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『透明な刃』 #1 完結枈み

    å…š17章 完成枈み

    管内で立お続けに起きた殺人事件。政什垂の䞭倮区だずいうのに、目撃蚌蚀は皆無に近い。
    組織ずしおは、怚恚ず通りすがりの䞡睚みで捜査を続けざるをえない。どちらも切り捚おられる材料がない。
    犯人像は20代から50代の男性、䞭肉䞭背。ただし、珟圚たで被害者たちの亀友関係に該圓する人物はいない。
    ぀たるずころ、皆目芋圓が぀かないず蚀ったずころだ。
    このたたでは、早晩県譊本郚の介入があるだろう。
    眲内の空気、ずりわけ刑事課に挂う湿り気を垯びた霧のような重たい柱みのようなものは、日に日に色を濃くしおいた。
    次の事件が起きお欲しいなどずは口が裂けおも蚀えない。たずえ、犯人が想定倖のヘマをするのではないかずしおも。
    定時を過ぎおいたので、ホワむトボヌドに非番時の行き先を曞き蟌む。
    垰りに行き぀けの店で䞀杯ひっかけるか。そう考えながら郚屋を出た。
    刑事にも䌑息は必芁だ。


    1ç« 
    駅前の亀差点を、けたたたしいクラクションが切り裂いた。通勀時間垯の道を急ぐ人々は足を止め、音の出所を探す。

    ブレヌキ音がアスファルトを削り、鈍い衝撃音が響いた。䞀瞬の静寂の埌、目撃した女性の悲鳎が重なり、珟堎の熱を急激に䞊昇させる。

    䜕人かが被害者に駆け寄り、運転手は蒌癜な顔で立ち尜くしおいた。車道に投げ出された䜓。そこから䌞びる足は䞍自然な角床で固たり、ぎくりずも動かない。

    通報を受け、駅の反察偎にある亀番から駆け぀けた譊察官たちが、亀通敎理ず加害者の確認を分担する。遠くから救急車のサむレンが聞こえ始めた。

    きっずあの朝、芋慣れた駅前は、そうしお修矅堎ず化したに違いなかった。
    私が知っおいるのは、調曞ず裁刀で語られた断片だけだ。

    あの日からずっず、芋おいないはずの光景が網膜を焊がし、聞いたこずのないはずの衝突音が錓膜を刻み続けた。

    実況芋分調曞の冷たい行間からは、熱を垯びた血が滲み出しおいた。

    しばらく埌、再び蚪れたその堎所には『死亡事故発生珟堎』ず蚘された黄色い看板が立っおいた。


    3床目の呜日が近づいた昚倜のこず。

    すっかり就寝前の日課になっおしたったスマホでのネット巡回䞭に、その動画は䞍意に玛れ蟌んできた。

    䜕千回ず繰り返し思い描いおきた、モノトヌンのたたのあの朝の光景。それに぀いに色ず意味が぀き、私の芖界を塗り替えた。

    あの日以来、初めお明かりを消しお眠りに぀いた。


    か぀おは濃い黄色だった看板も、今では日に焌けお党䜓が癜く耪せおしたっおいる。

    私は看板の足元に花束ずゞュヌスを䟛え、䜕床目かも思い出せない祈りを捧げお手を合わせた。瞌の裏にあい぀の顔が浮かぶ。

    優しかったその笑顔は、もうどこにもない。あの日から、生きおいく理由など䜕もなかった。その存圚は私にずっお党おだった。

    「これなら、きっず譊察も動いおくれる」

    圌らも知らない新事実だ。手応えはある。今日からはたた忙しくなるぞ――確信ずずもに、自然ず口元がほころんだ。

    「必ずいい報告をするからな。そこから芋守っおいおくれ」

    通勀者たちはスマホに目を萜ずし、駅ぞず向かい続ける。誰も看板のこずなど気にしおいない。ただ、春の名残を含んだ颚だけが、私たちの間を吹いおいた。


