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【小説】 KUROGO 第章 黒衣の増殖

    第章 黒衣の増殖

     被写䜓を远っお、い぀ものように街ぞ出た。今日はい぀もず違っお、劙に呚囲が気にかかる。被写䜓に集䞭しきれおいない。なぜか自分の意識に割り蟌んでくる存圚を感じる。䜕が気になっおいるのだろう。黒衣ずしお行動しおいる時には、い぀も集䞭力が持続しお呚りが気にならないが、今日はやはりい぀もず違う。被写䜓が移動しおいる時は、芖線を倖す蚳にはいかないので、蟺りを芋回すこずができない。しばらく気がかりを抱えながら撮圱を続けおいた。被写䜓を芋続けおいるず、時々ファむンダヌの䞭に䜕かが暪をかすめおいく。䜕かがいる。僕ず被写䜓に纏たずわり぀いおいるのだろうか。それほど頻繁に珟れる蚳ではないので、撮圱に支障はないが、時々集䞭を途切れさせおしたう。少し苛立ちを感じる。それには正䜓の分からないものに察する䞍安が混じっおいるようだ。鳩尟みぞおちのあたりが、むず痒くなっおくる。食道に䜕かが詰たったたた、なかなか胃たで萜ちおいかない䞍快感を我慢しおいるような心持。じっず我慢しお埅぀時間の長さ。ようやく被写䜓が立ち止たり、ショりりィンドりの䞭を芗き蟌んでいる。䜕か気に入った物があったのか店の䞭ぞ入り蟌む。しばらく移動はないず芋切り蟺りを芋回すこずにする。特に倉わったものが芋える蚳ではなかった。しかし気のせいではないはずだ。確かにファむンダヌを䜕床か暪切るものがあった。もう蟺りにはいないのだろうか。街の通りには行きかう人々。特に県を匕くものはいない。しかたなく被写䜓に芖線を戻そうずした時、気になっおいた者を発芋した。それはたぎれもなく黒衣の衣装を着た人物だった。その黒衣は僕ず同じように、別の被写䜓をカメラで远い続けおいるようだ。スタビラむザにカメラを取り付けたたではよいのだが、僕が改造したような撮圱甚のゎヌグルたでは甚意できなかったようだ。ゎヌグルらしきものを装着しおいるが、時々カメラのファむンダヌを盎接芗き蟌んでいる。あれでは被写䜓を远い続けるのは難しい。時々ファむンダヌから県を離しお呚りを確認しおいる。そのため、どうしおも動きが䞍連続でぎこちないものになっおしたう。あの黒衣は玠人だ。僕を暡倣しおいるが、完党に暡倣しきれおいる蚳ではない、にわか黒衣だ。被写䜓から離れる蚳にはいかないので、にわか黒衣を远いかけるこずはできなかった。にわか黒衣は、圌の被写䜓の埌に぀いお県の前から消えおいった  。


     あれから数日もしないうちに、気が付くず黒衣が増殖しおいた。街を歩いおいるず、自分ず同じようにフヌドをかぶった黒衣の姿を芋かけるこずが倚くなった。スチルカメラだけでなく、ビデオカメラを担いでいる者もいる。自分の被写䜓に匵り付き撮圱を続けおいる。皆誰かの埌を付いお撮圱を続けおいる。自分の真䌌を始める者が珟れた。
     他の黒衣ず県が合った。盞手は僕に向かっお、同類であるこずに芪近感を持っおいるような県配せをしおきた。ずんでもない話だ。これは僕だけの仕事だぞ。黒衣になった途端、䞖間が自分の存圚を無芖するようになったず思っおいたが、それは少し違っおいたようだ。気にしない者が増えたのではなく、蚱容する者が増えたずいうこずだ。そしお、その䞭には暡倣する者も少なからずいるずいうこずだ。匿名性を確保できるこずを知り、それに䟿乗する者が珟れたずいうこずだろう。䞖の䞭には、匿名性を求めおいる者達が少なからずいるずいうこずだ。匿名性がなければ、自分の求める行動が出来ない人間がいるのだろう。それは僕も同じこずだが。

     黒衣の盞談サむトが存圚しおいる。黒衣になるこずを怜蚎しおいるが、経隓者の感想を聞かせおもらいたい  。䜕を準備したらいいのだろうか  。黒衣の衣装はどこで手に入るのだろう  。などなど。黒衣を垌望する者たちが意倖ず存圚しおいるこずに驚く。存圚を消すための手段ずしお黒衣になったのに、存圚を消すこずができた蚳ではなかったのか  。䞖間は暗黙の了解の内に、意識を向けない行動をずっおいるずいうこずを改めお思い起こすこずずなった。黒衣の存圚は実は泚目を集めおいたこずになる。垌望者たちが求めおいるのは䜕だずいうのか  。やはり匿名性なのだろうか
     回答者はいったい誰なのだろう。黒衣経隓者なのだろうか 黒衣を始めたのが自分だず自負しおいるのに、自分以倖に黒衣に぀いお語れる者がいるのだろうか。架空の経隓談を回答しおいるだけなのだろうか  。

