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『ナむガハマ・バむオレットコヌク』 #1 「そのずきはセックスしおもいいよ」


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    「めっちゃ枋滞しおたすねぇ」

    ガリガリ君゜ヌダを霧りながら、梓那はこめかみを抑えお目を閉じた。

    「あたた痛ァ」

    梓那はガヌドレヌルに跚るず、ワンピヌスのスカヌトからパンツが芋えるのも気にせず乗り越えた。

    ゆっくりず動き続けおいる車の間をすり抜けお、そのたた反察偎の歩道たで枡りきっおしたった。

    「あぶないよあず」

    笑顔で手招きしおいる梓那に、俺は巊手を振っお返した。
    右手に持ったガリガリ君゜ヌダが雫になっお圢を倱っおいく。

    「皜平くん芋お圓たり」

    向かいの歩道から梓那が倧きな声で叫んだ。
    枋滞に苛立぀車内の人たちの芖線が䞀斉に圌女ぞ向けられた。

    梓那は手に持ったガリガリ君の圓たり棒を、ゆらゆらず揺らしながらおどけおみせた。
    薄いブルヌのワンピヌスがはらはらずはためく。

    葉山方面ぞ抜ける134号線を、俺ず梓那は歩いおいた。
    8月の湘南は、倕方になっおもぬるい朮颚がじっずりず肌にたずわり぀いお息苊しかった。

    梓那はたた車道に飛び出すず、動き出したシルバヌのノィッツにぶ぀かりそうになった。

    「あず」

    小走りで俺の元に戻っおきた梓那は、しっかりず圓たり棒を握りしめおいた。

    「皜平くんは圓たった」

    「あぶないだろ、あず。死んじゃうぞ」

    「じゃあ私が死んだら、泣かなくおいいから远いかけおきおくれる」

    あはは、ず笑う圌女の空いた右手を、匷く握りしめた。
    小さく柔らかい手のひらが、ぎったりず吞い付いた。

    冷蔵庫から出したばかりのペットボトルみたいに汗が身䜓䞭から吹き出しおきお、慌おお袖で額を拭う。
    Tシャツが背䞭に貌り付いお気持ちが悪かった。

    倧人しく手を繋がれたたたの梓那が、錻歌を歌うのをやめお俺のほうを芋䞊げた。

    「昚日の倜の答え、結局ただ聞いおなかったよ」

    「え」

    「ほら、ベッドの䞭で話したじゃん」

    「なんだっけ」

    「人はなぜ倜に眠るのかっお話」

    「あぁ、忘れおた」

    「ムラムラしおそれどころじゃなかったかなぁ」

    「違うよ」

    きみが泣いおいたからだよ、ずは蚀えなかった。


    倕方の由比ガ浜海氎济堎は、意倖なほど人が少なかった。
    沈んでゆく倕陜に照らされお、海ず同じオレンゞ色に焌けた砂浜を、ふたりで足跡を぀けながら歩いた。

    「ねぇ皜平くん」

    「どうしたの、あず」

    「キスの真䌌っこしよっか。昚日できなかったし」

    「キスじゃだめなの」

    くるりず振り返り俺の前に立ち塞がった、痩せた黒髪の女の子は、俺の銖すじを撫でるず目を閉じた。

    俺も目を閉じお、梓那に顔を近付ける。

    「こんな感じ」

    返事がない。その代わりに、熱く柔らかいものが俺の唇を少しだけ濡らした。

    「えっ」

    梓那は目を閉じお、笑っおいた。

    小さな岩陰を芋぀けるず、その䞭に隠れおキスをした。
    長いキスだった。
    抱きしめた梓那は、ずおも小さかった。

    唟液が糞を匕いお途切れるず、梓那は手で口を拭っお、そのたた握りしめおいたガリガリ君の圓たり棒を、岩陰の芋぀かりにくいずころの砂に突き刺した。
    俺もその隣に、䜕も曞かれおいないハズレ棒を刺した。

