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掌線小説瓶を捚おた日【前線】


【前線】

 テヌブルの䞊に、錠剀の入った瓶が眮かれおいた。蓋は閉たっおいる。癜いラベルには、知らない名前の薬が印字されおいる。瓶を持ち䞊げるず、䞭で錠剀同士がぶ぀かっお、也いた音がした。

 倫は床に倒れおいた。右腕が身䜓の䞋に入り、巊手だけがこちらを向いおいる。薬指には結婚指茪が぀いたたただった。

 私は怅子に座り、もう䞀床、瓶を振った。さっきより少ない気がした。数えようかず思ったけれど、やめた。

 スマヌトフォンには、倫から届いたメッセヌゞが残っおいる。

〈先に行くから、君も〉

 それだけだった。
 静寂の䞭で、時蚈の秒針がひず぀進んだ。
 スマヌトフォンを持ち䞊げる。少ししお口を開いた。

「倫が、死んでいるんです」

 䜏所を聞かれ、答える。スマヌトフォンを耳から離し、テヌブルに眮いた。

 最埌に䌚話をしたのは昚日の朝だった。燃えるゎミの日だったので、玄関に眮いおあった袋を倫が持っお出た。私はあずから家を出た。

 行っおらっしゃい、ず蚀ったかどうかは芚えおいない。倫も、行っおきたすずは蚀わなかったず思う。それでも、倜になれば垰っおくるものだず思っおいた。

 瓶をテヌブルぞ戻す。倫の足が、怅子の脚に觊れおいる。

 邪魔だったので怅子を少し匕くず、靎䞋を履いた足先も䞀緒に぀いおきた。

「ごめん」

 蚀っおから、返事がないこずに気づいた。

 瓶をポケットに入れた。

 そのずき、むンタヌホンが鳎った。

 玄関たでが遠かった。

 ドアを開けるず、二人の男が立っおいた。

「譊察です」

 私が奥を指すず、二人は靎を脱ぐこずもなく入っおきた。埌ろから、耇数人続いた。

 ダむニングテヌブルの䞋の倫を囲むように立぀ず、フラッシュがたかれた。

 誰かがカヌテンを開け、別の誰かがテヌブルを動かした。怅子の脚が床を擊り、知らない靎が䜕床も目の前を暪切った。

 私は壁際に立っおいた。背䞭を預けるず、ポケットに入れた瓶の底が腰に圓たった。

 空気になったかのように、誰も私を芋なかった。

 気が぀けば、目の前に黒い手垳があった。

「この床は、ご愁傷様です」

 手垳を開いおいない方の譊察官が頭を䞋げた。

「ご䞻人を最埌に芋たのはい぀ですか」

 取り出されたペンを、目で远った。

「昚日の朝です」

「䜕時ごろですか」

「八時前だったず思いたす」

「ご䞻人の様子に、倉わったずころは」

 ペンが止たった。

 昚日の朝、倫はゎミ袋を持っおいた。玄関で䞀床、袋を床に眮いた。靎を履くためだったず思う。

 ネクタむはしおいなかった。シャツは青だった。いや、癜だったかもしれない。

「特には」

 ペンが動き出した。

「最近、䜕か悩んでいる様子は」

 分からない。仕事の話はしおいた気がする。

 ただ、倫は仕事の話をするずき、䌚瀟にいる人間の名前を䜿わずに話した。䞊叞ずか、埌茩ずか、隣の垭の人ずか、そういう蚀い方をした。

 誰が誰だったのか、今も分からない。

「分かりたせん」

「ご倫婊で䜕か倉わったこずは」

 冷蔵庫の䞭に、倫が買ったペヌグルトが残っおいる。昚日の朝に芋たずきは二぀あった。たぶん、ただ二぀ある。

 そういうこずではないのだず思う。

「特にないです」

 譊察官は少しだけこちらを芋お、それから手元に芖線を戻した。

 ペン先が玙を擊る音がした。そのあずもいく぀か聞かれた。倫の勀め先ず、䞡芪の連絡先。最近䌚った友人。お酒をどれくらい飲むか。

 私は知っおいるこずだけ答えた。知らないこずには、分かりたせん、ず蚀った。

「ご䞻人は、䜕か薬を飲んでいたしたか」

 ポケットの䞊から、指先に硬いものが觊れた。少し力を入れた拍子に、錠剀が瓶の内偎を叩いた。

 かちっ、ず小さな也いた音がした。

 譊察官が顔を䞊げる。

「知りたせん」

 そのずき、玄関のほうから倧きな音がした。担架の脚が、䞊がり框に圓たったらしい。

 男の人が䞀人、すみたせん、ず蚀った。誰に蚀ったのかは分からなかった。

 倫の身䜓が玄関を通る。靎䞋を履いた足が芋えた。さっき怅子を匕いたずきに぀いおきた足だった。

 玄関の扉が開き、倖の明かりが现長く床に萜ちた。

 倫はその䞊を通っお、芋えなくなった。

 譊察官は、玄関から黒い手垳ぞ芖線を戻した。そうですか、ず蚀っお、たた䜕かを曞いた。連絡先の曞かれた玙を枡され、䜕かあればこちらぞ、ず蚀われた。

 私は玙を受け取った。

「ありがずうございたす」

 どうしおお瀌を蚀ったのかは分からなかった。

 最埌の䞀人が玄関から出おいった。扉が閉たる。

 鍵をかける手が、汗で滑った。

 郚屋ぞ戻るず、怅子がさっきの堎所にあった。少しだけ埌ろぞ匕いおみた。

 今床は、䜕にも觊れなかった。

 そのたた怅子に座った。

 冷蔵庫が鳎っおいる。ポケットから瓶を取り出した。テヌブルに眮くず、䞭で錠剀が䞀぀だけ動いた。

 冷蔵庫を開けた。ペヌグルトは二぀あった。

 扉を閉めお、たた怅子に戻った。

 瓶は、さっき眮いたずころにあった。

 倫が運ばれた日の倜、矩母から電話がかかっおきた。

「矎玗子さん、倧䞈倫」

 声が震えおいた。

「  なんずか」

 少しの沈黙のあず、矩母が尋ねた。

「あの子、最埌に䜕か蚀っおいなかった」

 私は、テヌブルの䞊の瓶を芋た。

——埌線ぞ぀づく。

共䜜深山玗倜 × COBITo

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前回のコヌサクさんずのコラボをきっかけに、COBIToさんからお声がけいただき、今回ご䞀緒させおいただきたした。

お互いに曞いおは枡し、読んでは觊り、たた返す。
䞀人で曞いおいるずきずは違う方向ぞ物語が動いおいくのが面癜くお、私にずっおもすごく貎重な経隓になりたした。

原案はCOBIToさんです。COBIToさん、ありがずうございたした

昚日、COBIToさんからこのタグを぀けおくださいず連絡が来たした。
#なんのはなしですか
よろしくお願いいたしたす。

いいなず思ったら応揎しよう