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女子高生の危ない郚掻第3ç«  15æ­³ 12月 9

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    ▌䞊の続き


         

     危険人物ずいう自芚はあった。
     だが、よりにもよっお゜ノに蚀われるのは䞍本意だ。なんずいっおも、わたしには゜ノのような傍若無人さはほずんどない。

     目的があり、蚈画性を持っお独断専行する。
     倧事なこずは、他者を巻き蟌たないこずだ。そういう意味では、幌少期から成長したずいう実感は埗た。

     ひずによっおは蚈画的なほうが悪質だず思うかもしれないが、どちらのほうが謹厳実盎かずいう点では、わたしに軍配が䞊がる。

     ゜ノから異垞者認定されたわたしはずいうず、あんな修矅堎を挔じた埌でも、その翌日には普通に登校しおいた。
     譊察から孊校偎ぞ打蚺があり、職員宀が倧隒ぎになっおいる間、あの気色悪い爜やか組で数孊の授業を受けおいた。どうやら孊校䞭の教職員が䞀斉に呌び出されたようだが、わたしたち生埒は自習を匷いられるに留たった。

     盎埌、臚時䌑校が決たり、その二日埌には孊校も再開しおいる。
     䞀ヶ月間の郚掻動停止ずいう条件で。いずれその理由に぀いおも校長から党校生埒に説明があるだろう。

     日垞を取り戻しかけた頃、わたしは゜ノに校門ぞ呌び出された。
     䞉時限目の叀兞の授業が始たる盎前で、サボるかどうか悩んだが、宍戞家の䞀件の事埌凊理を、莄田の人間に党振りしたこずを負い目に感じたこずもあり、恩矩もあっおわたしは教宀をこっそり抜け出すこずにした。

    「沙耶 久しぶりだな」

     ゜ノは校門前の敷地倖ぎりぎりに䜇み、片手を挙げる。
     䞀応、圌女も郚倖者ずいう認識はあるらしい。

    「たったの䞉日でしょ」

     わたしは緩慢な動䜜で校門前たで歩み寄った。
     ゜ノは心の柱が萜ちたように、にこにこしおいる。

    「そう蚀うなっお。この二日こっちは倧倉だったんだから。沙耶が先手を仕掛けちゃったせいで諞々を匕き継ぐのに準備も足りおなかったし」

     耇雑な気分になり、わたしは枋面を぀くる。
     あのずき、゜ノが宍戞家に突然珟れたこずに、わたしは疑問すら持たなかった。
     ゜ノ自身はそれこそ第䞀の殺人が起きる前から凪子が闇郚掻に関䞎しおいるのではないかず疑い、喫茶アンサンブルの宣䌝䟝頌ずいう口実で接觊しおいたらしい。
     宍戞家での生埒手垳の玛倱のはったりは、孊校のある筋からの情報提䟛で耇数の高校で短期間に女子生埒の再亀付が増えおいるこずを聞き、かなでにもその件で鎌をかけたらしい。

     凪子はかなでの先茩埌茩の関係を超えた信頌関係を䞍審に思っおいたし、もしも圌女が闇郚掻ず繋がりがあり、売春行為ずニット垜の男ぞの恐怖もそれに由来するものなら、生埒手垳のこずでも特別な反応をするだろう、ず。
     かなでのこずは蚌拠が出揃うたで泳がせおおき、ゆくゆくは摘発する぀もりで準備しおいたが、゜ノにずっお倧誀算だったのは、調査察象の呚蟺で殺人が起きたこずだ。

     探偵郚などずふざけた所属名を名乗り、のらりくらりずやっおいたずころ、突然本物の殺人事件が起き、内心戊慄しおいたのだずか。

     さすがの゜ノも殺人を捜査するのは初らしい。
       本圓だろうか。芖線を感じたか、圌女は歯切れ悪そうに再び釈明を入れた。

    「殺人捜査はマゞで初めおだったんだよ。どうしようかず焊っおた。だから、ありがずう」

     珍しく盞奜を厩した反応である。
     ゜ノにずっお闇郚掻の調査を進めるには、殺人事件も捜査しなければならなくなった。それ自䜓は想定倖の事態だったわけだ。もっず想定倖だったこずは、わたしが殺人珟堎を芋おも、倧しお動揺しなかったこずである。
     本人は『糞井の里』のこずで過去に怯えるわたしに庇護欲が湧いたずも癜状したが、はたしお――。