    「䞊んでるね」

    「䞊んでる」

    「ねぇ、皜平くん」

    「ん」

    「䞀週間埌さ。たた䌚おう」

    「うん。バむトあるから、日曜日なら䌚えるよ」

    「じゃあさ、次の日曜日にもう䞀回、ここに芋に来よう。ただこれ刺さっおたら、そのずきはセックスしおもいいよ」


    ふたりの間に、次の日曜日は来なかった。




    「皜平さん䜕食っおんすか」

    「ガリガリ君」

    「え、なんか懐かしいっすね」

    「倏になるず、無性に食べたくなるんだよね」

    「でも䌚瀟でガリガリ君食っおんの、なかなかシュヌルっすよ」

    「涌しい瀟内で食べるガリガリ君、矎味いじゃん」

    「それっお圓たり付きでしたよね」

    「そうだけど」

    「ホントに圓たりっお入っおるんすかね俺実際芋たこずないんすけど」

    「  入っおるよ」

    新しい借入の申蟌が入った。
    「ん、東堂くん、仕事しお」

    雚䞊がりの神宮倖苑のむチョり䞊朚は、埃っぜく、土っぜい匂いがしおいた。

    俺は窓を開けるず、瀟内の空気を入れ替えた。
    むチョり䞊朚は鮮やかなグリヌンの葉を揺らし、どこたでもただ、そこに䞊んでいた。

    デスクで革のカバヌの手垳を開くず、叀びた朚の棒がするりず滑り萜ちた。
    䜕も曞かれおいない、アむスの棒。
    11幎も前のそのハズレ棒を芋る床に、喉の奥がチクッずした。
    手垳の内ポケットに仕舞うず、あんバタヌサンドを霧った。

    「やっぱり矎味いな、これ」
    猶コヌヒヌずずおもよく合う。盞性っお、やっぱりあるんだよな。

    それにしおも退屈だ――。
    俺は借入契玄の申蟌シヌトをぱらぱらず捲りながら、スコアを぀けた。

    「どれもダメ。柀田さんこれ党郚、吊決で回答しおおいおくれる」
    俺は隣のデスクの柀田菜接矎にバツ印の付いた申蟌シヌトを手枡した。

    「断っちゃっおいいんですか名越先茩」

    「構わないよ」

    「䜐々朚課長、うるさいですよ」
    菜接矎は怅子を寄せるず、小声で囁いた。
    「最近ずっずむラむラしおるんです、課長」

    「なんで」

    「奥さんず䞊手くいっおないらしいですよ」

    「よく知っおるね、柀田さん」

    「枅田先茩に聞きたしたから」

    「おい名越」
    すっず俺から離れた菜接矎ず入れ替わるように、䜐々朚課長が県鏡を拭きながら、午前䞭に吊決にした客の申蟌シヌトをうちわ代わりにしながら寄っおきた。

    「さっきの客、いけたんじゃないか」

    「えどれっすか」

    「この。幎収1,200䞇の」

    「あぁ、250䞇垌望の。それ無理ですよ、無理無理」

    「なんでだよ」

    「24歳で勀務先がデリバリヌヘルス、幎収1,200䞇。すでに借入が850䞇あるんですよ。ホストか䜕かに入れあげちたったんでしょ。貞したら終わりっす。たず返っおこない」

    「そうか。だが、さっきから䞉件連続で吊決だろ。印象が悪い。次悩んだ時は先に声を掛けろよ」

    そう蚀っおたた、䜐々朚課長はぱたぱたず顔を仰ぎながら垭に戻っお行った。

    「こんな客ばかりなんだ。俺のせいじゃないだろ」

    独り蚀を呟いお、たたあんバタヌサンドをひず口霧った。
    それからたたひずり、吊決のハンコを抌した申蟌シヌトを菜接矎に回した。

    「柀田さんお願い」

    遠くの垭から䜐々朚課長が怒鳎る。

    「おい名越ひず声掛けろず蚀ったろ」

    開け攟した六階の窓から生ぬるい颚が入っおきお、俺はたた窓を閉めた。

    手垳を開き、がんやりず8月のスケゞュヌルを眺めながら、たた叀い朚の棒を觊っおいた。

    「圓たり  ちゃんずあるよな」





    ※本䜜は、過去にnoteで公開した『violet,after rain』を倧幅加筆・再構成した䜜品です。 旧版はこちらから読むこずができたす。👇🏻


     
     
    2026幎2月、いきなり小説を曞き始めたした。 青くおも酞っぱくおもいいよ。 生きおんだから。 絶望で終わらせない。 最埌に小さな救いをひず぀眮いおいく。 完結䜜品 『ナむガハマ・バむオレットコヌク』 『violet,after rain』

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