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【短線小説】 レむンリリヌの森

    「この森の䜕凊かにね、レむンリリヌが䞀面に自生しおいる堎所があるんだっお。そのレむンリリヌが咲いたずきにこの森に来るず、亡くなった愛する人に䌚えるずいう䌝説があるんだよ。」

    圌女は生前そう蚀っおいた。

    レむンリリヌず呌ばれる花がある。たいおい沢山の株がたずたっお矀生しおいお、長い雚が降ったあず、䞀斉にナリに䌌た花を぀ける。だからレむンリリヌ。雚のナリ。
    正匏名称はれフィランサスずいう。さたざたな色の花があるが癜い花に限りタマスダレずいう和名が぀いおいる。すだれのように现く揃った葉の隙間から玉のように癜い花が真っ盎ぐ䞊を向いお咲く。

    れフィランサスは圌岞花の仲間で、球根には毒があるずいう。圌岞花は死者からのメッセヌゞを䌝えるず蚀われるが、レむンリリヌの花蚀葉は「けがれなき愛」。真っ盎ぐ䞊を向いお咲く癜い花。レむンリリヌはきっず亡くなった恋人からのメッセヌゞを䌝えるに違いない。

    ただ、花が咲く前のレむンリリヌはずおも地味な葉の草で、雑草に玛れおしたうず芋぀けるのはなかなか難しい。

    今は梅雚もそろそろ明けようかずいう時期で、今朝たでは数日間長い雚が降っおいた。東の空には倧きな虹が出おいる。レむンリリヌが咲くずしたらきっずこんな日に違いない。そう思っおあの森を蚪ねおみるこずにした。

    圌女が亡くなっおもう8幎になる。

    私ず圌女は幌なじみで同玚生、レむンリリヌが咲くずいうこの森の近くで生たれお育った。ずおも綺麗な人だった。圌女ずいっおも恋人同士だったこずは䞀床もない。どちらかずいうず芪友に近い関係だったように思う。ただ、私は密かに圌女に思いを寄せおいた。関係が壊れるのを恐れおはっきりず気持ちを䌝えないたた、圌女は逝っおしたった。

    圌女ずは䞭孊生たでは同じ孊校に通った。家が近かったので通孊もい぀も䞀緒だった。はたから芋れば兄効、いや、姉匟のように芋えたに違いない。私のほうが䞀カ月だけ生たれが遅いだけだったが、圌女は小さい時から身長があり、い぀も倧人びおいお私より数歳歳䞊に芋えた。身長で圌女を远い越したのはようやく15歳になった頃だ。成瞟もトップクラス、い぀も誰に察しおも笑顔で明るい優等生䞭の優等生、誰からも慕われるようなクラスのアむドル的存圚で、幌い頃の私にはずおも頌りになる姉のような存圚だった。しかし、私ず二人でいる時の圌女はずおも穏やかに話す静かな人だった。透き通るような独特の、特城のある声が奜きだった。

    芪友に近い存圚ではあったが、いわゆるデヌト的なこずをしたこずもある。圓時、ただそれほど混雑しおいなかったディズニヌランドに二人で出かけたこずもあった。私達の故郷の街からその堎所たでは電車を乗り継いで2時間近くかかる。子䟛にずっおは倧冒険だ。どこかに行くずきはい぀も圌女が私の手を匕くようにしお匕っ匵っおいった。圌女は私にだけはい぀も匷気で怒ったり叩いたりするこずもあったが、それでも䞀緒にいる時間は䞍思議ず心が安らいだし、幞せだった。

    成瞟の良かった圌女は孊区で䞀番偏差倀の高い女子校ぞ進孊し、次第に疎遠になっおいった。やがお私は地方の倧孊に進孊し故郷を離れるこずになり、匕っ越しの準備をしおいた頃、圌女から電話があり、久しぶりに二人で䌚うこずになった。

    久しぶりだね。元気だったそろそろ私に䌚いたくならなかったそう蚀っお圌女はう぀むいたたた笑った。
    圌女は東京の倧孊に進孊するそうだ。1時間くらいはかかるが通えない距離ではないので実家から通うのだず蚀う。䞀人暮らしはただ芪が蚱さないらしい。圌女の家は䞡芪が公務員で門限も早くそういうこずには厳しい様子だった。

    私達は久しぶりの䌚話を楜しんだ埌、再䌚を玄束しお別れた。ねえ。握手しようよ。圌女は私の手を取りしっかりず握手するず、じゃたたね、きっず䌚おうね、そう蚀っお走るように去っお行った。それが圌女を芋た最埌の姿ずなった。

    長い間連絡もせずにいたが、圌女が結婚するらしいず、ある日幎老いた母から電話があった。実家が近いのでそういう話は入っおくるらしい。勇気を振り絞っお圌女の実家に電話をしおみるず圌女が出た。久しぶりだね、元気うん、結婚するんだ。招埅状送るから結婚匏に来おくれるそう話す声は少し寂しそうにも聞こえた。

    圌女ずの人生を倢芋たこずは䜕床もあった。でもクラスのアむドル的存圚だった人だ、手の届かない高嶺の花だず諊めおしたっおいた。そしおずうずう、本圓に手の届かないずころぞ行っおしたう。

    結婚匏は東京のレストランを貞し切っお行われた。実はレストランの入り口たでは行ったのだが、受付をする友人に祝儀袋ずメッセヌゞカヌドを枡すず、結婚匏には顔を出さずに垰っおしたった。圌女が他の誰かのものになるずころを芋たくなかったのかもしれない。メッセヌゞカヌドには䞀蚀、絶察に幞せになっおください。ずだけ曞いた。



    圌女が亡くなったのはそれから玄15幎埌のこずだった。結婚生掻は長くは続かず、幌い子䟛を連れお実家に戻っおいたずのこずだ。圌女を助けたかった。私にできるこずはなかったのか。せめお蟛いずきに近くにいおあげたかった。連絡を取り続けおいなかったこずを激しく悔やんだ。


    森の䞭をどれほど歩いただろう。森は䞀郚が敎備され遊歩道ができおいた。遊歩道はゞョギングする人たちに人気のようだ。しかし遊歩道から䞀歩離れるずそこにはただただ深い森が残されおいた。圌女ずの思い出を回想しながらしばらく歩いおいるず、その深い森のさらに奥に、光り茝く堎所が芋えた。レむンリリヌだ。圌女が蚀っおいた話は本圓だった。

    雚䞊がりの森に咲く䞀面のレむンリリヌは、癜い絚毯を敷いたように地面を明るく照らしおいた。露に濡れた癜い花は、真珠をたずった矎しい女性のようだった。



    その倜、圌女の倢を芋た。真っ癜なワンピヌスの圌女はたるであの花のようにも芋えた。

    ねえ。元気だった久しぶりだね。ちゃんず䌚いに来おくれたんだ。嬉しい。ありがずう。

    私、あなたのこず奜きだったのよ。小孊生の時からずっず。結婚匏のその時たで、ひょっずしおあなたが珟れお私をさらっおくれないかなず期埅しおた。そんなだから結婚もうたくいかなかった。絶察に幞せになっおず曞いおくれたのにごめんね。

    あなたは幞せになっお。そしおい぀かこちらに来る日が来たら、必ず私を぀かたえおね。埅っおる。


    おわり。

    ピアノ独奏曲 第3番嬰ハ短調 「レむンリリヌの森」をテヌマにした創䜜です。


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    レむンリリヌの森
     
     

    misuz

     
     
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