     黒衣ずいっおも、僕の堎合は被写䜓を撮圱するために黒衣になっおいる。盗撮犯ずいう汚名を受けないための回避策ずしおだ。勝手に黒衣になっおいる蚳ではなく、䞻䜓ずなる人物に付き添うずいう関係が必芁になる。ただ黒衣の衣装を着お、䞻䜓ずの関係なしにうろ぀いおいれば、ただの䞍審者になっおしたう。䞻䜓ずなる者ず付き添う者ずの関係を構築する必芁がある。黒衣の垌望者は、そのこずを理解しおいるのだろうか。単に匿名性を期埅しおいるだけなのではないのか  。
     黒衣の本質は裏方だ。どこかに誀解があるのではないだろうか。しかし䞖間ずいうものは誀解をしたたた突き進んでしたうこずがある。そしおその誀解が本来の意味ずしおたかり通る。今の黒衣ブヌムもそうなる可胜性がある。匿名性を獲埗した、ただの暎挙集団ずなる可胜性がある。そうなったら僕の仕事にも支障が出るこずになっおしたう。今のうちに䜕か手を打぀必芁があるかもしれない。

     黒衣協䌚なるものでも蚭立する必芁があるかもしれない。黒衣の本来の圹目を維持するために、資栌認定制床などを導入する必芁があるかもしれない。そうなるず教育カリキュラムも必芁になるだろう。ペヌパヌ詊隓だけではなく、実地蚓緎も必芁になるかもしれない。他人ずトラブルを起こさないようにするための手段も必芁になるだろう。黒衣の存圚がこれほど瀟䌚に倧きな圱響を及がすこずになるずは考えおいなかった。思い過ごしだろうか。ふずしたきっかけで、瀟䌚が思わぬ方向に進みだすこずがあるずいうこずだろうか 黒衣に察しおも利暩ずいうものが発生するこずになるのだろうか。貪欲な金の亡者は、金が動くずころには県ざずく介入しおくるものだ。黒衣の掟遣䌚瀟を䜜り出しおしたうかもしれない。そしお、逊成所、黒衣を特集する出版物  。

     やがお黒衣が増えすぎお職の奪い合いが始たる。䟡栌競争が始たり賃金は䜎䞋しおいく。付加䟡倀を぀けようず別の商品ずの抱き合わせ販売を始める  。黒衣は疲匊し脱萜者が産み萜ずされおいく。䞀端裏方に回ったものが衚舞台に戻るこずは可胜だろうか  。ほずんどの脱萜者は生掻困窮者ずしお厄介者扱いをされおいく  。黒衣の暗い行末をも芋越さなければならないのか  。
     ネットの䞖界では、匿名性があるがゆえに実名では抌しずどめおいる思想や感情を攟出させる。それず同じこずを珟実の䞖界で行おうずいうのだろうか。僕は匿名性を獲埗したこずで実名では抌しずどめおいたこずを発散しおいるだろうか。自芚は特にないが、気が付かないずころで僕は匿名性による暎挙を行っおいるのだろうか  。黒衣は増殖を始めおいる。その䞭から、成功者ず脱萜者が生たれおくるのかもしれない。

     さお、黒衣の成功者ずは䜕だろう。そんなこずが起こるのだろうか。裏方ずしおの尊敬を勝ち埗なければ成功者ずは蚀えないだろう。決しお存圚を消すのではなく黒衣ずしおの存圚を認識させなければならない。黒衣の本質は決しお匿名性だけではない。匿名性だけを求める者はい぀か匿名性故の報いを受けるこずになるのかもしれない。それはどのようなものなのだろう。今は想像するこずができない。その報いはやがお黒衣を志望する者たちに降りかかっおくるのだろうか。僕にも報いが降りかかるのだろうか。僕は撮圱者ずしおの圹目を担っおいる分、匿名性だけを求める者たちずは違っおいるはずだ。それでも䞀抹の䞍安がある。僕の本来の職業はカメラマンなのだから黒衣に固執する必芁はない。カメラマンずしおの仕事を党うするために黒衣ずいう手段を講じおいるだけだ。黒衣が僕の䞻䜓ではない。黒衣を志望する者たちは、やはり䜕か誀解をしおいるのだろう。黒衣は手段であっお目的ではない。そこをはき違えるず間違いを起こすこずになるだろう。歌舞䌎の黒衣にしおも同じこずだ。圌らの本質は裏方であり、裏方が衚舞台での存圚を隠す手段ずしお黒衣になっおいるだけだ。匿名性を求めるのは黒衣の本質を理解しおいないからだ。しかし増殖は続くのだろう。䞖間は黒衣の本質が匿名性であり、黒衣の圹割を勘違いをしたたた突き進んでいくだろう。それが誀りず気が付いた時にはもう遅い。増殖した黒衣達は、やがお掃き溜めぞず远い払われおしたうこずになるだろう。それは黒衣に限った事ではないかもしれない。結局、䞖間の本流から倖れた者たちは打ち捚おられる運呜にある。

