メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ミラノで二度見された午後のカプチーノ——日本人が知らない、イタリアの食卓のルール

    磯崎シンゴ



    画像

    ミラノに住み始めて、まだ間もない頃のことです。

    昼下がりのバールで、私はいつものように注文しました。「カプチーノ・ペルファボーレ」。その瞬間、バリスタの手が一瞬止まり、私の顔を二度見したのです。

    え、何かまずいこと言った?

    言ったんです。イタリアでは、カプチーノは午前中の飲み物。ミルクたっぷりの一杯は「朝の胃」のためのもので、食後や午後に頼むのは、イタリア人にとって「朝ごはんを夕方に食べる人」くらい不思議な光景なのでした。

    日本では当たり前のことが、イタリアの食卓ではタブーになる。ミラノで暮らした6年間、私はこの「常識の逆転」に何度も出くわしました。今日はその中から、日本人がやりがちなものを4つ、ご紹介します。

    その1.午後のカプチーノ(前述のとおり)

    イタリア人の食後は、小さなエスプレッソを一口。「ミルクは消化に重い」というのが彼らの言い分です。理屈が正しいかはさておき、こだわりは本気です。

    その2.魚介のパスタに粉チーズ

    ボンゴレにパルミジャーノをかけようとすると、給仕の顔が曇ります。「魚介の繊細な香りがチーズに消される」——これはイタリアの食卓では、ほぼ憲法級のルール。チーズの国なのに、かけてはいけない場面がある。面白いですよね。

    その3.スパゲッティをスプーンでくるくる

    上品に見えるあの食べ方、実はイタリアでは子ども用。大人はフォーク一本で、お皿のふちを使って巻きます。ミラノの同僚に「スプーンいる?」と聞かれたら、それは軽いジョークです。

    その4.「アルデンテじゃない」は事件

    日本なら「ちょっと柔らかいね」で済む話が、イタリアでは食卓が静まり返る事態になります。茹で加減はイタリア人の譲れない一線。この話は長くなるので、また別の記事でじっくり書きます。

    タブーの正体は、「食への愛」でした

    こうして並べると、イタリア人は面倒くさい人たちに見えるかもしれません。でも6年間、彼らの食卓に混ぜてもらって分かったのは、これらのルールが全部、**「美味しく食べることへの本気」**から来ているということでした。

    カプチーノの時間も、チーズの禁止も、アルデンテへの執念も、根っこはひとつ。「せっかくの一皿を、一番美味しい状態で楽しみたい」。それだけなんです。

    そう気づいてから、私はイタリアの食卓がもっと好きになりました。

    この連載について

    『シンゴのイタリア食卓』では、1990年代のミラノで私が実際に見て、食べて、ときどき怒られた食卓の話を、エッセイと4コマ漫画でお届けしています。フォローしていただくと、毎日ひとつ、イタリアの食卓の「へぇ!」が届きます。

    Ci vediamo domani!(また明日!)

    これまでの話はこちらから。


     
     
     
    ミラノ在住経験6年。イタリアの食卓の「へぇ!そうなんだ」を毎日エッセイ&4コマ漫画でお届け。カプチーノは午前だけ?魚介にチーズはNG?——日本の常識と真逆の世界へようこそ。『シンゴのイタリア食卓』連載中🍝

    あなたへのおすすめ