    「さ、ひずたずお瀌も兌ねお、なんか奢るよ」

     蚀っお゜ノは、平然ず葊ヶ䞘高校の敷地に足を螏み入れた。

    「なんかっお䜕」
    「そうだな。売店に行こうぜ。カツサンドでもどうだ」
    「信じらんない。自分が食べたいだけじゃない」

     ゜ノが䜓の向きを倉え、売店を目指すのでわたしも付いおいくしかない。
     統率力ずいうのか、牜匕力は盞倉わらずのもので、そんな身の振る舞いに矜持を感じる。
     いずれにせよ、圌女はわたしの前では無理しおプロの振る舞いをしおいるのだ。だから最埌のわたしの勇敢な荒業に、畏敬ず感謝の䞡方の念を抱いたずいうこずだろう。

     かなでが祖母のオキシコドンの残薬を盗んでいたこずは、杢野の死因を知ったずき可胜性の䞀぀ずしお考慮しおいたらしい。
     それも杢野ず゜ノの接点がなく、その聞き取りも旧『糞井の里』の実態解明に挑んでから行う予定だったから確信はなかったようだが。

     ゜ノの接觊があれば、あるいは杢野の運呜も倉わっただろうか。
       いや、それも結果論だろう。逆に心䞭をえぐられ、慙愧に堪えずに死期を早めた可胜性だっおある。

     わたしがか぀おの叀巣を蚪ねたり、かなでず山岡、杢野の関係を掗い出したりず、独断専行の成果があったこずは゜ノも䞀頻り感謝しおいた。

     さっきのはそれらをすべお包含した“ありがずう”だろう。
     それにしおも、わたしも掚理の残熱が匕かず、ただ解き明かしおいない謎のこずがずっず気がかりだった。
     それがスむちゃんずハナちゃんのこずだ。
     わたしはどうしおも、この事件に登堎した〝ヌルちゃん〟ずいう人物が、この二人の手がかりを握っおいるような気がしおならなかった。

     花接谷先生がい぀か話しおくれるだろうず期埅しおいるが、いたの圌は山岡の件や『糞井の里』の蚌蚀で譊察に拘留され、ずおも䞀般人ず話せる状況ではない。

     昇降口を通り過ぎ、すぐ右に曲がったその先に売店がある。
     わたしは有耶無耶にしたくなく、゜ノに聞いおみた。

    「ヌルちゃんっお子の正䜓に心圓たりはある」
    「さぁな」
    「さぁっお  ゜ノらしくないわね。気にならないの」

     ゜ノはこちらを振り向いお意倖そうに目を䞞めた。

    「どうしお気にする必芁がある 闇郚掻のこずは終わったんだ」

     わたしは呆気にずられ、二の句が継げなかった。自分から枊䞭に飛び蟌んだくせに、すっかり意気阻喪ずいった䜓ではないか。

    「ヌルちゃんも闇郚掻に関係しおいたずしたら それならただ終わっおないじゃない」
    「終わったよ」

     ゜ノがぎしゃりず蚀う。
     わたしは衝撃を受けお立ち止たる。゜ノは昇降口の角を右に曲がっおしたう。その先には売店があるし、螏み蟌んだ䌚話はすべきじゃない。

    「埅っおよ」

     わたしが䞍満を告げるず゜ノは立ち止たった。
     振り向き、その堎で語り始める。

    「糞井の里の事件――斜蚭の運営収支のほずんどは公費だが事業収入が厳しく、儲けが少ないず芋た経営が悪事に手を染めた、その筋で有名な児童搟取の性犯眪。そのずき、行方䞍明になった少女が二人。䞀人は橘零二。もう䞀人は有氎響。いずれも沙耶の友達だった。沙耶の考えはわかる。その二人のどっちかが、ヌルちゃんだったんじゃないかっお」

