メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo bymamiwo

【青春小説】停聲アむドル第話

    話はこちら↓


    「――♪君に〜♪」

     枕の䞊の方から、懐かしいアむドル゜ングが聞こえおくる。
     小孊生の頃、奈恋ずよく聞いおいたんだっけ。
     朝に匱いわけでは無いのに、今日は珍しく瞌が重く、䜓がダルい。
     目が開かなくおも、手を䌞ばせばい぀もの䜍眮にスマホはある  はずだった。
     モチっずした柔らかな感觊が手䞀杯に広がっおいく。

    「モチっ  」
     
     そこにいたのは、ペンギンのぬいぐるみ。
     昔よく行った氎族通のマスコットキャラで、肌觊りがずおもいい。

    「  なんでここに」

     埐々に意識が戻っおきお、倉化に気づく。
     
     ――ぬいぐるみなんお、俺の家にはない。
     
     ――ベッドから芋える倩井が、い぀もず違う。
     
     なんだこれは。

     酔っ払っお目を芚たしたら、知らない郚屋に  なんおいうのを聞いたこずはあるが、昚日は䞀滎も酒を飲んでいない。
     しっかりずベットに入っお、寝たずころたで芚えおいる。至極普通の日だったはずだ  初恋の人ず再䌚した以倖は。
     
     䞍思議な珟状に、目を擊ろうずしお止たった。

     フワッず自然な甘い銙りが、服から挂う。
     ダボッずした可愛いパゞャマから䌞びる癜く现い手。
     違和感のたた、殺颚景な郚屋に唯䞀眮いおある鏡に目をやる。
     昚日䌚ったばかりの奈恋の姿が鏡の䞭にあった。

     俺じゃない、奈恋の姿で  俺はそこにいた。

     ♢

     「倢じゃ、ない」

     叀くから䜿われおきた倢の確認方法、頬を぀ねっおも芚めるこずはなかった。
     鏡越しに芋る初恋の人は、確かに奈恋ではあるものの、どこかが違っおいるようにも芋える。
     ベッドから降りるず、スリッパが䞁寧に眮かれおいた。
     郚屋はその人を食るこずなく衚しおしたう。特に片付ける間もなく、急な来蚪の時にはより䞀局顕著に出る。  今回は来蚪どころの隒ぎではないが。

     癜を基調ずした八畳ほどの空間は、女の子の郚屋ずは思えないほど殺颚景だった。
     匕越し前埌なのだろうか、郚屋の隅には五箱の段ボヌルが積たれおいる。
     物色するのは気が匕ける。ずはいえ、この状況をどうにかしないこずには䜕も解決しない。
     ひずたずベッドのそばで充電されおいるスマホを手に取る。
     
     「うわ、懐かしいな」
     
     スマホのロック画面には昔、奈恋が憧れおいたアむドルが映っおいた。
     ロックの解陀を詊みようずする前に、顔認蚌で開いおしたった。
     たるで浮気調査でもしおいるようで、いい気分ではない。奈恋に圌氏がいるのか――そんな気持ちを理性で抌さえ぀けおいる間に、なんずか打開策を芋぀けなくおはいけない。
     できるだけ色んなものを芋ないように、メッセヌゞアプリを開いお思い出す。
     
     「連絡先、聞いおないんだったな  」
     
     「友達リスト名」ず蚀う数字に驚き぀぀も、アプリを閉じる。
     その瞬間、スマホに着信が入った。
     芋慣れた電話番号。あるひず぀の仮定を胞に、電話に出る。

     「もしかしお、奈恋」

     「歩倢くん  だよね」
     
     昚日の運呜的な再䌚は、【入れ替わり】ずいう超垞珟象を起こしおしたったようだった。

     ♢

     「どうしおこうなったか、考えないか」
     
     電話から十分埌。奈恋は『俺』の姿で、家にやっおきた。
     鏡や写真で芋慣れおいる自分の姿ではあるが、こうしお目の前で芋るのには違和感があった。
       心なしか、どこか可愛らしくも芋える。これじゃ、ナルシストみたいじゃないか。

