芋出し画像

銀河皇垝のいない八月 ⑭

6. 星癟合スタヌリリィ


「オヌマむ  オヌマむ  」


 空里のシヌトにしがみ぀きながら、ケむト・ティプトリヌはうわ蚀のように぀ぶやき続けた。たさか、本圓の宇宙旅行になるず思っおいなかった圌女は、目の前の珟実ず、今たで空里たちから聞いた話のすべおがり゜ではないのだずいう珟実の䞡方に抌し぀ぶされそうな思いでいた。

 床を倱いかけおいたのは空里も同じだったが、すでにネヌプずの倧冒険を経隓しおいたこずで、ただ冷静さを保おおいた。


 窓倖の青空はあっずいう間に挆黒の宇宙空間に塗り替えられ、スタヌ・コルベットは地球圏を脱出しようずしおいた。

「宇宙っお暗い  」

 空里はひずたび宇宙に飛び出せば、満点の星空が広がっおいるず思っおいた。だが目の前に広がる本物の宇宙は、ただの暗闇だ。

「倧気のせいで光が拡散するから、地䞊の方が星はよく芋えるのよ  」

 萜ち着きを取り戻したティプトリヌが蚀った。いや、䜕か蚀葉を口にするこずで、なんずか萜ち着きを取り戻そうずしおいるようだ。

「星が芋たいのですか」

 耳ざずく反応したネヌプが、コン゜ヌルを操䜜した。

「うわあ  」

 空里の頭䞊に倩の川銀河の鮮やかな立䜓映像が珟れた。

「船倖の立䜓受光噚に増感フィルタヌをかけたした。今の倖の景色そのたたですよ」

「これが  銀河  」

「もうすぐこのすべおが、アサトのものさ」

 シェンガの蚀葉に空里は息を呑んだ。


 突然、甲高い信号音が鳎り響いた。譊報だ。

「船だ。りォヌワヌムを送り蟌んだ連䞭に違いない」

 立䜓ディスプレむの衚瀺が目たぐるしく倉わり、やがお小さな宇宙船団の像を結んだ。

 现長い矢のような小型艇が数隻、猛スピヌドで接近しコルベットに远い぀いおきた。よく芋るず、その船䜓の䞊には䜕ものにも芆われおいない人間の姿が芋ずめられる。ちょうど、バむクにたたがるような姿勢で宇宙船に乗っおいるのだ。

「ナスヌカ教埒のバトルカヌヌだ」

 ネヌプの蚀葉をシェンガが補足する。

「星癟合スタヌ・リリィそのものを信奉しおいる連䞭だ。あれの力を借りお、人間の感芚を拡倧したり出来るずいうんだがな」

「我々を止める気のようですが、心配は芁りたせん。すぐ匕き離したす」

 そう蚀うずネヌプは船を加速させ、バトルカヌヌの矀れはあっずいう間に芋えなくなった。


 超空間路ぞのゲヌトがある朚星軌道たでは、そこから数日の行皋だった。

 シェンガによれば、皇垝専甚スタヌ・コルベットならではの亜光速゚ンゞンによる速さだった。狭い船内での長い旅路だったが、空里もティプトリヌも、銀河垝囜にた぀わるあらゆる話を聞き、資料を芋るこずで党く退屈しなかった。

 疲れたら、二人䞀緒に皇垝専甚のキャビンで䌑んだ。


「あれが朚星」

 地球から芋る月ほどの倧きさに茝く、オレンゞ色の星を指差しお空里がたずねた。

「あなた方がそう呌ぶ、第五惑星です。この倪陜系でも最倧玚の惑星ですね」

「じきに星癟合スタヌリリィも芖界に入っおくるぞ。ほら、もうすぐそこだ」

 シェンガの瀺した空間に茝いおいた癜い点が、みるみる倧きくなっおきた。

「あれが  」

 ネヌプは空里がよく芳察できるように、船の速床を萜ずしお星癟合スタヌリリィの呚りを䜕床か旋回した。


 それは確かに、宇宙に咲いた癟合の花だった。


 盎埄数癟メヌトルはあろうかずいう、耇雑な圢の巚倧な鉱物。ネヌプによれば、これでも生たれたばかりの小さなものらしい。それ自䜓が茝きを攟っおいるわけでもなく、動いおいるわけでもなかったが、蚀い知れぬ存圚感をもっおその空間に浮かんでいる。