     ゜ノが぀いに売店に入る。続きを話す぀もりがあるのだろうか。
     わたしは臎し方なく埌に続いた。売店で小さな陳列棚からパンやお菓子を物色する゜ノを芋぀け、近づこうずする。

    「あら、浅海ちゃん 来おくれたのねぇ」

     カりンタヌに䟋のおばちゃんが居お、満面の笑顔で迎えた。

    「おばさん  ただ蟞めおなかったんだ  」

     わたしは愛想笑いを浮かべた。
     このひずには以前から劙なマりンティングを感じおいた。それも䞭幎特有のお節介から来るものだろうず解釈しおいた。
     コンビニで店員に顔を認知されたら䜿いにくいのず同じように、わたしはラむンを螏み越えられたら拒絶感を芚える。それもあっお利甚をやめたが、このひずが蟞め、店員が倉わるならたた利甚したいずいう期埅もあった。
     だからここで再び顔を合わせたこずに、些か衝撃を受ける。

    「そもそも」

     ゜ノがカりンタヌにカツサンドを出す。

    「糞井の里の郚倖者だったかなでが、どうしお闇郚掻なんお売春ビゞネスに手を出したず思う」
    「え  」

     わたしは困惑する。
     その話、ここでただ続けるのか。

    「ハナちゃんは営みの家で行われおいた性的虐埅の実態を芋おショックを受けた。仮にハナちゃんずヌルちゃんが同䞀人物だった堎合、トラりマを抱えた少女がかなでずいう小孊校の友達に入れ知恵するだろうか それどころか、ハナちゃんは行方䞍明になった埌、どこで䜕をしお過ごしおいた」
    「カツサンド、四癟円ね」

     おばちゃんが匵り付いた笑顔で蚀い攟぀。
     ゜ノはしばし間をずった。

     冷たい声で蚀い攟った埌の重厚な沈黙。
     こんなずき、圌女はずんだ隠し玉を披露する。劙な空気だった。
     わたしの腹の底はぐるぐるず唞りはじめ、頭より先に本胜が次に来る展開を理解したこずを告げおいた。
     ゜ノが正面を芋据え、続ける。

    「あそこで日倜繰り広げられた淫行を、誰よりも把握しおいた人間がいる。それは撮圱係の山岡でも、被害者の橘零二でも、有氎響でもない。たしおや、ここにいる英雄的な行いで、あの魔窟を壊滅させた沙耶でもない。最も子どもの傍に寄り添い、その様子を監芖し、分け隔おなく接しながら党䜓を管理しおいた責任者。斜蚭が厩壊埌も、子どもたちぞの監芖は続けおいたようだがな」

     ゜ノがそう蚀い攟぀ず、おばちゃんが睚み返した。

    「監芖なんおできるわけないじゃないの」

     いったい、売店のおばちゃんはなぜ返事をしたのだろう。
     わたしはどうしおその意味が理解できないのだろう。

    「だったらこんなずころで䜕をしおいたんです コバダカワさん」

     わたしは、背筋に開門した闇の向こうぞ埌頭郚から匕っ匵られる感芚に襲われた。眩暈がしお匕きずり蟌たれる。
     それを必死に堪えた。

     コバダカワず呌ばれた女の、胜面のような匵り付いた笑顔がすっず匕く。すっかり人間味を倱った顔面。怖ろしい姿に豹倉しおいく。

    「ええ床胞やね。こないなずこたでノコノコず――。逃げた思うおたら飛び蟌んでくるずはアホなんか ツラ芋せよったんやったら芚悟しぃや」
    「アホはあんただろうが」

     ゜ノが凄んで、睚みを利かせる。

    「おれを捕たえるには準備䞍足だったな。こっちが隙を芋せた瞬間、焊っお尻尟も芋せたんだ、あんたは」

     次の瞬間、コバダカワがカりンタヌ越しに身を乗り出し、゜ノの胞倉を掎みにかかる。䞀瞬の出来事で゜ノもたんたず服を掎たれた。
     わたしは埌ずさる。
     盎埌、昇降口の奥から雑螏の音か響き枡っおきた。
     沙耶は䞍敵な笑みを浮かべ、胞倉を掎むコバダカワを芋返しおいた。

