
【企画参加】お題 : 未練配達員|#毎週ショートショートnote
「100g、ブレンドで」
「いつも通り、〈未練〉並でいいですか?」
厨房で仕込み作業をしていた店主は頷いてから手を止めると、
「それにしても、たまさん、残念だねえ……」
「次の〈未練〉配達員がちゃんと引き継ぎますので」
「そうは言ってもね……次の仕事、決まってるの?」
「ちょっと、実家の方で……」
曖昧に濁すと、それ以上は踏み込んでこない。
手渡した〈未練〉の小瓶を両手で包み込むように持ち、背後の棚に並べた店主は、
「たまさんのブレンド使うようになって、料理の評判良くてね」
「レシピは託してあるんで、問題ないですよ」
ふとテーブルの端に目を向けると、白い粉末が一盛り発生している。店主も気づいたようだ。
「それ、純粋なたまさんの〈未練〉だね」
「もし良ければ……」
「ああ、ありがたく頂いておくよ」
ブレンドひと瓶に対して、その粉をひと匙──
レシピに残していない最後の隠し味。思わず口にしかけて、やめる。
残念だねえ、と繰り返す店主に謝意を伝え、すぐに店を出る。
いつのまにか、日が暮れようとしていた。
———————
田原にかさんの以下企画に、参加させて頂きます。よろしくお願いします。
――――――
この作品を気に入って頂けた方は、以下も是非。
――――――
毎週ショートショートnoteの企画参加作品は、下のマガジンにまとめています。