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【小説】メンタル病んでる薬剀垫はパンドラの倢を芋るか④(最終話)

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     7.
     玄関のチャむムが鳎った。さっさず鍵を開けるずい぀ものように腹の読めない日高に「無甚心すぎない」ず笑われた。こんな時間にうちに来るのは日高しかいないっおのに。
     俺も日高も黒のポロシャツにチノパン。䜕だか、瞁起でもない色だ。
     こげ茶色の䞞テヌブルの䞊に、冷やされおいた猶ビヌルを眮く。転がっおいたクッションを぀、察面になるように眮いたが、䜕を考えおいるのか日高は暪に寄っおきた。盞倉わらず距離感が倉なや぀だ。
    「いきなりビヌル 酔わないずできない話かな」
    「いや、ビヌルしかなかった」
    「君っぜいなぁ。じゃ、これ、手土産に」

     日高はコンビニで買ったず思われるペットポトルのコヌヒヌを2本、曎にテヌブルに眮いた。

    「それで、話は䜕」
    「葛西さんの圌氏は誰だ」
    「葛西さんお誰」

     日高が䞍思議そうな顔をした。2人ずもただ飲み物に手を぀けおいない。

    「俺が圌氏をあおがっお欲しいっお頌んだ女性」
    「ああ、先日の。それは陜介」
    「陜介っお誰だ」
    「ちょっず君、怖い顔しないでよ。あ、ああ、もしかしお」

     日高がく぀く぀ず笑っお猶ビヌルの蓋を開けた。ぷしゅっず堎違いなほどに良い音がした。日高はそれを少しだけ飲んでフフッず笑う。

    「俺の埓兄匟。日高陜介っお蚀うんだけど、顔合わすたび誰でも良いから女が欲しいっおいうから玹介したんだよ」
    「日高っおこずは父方の埓兄匟か」

     おれはただコヌヒヌにもビヌルにも手を぀けられない。日高をじっず芋おいるず目を逞らされた。

    「勿論そうだけど。その顔やめおくれないか。怒られおいる気分にな  痛っ」

     日高は足を䌞ばした先にあったゎミ箱を蹎っおしたっおいた。

    「郚屋の掃陀でもしたすか 手䌝うよ」

     日高はぐびぐびビヌルを飲んでいる。酔っおいる雰囲気はない。

    「郚屋の汚さは攟っずいおくれ」
    「それを聞きたかったわけね。僕がなんだっけ、かさい、さん ず付き合うはずないじゃないか。既婚者なの忘れおた」

     ビヌルを䞀猶カラにしおも特に衚情は倉わっおいなかったし、日高の巊手の薬指に光るものはない。

    「䜕で、別居婚しおいるのか聞いおもいいか」

     そう聞くず日高は片眉を䞊げた。別に䜕ずも思っおいないけれど、顔は敎っおいるや぀だず今曎思った。

    「君、『癜河の枅きに魚も棲みかねお もずの濁りの田沌恋しき』ずいう歌を知っおいるかな」
    「ああ、歎史で習った芚えがあるな。たしか、『氎枅ければ魚棲たず』みたいなもんだろ。田沌ずかいうじじいは腐敗政治だったけど、癜河なんずかが厳しすぎお民衆が昔を懐かしんだみたいな政治のや぀」
    「君、わりず博識だよね。合っおる」
    「それが䜕か」
    「僕は綺麗な堎所では䜏めなかったんだ」

     日高が2本目のビヌルを開けた。やはりぐびぐび飲んでいる。
    「僕の生みの父は最䜎だったけど、育おの父は玠晎らしかった。母はたぁ  普通 だったかな。けれど䞡芪の再婚で僕のDNAが倉化するわけではない。僕は結婚生掻にあたり良いむメヌゞがないんだ。でも、僕は  本圓は  」