    「沙耶、これが探偵における様匏矎だ。これから郚掻で勉匷するこずだ」

     売店には青い制服を着た䜕人もの譊官が詰め寄せ、コバダカワを包囲する。瞬く間に腕を取り抌さえ、手錠を取り出し、手際よく逮捕した。
     眪状は、暎行眪の珟行犯。そしお、児童売春の斡旋行為の眪。

    「スむ   あんたぁ」
    「ご愁傷様だな。もう売店で぀たみ食いはできないぜ。――行こうか、沙耶。残念だが、圓面の間この孊校じゃ郚掻は犁止だ。こんな胞糞悪い孊校、こっちから願い䞋げだ。反吐が出る。さっさず行こう」

     わたしは呆気に取られ、しばらくコバダカワの眵詈雑蚀を聞いおいた。
     譊察が珟堎を守るなか、呆然ずするわたしはさぞ邪魔だっただろう。゜ノに手を取られおからようやく暗雲が晎れ、䜓を動かせるようになった。

    「どうしお」

     蚊の鳎くような声で、わたしは問う。
     それには二぀の意味が含たれる。

    「あい぀がここで監芖を続けおいた黒幕だよ。あんたのこずも芋匵っおいた。それに飜き足らず、この葊ヶ䞘高校を根城に売春ビゞネスを展開した。玙按䞭からの掚薊で入孊する、かなでのような芋蟌みのある少女を䜿っお――それも山岡ずのコネで謀略を働かせおいたようだが」
    「  」

     わたしは口をぱくぱくさせた。

    「それからヌルちゃんの正䜓だが、圌女の声のこずでかなでが蚀っおたこずを芚えおるか」
    「声  声っおいえば  」

     わたしはヌルちゃんのこずより、あの斜蚭で過ごした日々の声を思い出しおいた。あの愛くるしく、ケヌキ屋さんに倢を芋おいた少女の声を。

    「よく颚邪を匕き、喉の䞍調を蚎える子だった。すぐ明らかになるだろうがヌルちゃんの正䜓は䞀人じゃない。それもコバダカワが――」
    「埅っお。そこじゃない。䞀旊そこはもういいよ」
    「うん」
    「たず、これだけは先に確認させお」

     わたしがいたに目撃した䞀幕を振り返り、責めるように蚀う。

    「  スむちゃん、なの ゜ノが」

     ゜ノは銖を傟げるわたしにちょっず埮笑んだず思いきや、螵を返しお昇降口ぞ向かっお歩きはじめる。

     およそ初めお゜ノの笑顔を芋お気づく。その顔には面圱がある。
     わたしは゜ノの手を握り返した。時間差で――それこそ、おそらく予想もできないほど長い時間をかけ、圌女がわたしに拘る理由を悟った。

     あの事件で倉わっおいなかったのはわたしだけだ。
     倉貌を遂げたあらゆるひずたちを芋お、その最埌に䌚いたかった友達の存圚に気づき、わたしは怖くなった。攟っおおけばたたどこかぞ行っおしたいそうな気がする。

    「なんだよ。痛いぞ」
    「痛くおもいい。どこにも行かせない」

     二床ず手攟さないように゜ノの手を䞡手で握り締め、力を蟌め続ける。
     ――枡したいものがあったから。
     手玙を送れなかったあの日から、わたしはずっず手垳にびっしりず日蚘を曞き続けおきた。同郷の友達にあれからどう過ごしおいたのかを䌝えられるように。

    「远いかけられる偎が、远う偎に回ったっおわけだ」
    「そのほうが探偵郚の郚員らしいでしょう」

     このナヌモアは゜ノになかなか奜評だったようで、圌女は優しそうに笑っおわたしも぀られた。あの斜蚭でわずかにでも存圚した楜しい思い出が甊った気がしお、ようやくわたしは䜕の雑念もなく、笑顔になった。


     完結

     お読みいただき、ありがずうございたした。


    #創䜜倧賞2026 #ミステリヌ小説郚門


     
     
     
    第35回ファンタゞア倧賞 倧賞受賞、実瞟はそれ䞀぀です。

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