     「昚日、寝る前たでは確実に芚えおるんだけど  っお、どうかした」

     家に来おくれおから、奈恋は黙り蟌んでしたっお、俺が䞀方的に話しおしたっおいる。
     奈恋は自分の家だず蚀うのに、どこか萜ち着かなそうだった。

     「あの、さ。芋おないよね」

     「  えっず」

     奈恋のその蚀葉を聞いお、スマホがよぎる。䞍可抗力ずはいえ芋おしたったわけで。

     「ごめん」

     「  歩倢くんになら  いいけど」

     沈黙が苊しい。いや、埅およ。これ、誀解されおないか
     元カノず芋に行った「入れ替わりアニメ映画」を思い返す。
     少し気たずくなるようなシヌンがさも圓たり前、むしろ男の本胜のように描写されおいたじゃないか。

     「いや、俺が芋たのは、これ」

     「え、スマホ、だけ」

     「あヌうん」
     
     疑うような目をしおくるが、嘘じゃないこずが䌝わるず奈恋は胞を撫で䞋ろした。
     あくたでも俺の姿をしおいるのに、い぀も俺をからかうような雰囲気だけは䌝わっおくる。
     
     「でもその蚀い振り、他にも芋ようずしおたりしお」

     「そんなこずしないっお」

     「男の子怖いな〜、郚屋に二人きりなんお」

     「それ、女の俺が蚀わないずいけないんじゃ」

     「  頭こんがらがるからやっぱやめよ」

     倉わらない雰囲気に萜ち着きを取り戻すず、芖界の隅に気になるものが映った。

     「お守り、そんなずこ眮いおるんだ」

     ベッドの枕偎に食るわけでもなく眮いおあった。

     「実は昚日ね、家に垰ったあずも少し䞍安になっちゃっお。お守り握りながら寝ちゃったんだ」

     「  」

     「歩倢くん」

     「俺も、お守りを觊っお考え事  いや、願い事をしたんだ」

     「  それっお、どういう願い」

     「俺、倢ずか生きがいみたいなのがなくお。だから、昚日奈恋に䌚っお思ったんだ。奈恋みたいになれたらっお」

     「  私もね、䌚っお思ったこずがあっお」

     奈恋はそういい、息を䞀぀吐くず、普段ずは違った雰囲気で話し出した。

     「アむドル目指しおるのにね、私党然ダメなんだ。ダンスも、歌も䞋手で、どうしようもなくおさ。それでも、アむドルになるっお気持ちだけは負けない぀もりでいた。いたけど  最近はそれさえも正盎、なくなっおしたいそうなほど匱気で」
     
     奈恋は俯いお、その衚情は読み取れなかった。

     「昚日、歩倢くんに䌚っお、応揎されお。  凄く嬉しかった。元気が貰えお、うん。絶察できるっお、思えたんだ。それっお、私が昔アむドルからもらった力ず同じでね」

     顔を䞊げた『俺の姿をした奈恋』は、『奈恋の姿をした俺』に埮笑みかけた。
     その次に続く蚀葉は  わかっおしたった。
     
     「――私も、歩倢くんみたいになりたいっお願っちゃった」


    ♢

    「ねぇ、目を閉じお。じっずしおお  」

     俺の姿をした奈恋が、顔を近づけおくるのが分かる。
     錓動が早くなっお、頬が熱い。
     目を閉じるず、感芚が研ぎ柄たされお郚屋の空気の流れさえわかるほどだった。

    「ん  難しい」
     
    「俺はそのたたでもいいず思っおるんだけど  」
     
    「絶察ダメ オヌディションにすっぎんで行く子なんおいないから」

     奈恋が神瀟で話しおくれた最埌のオヌディションは今日の昌過ぎだずいう。
     圓然、メむクなんおものはしたこずがなくお、奈恋にしおもらうこずになった。
     奈恋はい぀もの自分の顔ずはいえ、向き合っおメむクをするのは初めおのようで苊戊しおいた。
     
    「歩倢くんおさ、圌女に『すっぎんの方が可愛いよ』ずか蚀いそうだよね」

    「  蚀っおないけど、思ったこずはあるな」

    「どう こんだけメむクされた埌に、そんなこず蚀われたら」

     かれこれ、時間近くよく分からない粉を䜕重にも重ね、絵画でも曞くように線を匕いおもらった。
     分もあれば家を出られおしたう俺には、理解できない状況だった。
     メむクだけでも、女の子っおこんなに倧倉なのか、ず思っおしたう。

    「軜くビンタはするかも」

    「いい心構えだね。  はい、完成 目、開けおいいよ」

     メむクは、魔法だ。
     
     鏡に映った奈恋は、い぀もよりキラキラず可愛くなっおいた。
     昚日は気づかなかったけど、子䟛の頃のあどけなさが残る顔立ちだ。
     鏡にニコッず埮笑む。柔らかくお可愛らしい、たさしくアむドルの笑顔。
     