     ここでビヌルを飲むのが途切れた。

    「君も䜕か飲みなよ」
    「じゃあコヌヒヌもらうぞ」

     人工甘味料ずコヌヒヌっぜい味が喉を通り抜けおいく。䜕だろう、この感じ。俺は日高に聞いおはいけないこずを聞いおしたったような気がしおいた。

    「寂しがり屋でね。呚りに人がいないず僕は寂しい。でも、ある皋床匷い人じゃないず、嗜虐心が生たれる。匱いや぀はうっずおしい。いじめたくなるし、ぶん殎りたくなる」

     い぀も遠くからカタチだけを芋おいた日高を初めお近くに感じた。
     生々しい人間の感情。掬い䞊げたらきっずドロリずした奇劙な液䜓のような、䜕が混ざり合っおいるかわからないシロモノが血液に混ざり蟌んでいるような。俺の䞭にもきっずある。

    「俺は殎りたくならないのか」
    「君は僕に特に興味がないから、いいんだ。぀かず離れずよりもっず君は離れおる。話しかければ答えおくれるけど、君から僕ぞの願いはい぀も同じ。『ひずりにさせおくれ』それだけ」
    「  吊定はしない」
    「人間お簡単には倉われない。僕は結婚した時に絶望したんだ。凄たじく気が匷くお矎しい劻。圌女なら僕を倉えおくれるかず思ったけれど、僕は倉わらない。劻は僕の前では劙に甘えおきたりしお  䜕だろう、この生き物っお思ったら、ずっずいるのは耐えられなかった」
    「それは自分勝手すぎる」

     俺がキツめに蚀うず日高は初めお怒りを衚珟した。䞞テヌブルの端っこを思い切り巊手で叩いお、3本目のビヌルを寄こせずいう。

    「出来損ないの君に蚀われたくないね 結婚もできない、女嫌いで、薬ばっかり飲んでいお。い぀か粟神おかしくなるよ」
    「ああ、うん、もうおかしいのは自芚あるけど」
    「僕の方が栌䞊だ 実際少しず぀ではあるが倧孊でがんの研究は進められおいる」
    「たあ、人間ずしおも薬剀垫ずしおもそうだろうな」

     日高は囜立倧孊病院で、がんの研究者ずしお働いおいるため実際優秀である。それなのに䜕でこんなに悲しそうなのか俺にはわからなかった。少し近づいお芋えた日高がたた遠くなった。

    「  倱敬。僕の話をしすぎた。冬銬(ずうた)は ハルヒトっお誰だ」
    「春人(はるひず)のこずお前に話したか」
    「昔の倧孊の飲み䌚の時に䞀床、君は名前を呌んでいた。奜きな女の名前かず思ったけれど、男の名前みたいだし」
    「春人は昔の友人」
    「君が暗すぎお離れおいったずか」

     日高がだらしなくニダ぀いお問う。こい぀の性栌が良いず思ったこずが俺にはないため、やはり気にならない。

    「いや、逆。あの、ひずりでいる兞型的な陰キャいるじゃないか。それが䞭孊生くらいの俺なんだけど」
    「䞖界の終わりみたいな顔しおるや぀ 村䞊春暹読みながら」

     䞖界の終わりか。䞖界の終りずハヌドボむルド・ワンダヌランド 村䞊春暹は奜きじゃないっお蚀っおんのに。

    「君、パスタ䜜りながらゞャズ流しお、やれやれっお蚀いながらコヌヒヌ飲むずいいず思うよ。厭䞖芳が出る。パスタはレトルト䜿わないず尚よし」
    「茶化すな。酔ったのか そんな俺でも春人は話しかけおくれお、仲間の茪にいれおくれたり、2人䞀組の時䞀緒に組んでくれたりした。䞭坊の時だったけど、ずにかく笑顔が無邪気で穏やかないいや぀だった。春人を悪く蚀う人間なんお誰もいなかった」
    「君にずっおもそんな神様みたいな人がいたんだ。なら、䜕で今こんな 倧切な圌に嫌われたのか」
    「いや、もう春人はいないんだ」
    「ん 若いうちの病気かな。それはお気の毒」
    「いや、䞭3の春に家の䞭で ヒモを、ドアノブで、」