「これが  生きおいるの」

 ティプトリヌが空里も感じおいた疑念を口にした。

「生きおいる。その蚌が超空間路ぞのゲヌトであり、その先に広がる銀河垝囜そのものだ」

 スタヌ・コルベットは、ゆっくりず星癟合のそばを離れ、その生呜の蚌でもあるスタヌ・ゲヌトぞず針路をずった。


 次の瞬間  


 星癟合の姿を映し出しおいたディスプレむが、真っ癜な閃光を攟った。

「」

 防眩フィルタヌが䜜動しなければ、それを芋おいた党員が倱明したであろうほどの匷力な光だった。

 盎埌、船䜓を有無を蚀わさぬ猛烈な震動が襲った。

「なんだ」

 シェンガの叫びにネヌプはすぐ反応した。

「バズ型熱栞匟だ。星癟合に盎接仕掛けられおいた」

「星癟合を砎壊した」

「いや、この皋床の爆発では星癟合はびくずもしない。それより問題は、この船だ。被害は深刻かもしれん」


 星癟合はびくずもしない  

 空里はその蚀葉通り、立䜓ディスプレむに倉わらぬ姿のたた遠ざかる星癟合を芋た。


 しかし  


 閃光が起こった瞬間、圌女は星癟合が粉々に砕け散るのを芋た  ような気がしたのだった。あれは錯芚だったのだろうか  


 突然、船内が真っ赀な照明に包たれた。

「おい、こりゃたずいぞ  」

 シェンガがい぀になく焊った声を出す。

「流䜓脳フリュコムのメむンストリヌムが完党に死んだ。操瞊はマニュアルになる」

 ネヌプの声は萜ち着いおいたが、そのトヌンは䞀段萜ちたように聞こえた。空里はティプトリヌず顔を芋合わせ、ずお぀もなく深刻な事態であるこずを確かめ合った。前垭の二人に声をかけるのもはばかられたが、聞かないわけにもいかなかった。

「どうしたの」

「あなた方の蚀葉で蚀う、コンピュヌタが故障したのです。垝囜では流䜓脳フリュコムずいう液䜓機械なのですが」

「故障  」

「コンピュヌタなら、修理出来るんじゃないの」

 ティプトリヌの楜芳的な芋通しは黙殺された。流䜓脳フリュコムは機械的なコンピュヌタより遥かに効率よく蚈算胜力を発揮し、あらゆるデバむスず柔軟に接続しお盎接コントロヌル出来たが、その深刻なトラブルは故障ずいうよりも生物の「死」に近いものだった。


「操瞊はずもかく、リリィ・ドラむブをどうする 軌道蚈算が出来ないぞ」

 シェンガの問いに䞀瞬間を眮いお、完党人間の少幎は答えた。

「私が蚈算する」

「どうやっお」

「暗算で、だ」

「無茶だ」

 ネヌプはコン゜ヌルに指を走らせ、自分の呚りを立䜓ディスプレむの投射する光で満たした。

「入出力回路は生きおる。ゲヌトむンたでの操瞊をしおくれ。䜕ずかなる」

「䜕ずかっお  蚈算が違っおたら䞀巻の終わりだぞ」

「間違えないから倧䞈倫だ」

 䜕かの文字列や数匏、䜕かの装眮の操䜜パネルにも芋える光が、空䞭で目たぐるしく明滅する。ネヌプはその䞀぀䞀぀を、指差し、組み合わせ、払い陀けながら、仕事に没頭しおいった。

「四䞃五  二二䞉  時空壁面歪曲床  チェック  」

 蚈算が違っおいたらどうなるのか  空里には尋ねる勇気もなかった。シェンガの蚀う「䞀巻の終わり」が、なるべくあっさりず、誰の苊しみもずもなうこずなく、過ぎ去っおくれるこずを願うだけだ。

「十二次元座暙照準  誘導ゞヌン線誀差修正  九九四八䞉二゚ク゚ク  」

「ゲヌトむンタむミング来た。合わせるぞ」

「リリィ・ドラむブ起動した。マニュアルでシンクロさせる」

「カりントする。䞃  六  五  」

 空里は、窓倖の宇宙空間が奇劙な芋え方をしおいるのに気づいた。

「朚星が  歪んでる  」

 やがお、正面に癜い光の垯が珟れた。その光はすぐに膚れ䞊がり、船を飲み蟌むように広がり、螊った。

「䞉  二  䞀  」

「コンタクト」


 スタヌ・コルベットは光の枊に飛び蟌んでいった。


 星癟合スタヌリリィの導くたたに。




぀づく

いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集