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CB250Rで気づいた。あらためて見えた愛車Moto Guzzi V7 Specialの良さ 代車ツーリング(後編)

    たまには仕事を忘れて趣味にふける。第15回

    代車として借りたホンダCB250Rで、予定外の早朝ツーリングへ出かけた。

    前編では、「250ccなら高速道路は少し厳しいだろう」と思っていた私の予想が、あっさり覆された。

    軽い車体に、高回転まで気持ちよく回るエンジン。

    加須インターから1区間だけ走るつもりが、そのまま佐野藤岡インターまで来てしまった。

    そして朝7時過ぎ、まだ営業前の佐野プレミアム・アウトレットへ到着した。

    もちろん、買い物が目的ではない。

    わざわざ営業時間前のアウトレットまで来た理由は、もっと現実的なものだった。


    佐野プレミアム・アウトレット、駐輪場での…

    目的は、ETCカードを抜くことだった。

    それだけである。

    前編の最後で少し意味ありげに引っ張っておきながら、我ながら情緒も何もない。

    しかし、借り物のバイクとなると話は別だ。

    以前、愛車のV7 Specialを車検に出した際、ETCカードを入れたまま1週間以上預けてしまったことがある。

    何事もなかったのだが、途中で気づいてからというもの、

    「カード、大丈夫だろうか」

    と妙に落ち着かなかった。

    今回は同じ失敗を繰り返したくない。

    そのため、高速道路を走っている間も、

    「絶対に抜き忘れてはいけない」

    という考えが、頭の片隅から離れなかった。

    CB250RのETC車載器は後部シートの下にある。

    道路脇でごそごそ作業するより、落ち着いてバイクを止められる場所の方がいい。

    そこで、まだ誰もいないアウトレットのバイク駐輪場を使わせてもらった。

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    【佐野プレミアム・アウトレットのバイク駐輪場】

    シートを外し、ETCカードを抜く。

    財布へしまう。

    念のため、もう一度確認する。

    これでようやく安心した。

    人間、一度失敗すると慎重になる。

    問題は、慎重になりすぎて別の面倒を自分で作ることがある点だ。

    このときの私は、まだそれに気づいていなかった。


    静かな朝に、少しだけ違う景色を見る

    アウトレットに用事はもうない。

    帰りは高速道路を使わず、渡良瀬遊水地を経由して帰ることにした。

    佐野の市街地を離れると、道は次第に穏やかになっていく。

    川沿いには緩やかなカーブが続き、信号も少ない。

    高速道路では高回転まで回して元気のよさを見せていたCB250Rも、こういう道では素直で軽やかだ。

    アクセルを大きく開けなくても気持ちよく走れる。

    同じバイクなのに、走る場所によってずいぶん表情が変わる。

    やがて、「道の駅かぞわたらせ」が見えてきた。

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    【営業前の道の駅かぞわたらせ】

    まだ営業前で、人の姿はほとんどない。

    展望台へ上がると、渡良瀬遊水地と谷中湖が静かに広がっていた。

    谷中湖は、上空から見るとハート形に見えることで知られている。

    道の駅には「恋人の聖地」のオブジェまである。

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    【おじさんには縁のない「恋人の聖地」のオブジェ】