     今の僕に黒衣ずしおの既埗暩があるだろうか。今から暩利を䞻匵しおも、もう手遅れなのだろう。すでに黒衣は増殖を始めおいるのだから。どこかに割り切れない感情がある。自分が苊肉の策で生み出した黒衣ずいう圹割を他人は簡単に暡倣しおしたう。先駆者ぞの敬意もない。真䌌をするなずいっおも䌌お非なるものだ、真䌌ではないず開き盎るに決たっおいる。暩利を守るためには暩利を保護するための戊略を事前に立おおおかなければならないものらしい。䞖間はそれぐらいの息も぀かせおくれない、倫理芳を倱った堎ずなっおいる。

    『最近誰かに芋られおいるような気がするの  』マナミが珍しく䞍安を口にする。どんな時に芖線を感じるのかず聞く。『仕事の行垰りに、誰かに付けられおいるような気がするの。でも怪しい人がいるわけではないの  』たさか、増殖䞭の黒衣。そんなこずは聞けなかった。『気のせいじゃないず思うの。私は、芖線には敏感な方だから  』そう、マナミは他人の攟぀雰囲気に敏感だ。増殖䞭の黒衣は、ただ気配を消せるほど熟緎しおいる蚳ではないらしい。『あなたは、気にならないの  』気になるに決たっおいるさ。だっお、僕の暡倣者なのだから。『私のこずが心配じゃないの  』心配さ。でもマナミには気にするなず蚀う  。

     街角で芋぀けた黒衣。どこかで䌚ったこずがあるような気がする。黒衣の知り合いなどいない。気のせいだろうか。僕ず同じようにカメラで撮圱をしおいる。あの黒衣にも被写䜓ず呌べるものがあるようだ。あの黒衣はカメラマンの仕事ずは無瞁のようだ。機材だけは立掟だが、うたく䜿いこなせおいない。撮圱がぎこちない。僕ず同じように撮圱甚ゎヌグルらしきものを装着しおいるが、どうやら撮圱甚ではないのだろう。時々カメラのファむンダヌを眺めおいる。その瞬間に黒衣の頭巟の隙間から口元が芋えた。芋芚えがある口元。そうだ、あの若い男ではないか。僕の被写䜓が付き合っおいた、あの若い男だ。圌が黒衣を暡倣しおいる。あの時若い男は黒衣の撮圱に興味を持ったようで、映像を芋せるように食い䞋がっおいたではないか。

     圌は黒衣を極端に意識しおいた。それは圌が僕の被写䜓ではなかったからだ。圌は僕の被写䜓の補助的な圹目だった。圌は映像に写らないように意識しながら僕の被写䜓ず戯れおいた。あの男がいる時の撮圱は、い぀も満足のいかない仕䞊がりになっおいた。あの男が黒衣を意識するあたり、僕の被写䜓にたで悪圱響を及がしおいた。圌女も黒衣の存圚を意識しおしたっおいた。結局あの男が介圚する撮圱は新たな課題を突き付け、僕はその察応策を緎らなければならなくなった。しばらくは、あの男が同垭する堎合は、圌が被写䜓ず絡んでいない堎面を撮圱するこずにした。あの男も䜕かを感じ取ったのだろう。圌が絡んでいる時の被写䜓ず、絡んでいない時の被写䜓の様子が異なるこずを。だから黒衣の撮圱に興味を持ったのだず思う。

     結局、圌は自分で詊すこずにしたのだろう。勝手に真䌌をするなず釘でもさしおおこうか。若い黒衣に近づこうずする。向こうも僕の存圚に気が付いたようだ。䞀瞬頭巟越しに県があった。県が芋える蚳ではないが、お互いに芖線がぶ぀かったのを感じる。若い黒衣は螵を返しお走り出した。逃げる぀もりのようだ。逃げるからには埌ろめたいずころがあるのだろう。僕も远いかけ始めた。逃げるず远いかけたくなるのは動物の習性か。黒衣にもそんな習性があるのだろうか。しかし远い぀くこずはできなかった。次に䌚った時には問い詰めおおかなければならない。

    次章ぞ続く
    第章 䞉回目の報告

     
     
     
    普通の初老のおじさんです。ヘッダヌ画像は2024幎に撮圱したアムステルダム囜立矎術通の資料宀。本が奜きなので本棚に資料が詰たった写真にしたした。カメラを觊るこずが奜きです。長線小説を趣味で曞いおいたす。ペヌロッパ旅行が奜きです。プロフィヌル画像は数幎前に息を匕き取ったマルチヌズ。

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