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誰も死体を見なかった島①(全11話完結済み)

    <あらすじ>
    電波の入らない無人島での「デジタルデトックス」ツアーに集まった7人。締め切りに追われる作家、過去を隠す元警官、逃げ出したい主婦、秘密を抱える医者や弁護士。彼らが島で見つけたのは、自己中心的な参加者の変死体だった。ところが、悲鳴を上げるどころか、ため息をつくメンバーたち。誰もが「警察を呼べない事情」を抱えていた彼らは、事件を「なかったこと」にするため、冷たい打算と奇妙な連帯感のもと、現実的な話し合いを始める。死体と共に、平然と夕食をとりながら――。果たして、彼らが下す驚くべき決断とは? 無人島で繰り広げられる、道徳と狂気が静かに衝突する七日間の物語。

    プロローグ


    僕達の目の前には死体があった。

    それも明らかに誰かに殺されたであろう死体が。

    うつ伏せに倒れた男の頭部から流れ出たものが、床に黒々とした染みを作っている。空気には、まるで錆びた鉄を舐めたような、生々しい血の匂いが充満していた。

    近くには血のついた薪割り用の手斧が無造作に転がっている。その刃には何か赤黒いものがこびりついていて、部屋の真ん中に倒れている男が「ただ死んでいる」のではないと、誰の目にも明らかだった。

    普通なら悲鳴を上げるところだろうか? 本当に死んでいるか確認するだろうか? 震える手で警察に通報しようとするだろうか? もしも誰か一人でもそのような「まともな」反応をしてくれたなら、僕の社会性もそれに同調し、適切な恐怖や嫌悪感を示したに違いない。

    しかし、昨日出会ったばかりの僕達七人の反応は、まるきり違った。

    聞こえてきたのは、深い舌打ち、重たいため息、それから「マジかよ」という心底面倒くさそうな呟き。誰一人として死体に駆け寄る者はいない。むしろ、全員が一歩後ずさり、厄介なものから距離を置こうとしているようだった。

    なんという人達だろうか。誰もまともな倫理観も道徳も持ち合わせていないようである。少なくとも、この場の空気は「悲劇」でも「惨劇」でもなく、手のかかる「問題」が発生した時のそれだった。

    だから僕は、この場でもっともまともな人間性を持つ人間として、実に人間らしい提案をした。重苦しい沈黙を破り、腹の虫が鳴きそうになるのをこらえながら、できるだけ穏やかな声で。

    「とりあえず飯でも食べながら、『これ』をどうするか考えませんか?」

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