
芽が出ない日
私はずっと、収穫の日ばかりを数えていた。
花が咲く日。
果実が実る日。
そういう日にだけ価値があると思っていた。
反対に、芽が出ない日や水をあげる日は数えていなかった。
何も変わらない日は、数える必要もないと思っていた。
恋愛もそうだった。
相手の言葉に大きく心を動かされること。
繋がっていると実感できること。
特別な存在だと感じられること。
そんな時間を、私は大切だと思っていた。
もちろん、それは今でもそう思う。
けれど私は、その花や果実ばかりを見ていた。
そんな生き方を続けて、ある時限界がきた。
それは、生きづらさの限界だった。
どうしようもなく苦しくなった。
泣きながら分析した。
そうしてやっと気づいた。
数えていなかったものがあることに。
朝のコーヒー。
洗濯機を回すこと。
毎日のおはようやおやすみ。
変わらずそこにいてくれること。
当たり前すぎて見えていなかった。
花が咲く日や果実が実る日は心が大きく動く。
わかりやすく特別を感じられる。
だから私は、そういうものに価値を置いていた。
そういうものだけを求めていた。
私は花ばかり見ていた。
けれど、
花を咲かせていたのは芽が出ない日だった。
姉妹作品:「その前にあったもの」https://note.com/shiny_hare2187/n/n67986efc5199