     ――その䞭身が、『鶯堂歩倢』であるこずなど、圓然わかるわけもない。
     
    「本圓に『俺』が、オヌディション受けお、いいのか」

     アむドルになるずいう倢を俺がオヌディションに受かっお叶えるのは、どこか匕っかかる。
     そんなこず、アむドルをずっず目指しおきた奈恋には、分かっおるはずだ。
     
     奈恋は、唇を噛み締めるず「  うん」ず頷いお、蚀葉を続けた。

    「最終審査たで通るなんお、そんな䜕床もできるこずじゃないし、もう時間がないの」

     鏡越しに目線が合う。奈恋は今、誰ず話しおいるんだろうか。

    「お願い、歩倢くん。今日だけは  『奈恋』でいお」
     
     ◇
     
     審査䌚堎は叀びたビルの地䞋、幎季の入ったレッスン堎だった。
     どうやら䞉人しかいないようで、簡易的な受付を枈たすずすぐに始たるず案内された。
     「よろしくお願いしたす」ず、元気よく挚拶しお他の二人も入っおいく。
     䞀面の鏡匵りに向き合うように、パむプ怅子が䞊べられおいお、そこに座った。
     
     「それでは、自己玹介から行きたしょう 䞀番の方から党力でッ」
     
     男の進行で、俺の右隣の女性が自己玹介を始める。容姿も綺麗で声も通る。
     二人の審査員のうち、逞しい筋肉をタンクトップから魅せる男が進行する。
     たさしく熱血そうな男は、優しい顔をしながら時折笑い、緊匵をほぐし぀぀次々ず質問をしおいく。
     盞槌を打ち、目をしっかりず芋お離さない。䜕もメモを取らず、䞡腕を組み、䌚話のように進行する。
     こういうタむプは芋た目だけでは単现胞のような人間に芋えるが、信念が匷く蚈算高いタむプだろう。
     
     もう䞀人の審査員は綺麗な癜色の髪をした女性だ。
     赀いゞャケットを着こなし、芋るからに高䟡であろう時蚈を぀けおいる。
     男ずは察照的で、少し気だるそうに頭を掻いたり、電子ではないタバコを吞いながらペンを走らせおいる。
     おそらく暩力があるからこそ蚱されおいるのだろう。瀟長か、プロデュヌサヌレベルの人物であるこずは想像が぀く。
     
     昔から、人を芋るのが奜きだった。
     だからこそ、人の仕草や垣間芋える人間性に意識が向く。
     それを䜕かに掻かしたこずはほずんどなく、あっおも友人関係でこの人は近寄らないでおこう、くらいだ。
     せめおこのオヌディションでは、有効掻甚したい。
     そんなこずを思っおいお、ふず思い出す。
     
     ――『俺』は、倧䞈倫か
     
     審査員の奥に芋える鏡で、自分の姿を確認する。
     倧䞈倫、電車の䞭で䜕床も窓に映る自分を芋た。
     ちゃんず、女に芋えおる。
     でも、ちゃんず『奈恋』になっおいるか  

     再䌚しお昚日の今日だ。
     正盎、奈恋の昔の姿は芚えおいる郚分が倚い。
     でも、幎。その幎の過去は知らない。
     䞀䜓どんなこずを経隓しお、どんな感情を持っお、どんな人生を送っおきたのか  。
     ダラダラ過ごしおしたった俺ず、倢を远っおこの最終審査を掎み取った奈恋の差は、どれほどなのか。

     俺は、嘘で停らないずいけない。
     䜕の倢もない、俺が。今この瞬間だけは、アむドルを目指す。

    「番さん、ありがずうございたしたじゃ、次は  」

     始たる、俺の  いや、『私』のアむドルぞの道が。

    「番。憮透 奈恋ぶずう なこです。よろしくお願いしたす」


    ※本線に関係ないあずがき
    圓䜜品はnoteで開催される「 #創䜜倧賞2026  」の参加䜜品です。
    カクペムにお連茉されたものを䞀郚修正し再投皿しおいたす。

    たずめお読めるリンクはこちら↓


     
     
    䜜家志望の瀟䌚人。 noteでは小説䜜品や、䜜品になりそこねた感情を拟い集めお曞き留めたす。

    あなたぞのおすすめ