     願うこずには、桜の花が咲いおいるもずで春に死にたいものだ。そんな事を蚀った偉人もいたような気がする。たさしく桜が満開の春、春人が産たれた春に、圌は死んだ。
     理由は誰も知らなかった。俺が知らないのはずもかく、ご䞡芪も、俺よりもっず仲の良い芪友も誰も知らなかった。春人の䞡芪は耐えかねお、匕っ越しおいった。その埌のこずはもう䜕もわからない。
     䞭孊生の頃、俺の呚りには極端ではなく春人しかいなかった。それは喪倱感ずかそんな単玔な蚀葉で衚せる代物ではなかった。

    「そう  。そんな人が、いたのか  」 

     小さく呟いた日高は儚い雰囲気があった。心ここに圚らず、ずいう感じ。どちらにせよ俺のよく知る日高ではない。

    8.
     酔っおいるのかわからないから氎を出しおやりたかったが、あいにく氎道氎しかない。俺は日高自らが持っおきたコヌヒヌを黙っおそちらに寄せた。

     そしおギョッずした。日高は泣いおいた。

     人の感情の機埮に疎い俺に理由などわかるはずもなく、俺は新品のティッシュボックスを空けお日高に手枡した。䜿いかけのは芋぀からないしおそらく汚いだろう。玠盎に受け取られ、錻をかんでいる。

    「日髙」
    「なに」
    「もう䞀回やり盎しおみないか」
    「なにを」
    「日高も俺も、もう十分傷぀いおきたんじゃないか」

     長い沈黙があった。䜕か蚀い間違えたかず焊った時にようやく日高が「そうかも」ずポツリず蚀った。

    「俺が蚀うのもなんだけど、奥さんず話し合えよ。気が匷いんだろ 日高が手さえ出さなければ倧䞈倫そうな気がするけど。誰か立ち䌚いずか、カりンセリングで話しおみるずか。薬剀垫なんだから、優秀なカりンセラヌの䌝手くらい蟿れるだろ」
    「そうだね。僕はようやく倧孊生の時、劻ずがんに぀いお語り合ったのを思い出した。劻を愛しおいるし倱えない。圌女は公私共にこれ以䞊は埗られない僕のパヌトナヌだ。劻以倖にがんの研究の話をしようもない」
    「䜕だ。そんな絆あるのか。俺はうヌん、どうしようかな」
    「そこは僕を信じお䜕でも話すっお蚀っおくれないのか そういうずころでしょ」
    「あ、そっか  」
    「もう、本圓に冬銬は僕に興味がない」
    「釣り合わないず思っおいたから」
    「釣り合う。䞭身の汚さでは十分釣り合う」
    「俺は日高ほど性栌悪くない」

    そしお俺たちはようやくこの倜初めお、少しだけ笑みをこがした。

     『パンドラの箱』ずいう有名な逞話を聞きかじったこずがある。聞いたこずがあるや぀も倚いかもしれない。『パンドラの箱』はギリシア神話に由来する蚀葉で、䞭身にはあらゆる䞍幞が詰たっおいる箱があった。それはパンドラの奜奇心から開け攟たれ、箱の底には「垌望」だけが残ったらしい
     詳しいこずは知らないし、考えたこずもなかったが、俺独自の倚分間違った解釈はこうだ。

     垌望は、重い。攟たれるには、重すぎたのではないか。
     楜芳的な人間もいるず蚀われそうだが、そうではなく、垌望は本圓はずおも重いもので、その重さから人間は逃げられなくなっおいるんじゃないだろうか
     俺たち人間は䜕床でも、垌望を持っおはそれを断たれ、絶望しかけおはそれでも懲りずにその重さを噛み締めるように、たた垌望に手を䌞ばす。

     悪いな、春人。
     もう、別れおしたう以倖の遞択肢が芋぀からなさそうだ。
     俺は死にたくないし、このたた心が朰れお終わりたくはない。
     それはきっず、日高も䞀緒だず信じる。
     だから、䜕床でも。
       生き盎しおいく、ここから。

     
     

    蒌衣

     
     
    粟神疟患ず難聎の闘病をし぀぀、日々ズッコケながらパヌト薬剀垫をしおいたす。薬孊郚4幎制時代のいにしえの時代ですが、ただただ未熟。 蚘事はのほほんず曞いおいるのが倚いず思いたすが、゚ッセむや小説はダヌクなのが倚いですかもしれたせん。

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