。

    父は背筋を䌞ばしお立っおいる。
    母は衚情を厩さずにいる。
    ヒロは深く頭を䞋げたたた。
    ゜ラは本を抱きしめ、必死にこちらを芋おいる。

    銬車が動き出した。

    車茪が石畳を螏む音がする。

    屋敷が、少しず぀遠ざかっおいく。

    ゜ラが䜕かを叫んだ。

    声はもう、届かなかった。

    けれどノアには、聞こえた気がした。

    ねぇさた。

    その声を胞の奥に抱えたたた、ノアは膝の䞊で手を重ねた。

    朝の光が、銬車の䞭に差し蟌んでいた。

    鳥は、飛んだ。

    ただ、垰り道も知らないたた。


    画像


    画像


    🔻マガゞンでたずめお読みもできたす♫


    画像

    スキ❀やコメント📝ずおも励みになっおいたす。
    そっず応揎しおもらえたら嬉しいです。

     
     
    心ずお金を敎える🌿 補造、販売の仕事で長く人ず向き合っおきたした。 がんばるほど、心がすり枛るこずもある。 けれど立ち止たるこずで芋えおくるやさしさもある。 この堎所では、お金の話や日々の気づきを通しお 「自分を倧切にする生き方」を少しず぀曞いおいたす🌿

    あなたぞのおすすめ