
第15話 自社製品という挑戦
会社を変えようとして、会社に教えられたこと
What I Learned from the Company I Tried to Change
― 大企業約40年、中小企業約10年。あるアドバイザーが二つの世界で見たもの ―
― About 40 Years at a Large Corporation and 10 Years at a Small Company: What an Advisor Saw in Two Different Worlds ―
第Ⅴ部 事業を作る人たち
Part V: The People Who Build Businesses
第15話 自社製品という挑戦
Episode 15: The Challenge of Creating Our Own Products
※この記事は「会社を変えようとして、会社に教えられたこと」シリーズの第15話です。シリーズ全体はこちら →[総合目次]
自社製品を持つ。
ものづくりに関わる会社にとって、この言葉にはどこか夢がある。自分たちの技術で、自分たちの商品を作る。お客様から仕様を与えられるのではなく、自分たちで考え、自分たちの名前で世の中へ出す。
しかし私は、この会社が自社製品へ挑戦する姿を見ながら、別のことを考えていた。
「作れること」と「売れること」は違う。そして、「売れること」と「事業になること」も違うのではないか。
受託の仕事なら、お客様がいる。要求がある。仕様がある。しかし自社製品では、何を作るのか、誰に売るのか、いくらで売るのか、何台売るのか、そしてなぜ自分たちが作るのか。その答えを、自分たちで見つけなければならない。
技術があれば商品は作れるかもしれない。しかし、商品を作ることと、事業を作ることは同じではない。
私は、自社製品への挑戦を通して、その違いを改めて考えることになった。
「作れる」と「売れる」は違う
技術者は、どうしても「作れるかどうか」を考える。こんな回路ができる。こんな基板が作れる。こんな部品が使える。こんな性能が出せる。もちろん、それは大切である。技術がなければ、商品は作れない。しかし、事業という視点から見れば、もう一つの問いが必要になる。「それを、誰が買うのか。」そして、さらに「なぜ、その人は私たちから買うのか。」である。
私は大企業時代、商品開発にも事業にも関わってきた。そこで何度も見てきた。技術的に優れた商品が、必ず売れるわけではない。技術者が「これはいい商品だ」と思っていても、市場がそう思うとは限らない。逆に、技術的にはそれほど派手ではなくても、お客様が本当に困っていることを解決できれば商品になる。技術と商品は違う。そして、商品と事業も違う。私は、この会社が自社製品へ挑戦する中で、そのことを改めて考えるようになった。
ただ、私が気になっていたのは、「売れるかどうか」だけではなかった。
自社製品を持つということは、それまでこの会社がやってきた仕事とは、別の責任を背負うことになるのではないか。
それは、どんな責任だったのか?