    早朝からバイクジャケット姿のおじさん一人。

    恋人の聖地という言葉との相性は、あまりよくない。

    しかし、誰もいないので気にする必要もない。

    水面には薄い靄が残り、朝の光が静かに広がっていた。

    ここへ来るたび、私は少し不思議な気持ちになる。

    今は穏やかな景色が広がっているが、この一帯には、かつて谷中村という村があった。

    足尾銅山鉱毒事件や洪水対策の中で遊水地計画が進み、谷中村は明治時代に廃村となった。

    現在も遊水地には、かつて人が暮らしていた痕跡が残されている。

    ハート形の湖や「恋人の聖地」という現在の印象だけを見ていると、その歴史はなかなか想像できない。

    同じ場所でも、知っていることが増えると見え方が変わる。

    そんなことを考えながら静かな水面を眺めていた。

    ぐう〜。

    腹が鳴った。

    歴史に思いを巡らせるには、少し空腹すぎたらしい。

    道の駅の店が開くのはまだ先である。

    朝食を探して、私は再びバイクにまたがった。


    自分で抜いたETCカードに邪魔される

    まだ時間には余裕があった。

    そして、ここで再び欲が出た。

    「もう一度、高速道路を走りたい」

    前編では250ccの高速走行を疑っていたのに、今ではすっかりCB250Rの高回転域が気に入っている。

    ちょうど近くには加須インターもある。

    もう一度だけ、あの加速を楽しんでから帰るのも悪くない。

    そう思ったところで、気づいた。

    ETCカードがない。

    いや、正確にはある。

    財布の中に、きちんとしまってある。

    私自身が、先ほど念入りに抜いたのだ。

    もう一度カードを入れるには、安全な場所にバイクを止め、後部シートを外し、狭い収納部分から車載器を引っ張り出さなければならない。

    面倒である。

    つい先ほど、

    「これでもう安心だ」

    と満足していた行為が、今度は自分の行く手を阻んでいる。

    何のために営業時間前のアウトレットまで行ったのか。

    しばらく考えたが、高速道路への未練はあっさり消えた。

    どうやら私は、失敗を避けようとして、別の不便を自分で用意したらしい。

    こういうところは、昔からあまり変わっていない。


    モスバーガーにも振られる

    気温も少しずつ上がってきた。

    無理に走り続けるより、どこかで休憩することにした。

    久喜インター付近まで戻ると、道路沿いにモスバーガーの看板が見えた。

    私はモスバーガーが好きである。

    頻繁に行くわけではないが、ときどき、あのこぼれそうなほどソースの入ったハンバーガーを無性に食べたくなる。

    ちょうどいい。

    そう思いながら駐車場へ入った。

    静かである。

    店内にも人の気配がない。

    時刻は、まだ午前9時前。

    営業開始前だった。

    高速道路に続いて、今度はモスバーガーにも振られた。

    今日という日は、こちらの思惑にあまり協力的ではないらしい。

    仕方なくそのまま進むと、少し先にマクドナルドがあった。

    こちらは営業している。

    朝マックを注文し、アイスコーヒーを飲みながらスマートフォンを眺めていると、いつの間にか1時間近く過ぎていた。

    時刻は9時半を回っている。

    ふと、自宅にいる娘のことを思い出した。

    今朝5時から、一人でYouTubeを見ていた小学2年生である。

    そろそろ帰ろう。


    朝マックは、なかったことにする

    自宅へ戻ると、妻と娘はちょうど朝食を食べ始めたところだった。

    妻が私の分を用意しようとする。

    私は反射的に答えた。

    「大丈夫。途中で食べてきたから」

    ここまでは事実である。

    問題は、その先だ。

    何を食べたのか聞かれたので、

    「コンビニで菓子パン」

    と答えた。

    嘘である。

    マクドナルドで朝マックを食べてきた。

    しかし、それを娘に知られるわけにはいかない。

    娘はマクドナルドが大好きなのだ。

    「どうして一人で行ったの!」

    と言われる未来が、かなり鮮明に想像できる。

    これは家庭の平和を守るための、小さな情報統制である。

    もっとも、この原稿が将来娘の目に入った場合、その平和が維持される保証はない。


    違うバイクに乗って、いつものバイクを見る

    こうして、CB250Rでの早朝ツーリングは終わった。

    借りたときの私は、

    「250ccの代車」

    くらいにしか思っていなかった。

    下道で最初に走ったときには、その軽いエンジン音から、高速道路では少し厳しいだろうと勝手に判断していた。

    実際に乗ってみると、まるで違った。

    軽い車体は扱いやすい。

    カーブでは素直に向きを変える。

    エンジンを高回転まで使えば、そこから力強く加速する。

    下道をのんびり走る楽しさと、回転を上げて走る面白さ。

    私がこれまで乗ってきたバイクとは、楽しみ方そのものが違っていた。

    だからといって、CB250Rが欲しくなってV7 Specialから乗り換えたいと思ったわけではない。

    むしろ逆だった。

    CB250Rに乗ったことで、V7 Specialの特徴が以前よりはっきり見えてきた。

    V7 Specialは、低い回転数から力強いトルクを出す。

    アクセルを開ければ、エンジンの鼓動が車体を通して伝わってくる。

    決して軽快なバイクではない。

    CB250Rのように、こちらの意思にすっと反応して向きを変える感覚とも違う。

    しかし、その重さも、鼓動も、低回転から押し出されるような力も、私がV7 Specialを気に入っている理由だった。

    いつも乗っていると、それが当たり前になる。

    当たり前になると、良さは少しずつ見えにくくなる。

    違うバイクに乗ったことで、私は久しぶりに愛車を外側から見ることができたのだと思う。


    何台もバイクを持つ人の気持ち

    以前の私は、複数台のバイクを所有する人を見て、

    「一度に1台しか乗れないのに」

    と思っていた。

    今なら、その気持ちが少し分かる。

    違う種類のバイクには、違う楽しさがある。

    軽いバイクに乗れば軽さが面白い。

    大排気量車に乗れば、余裕のある力強さが楽しい。

    クラシックなバイクには、速さとは別の味わいがある。

    一つが優れているから、もう一つが劣っているわけではない。

    楽しさの種類が違うのである。

    そして、違う楽しさを知ってから愛車へ戻ると、慣れて見えなくなっていた部分がもう一度見えてくる。

    なるほど。

    何台も欲しくなるわけだ。

    とはいえ、我が家にはそんな余裕はない。

    保管場所にも限界がある。

    しかも、つい先日セカンドカーまで購入することを決めたばかりである。

    ここで、

    「もう1台、バイクも欲しい」

    などと妻に申し出たら、家庭内の空気がどうなるかは容易に想像できる。

    ならば、たまにレンタルバイクを利用するくらいが、今の私にはちょうどよいのかもしれない。

    自分では選ばないバイクに乗ってみる。

    知らない楽しさを知る。

    そして、いつもの愛車へ戻る。

    それだけでも十分である。


    借り物だから見えたもの

    振り返れば、わずか数時間のツーリングだった。

    早朝のアウトレットでETCカードを抜き、渡良瀬遊水地の静かな水面を眺め、自分で抜いたETCカードのせいで高速道路を諦め、モスバーガーには振られ、娘には内緒で朝マックを食べた。

    予定どおりに進んだことは、ほとんどない。

    それでも、思いがけず借りたCB250Rのおかげで、いつもの道も、いつものバイクも、少し違って見えた。

    毎日使っているもの、長く付き合っているものほど、その良さは見えにくくなる。

    たまに少し離れてみると、

    「ああ、私はここが好きだったのか」

    と気づくことがある。

    CB250Rは、もうすぐ返さなければならない。

    そのあと、整備を終えたV7 Specialへ再びまたがる。

    きっと以前より少しだけ新鮮な気持ちで、あのエンジンの鼓動を感じることになるだろう。

    借り物のバイクで走った、予定外の朝。

    そこで一番よく見えたのは、借りたバイクではなく、いつも自分が乗っているバイクの良さだった。

    (おわり)


    最後までお読みいただき、ありがとうございました。
    バイクツーリングでの様々な体験を、これからも少しずつ書いていきます。「また読んでみたい」と思っていただけましたら、「スキ」や「フォロー」をいただけると大変励みになります。


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