    9月の倜。暑さは盞倉わらずだが、この時間になるず䞊着がなければ肌寒い颚が吹き抜ける。

    家路を急ぐ人々は思い思いの方向に歩みを進めおいた。歩行者信号が点滅し、赀に倉わった。

    芋䞋ろす亀差点には、今日も看板が䜇んでいる。すっかり枯れた花も、時折吹く颚に小さく揺れおいる。

    だが、ただ報告はできない。

    駅前の亀差点が芋枡せるコンビニの2階。むヌトむンスペヌスで持ち蟌んだパンを霧り、猶コヌヒヌで流し蟌んだ。店員に咎められたこずはない。

    普段は䞋の売り堎で賌入しおここに来る。だが、レシヌトを含め痕跡を残すわけにはいかないため、今日は䜕も賌入しなかった。

    時折、店員がここにやっおくるが、ゎミ箱のゎミの量だけを芋おすぐに降りおいく。぀いでに宀内を芋枡すが、声をかけられたこずは䞀床もなかった。

    党おは想定通りだった。

    郚屋の隅、倩井の石膏ボヌドにはか぀おそこにあったであろう、カメラの撀去跡がはっきりず芋える。

    絶察に安党だずは蚀えないが、少なくずもこのコンビニを怪しむ根拠がなければ、危険ではない。

    これたでの積み重ねが、私を支えおいる。存圚そのものを物理的に消すこずはできない。ただ、誰の蚘憶にも残らなければいいのだ。

    スマホは必芁ないのでここにはない。電源は入れたたただ。今頃、サむドボヌドの䞊で無音のたた、延々ず動画を再生しおいるはずだった。

    この手順もようやく終わりが芋えおきた。1ヶ月かけお远跡ず調査を積み重ね、男の行動ルヌチンはすでに把握しおいる。

    この蚈画に車を䜿うこずは、最初から陀倖しおいた。芁は今、捕たらなければいいのだ。死䜓を隠す必芁はない。

    逃走や停装工䜜に車を䜿うずいうこずは、さらに車を䜿った痕跡を隠蔜する必芁に迫られる。そしお、譊察の捜査胜力を䜎く芋積もるのは臎呜傷になりかねない。

    駅に向かう人はたばらだったが、車が通るこずもほずんどない。ほずんどの人が赀信号をそのたた枡っおいく。

    時折、ルヌト配送のトラックがクラクションを鳎らすが、気にも留めずにゆっくりず歩き続ける。運転手がブレヌキを螏むはずだずいう根拠のない確信。どこの誰かもわからない盞手に呜を預ける愚か者の行進に芋えた。

    移動には自転車を䜿うこずにした。あらかじめ、近くにある監芖カメラのない空き地を遞び停めおある。

    週末に譊察官が実斜しおいる自転車盗難防止の職務質問、その実斜ポむントは完党に特定枈みだ。

    もっずも、甚意した自転車は正真正銘自分のもので防犯登録もしおある。

    䞇が䞀止められおも倱うのは時間のロスだけで枈む。しかし、今倜に限っおはその時間こそが最も貎重なのだ。


    日付が倉わり、土曜日になったばかりの店内には、私を含めおたずもな客はいなかった。

    窓から離れた垭ではカップルが人目もはばからずいちゃ぀いおいるし、少し離れた垭では䜜業着姿の男が、もう長いこずテヌブルに突っ䌏したたた埮動だにしない。

    残る䞋り電車はあず2本。過去の経隓䞊、奎がタクシヌで垰宅したこずは䞀回もない。どちらかに乗っおいる可胜性が高かった。

    橋䞊駅からロヌタリヌに繋がる階段から、断続的に人が吐き出されおくる。跚線橋を兌ねおいるため、電車が入線しおいなくおも人通りは絶えない。

    今日は空振りかもしれない。そう思い始めた矢先に、ずうずう奎が珟れた。

    シンゞず呌ばれおいた、あの男だ。本名は知らない、名前になど興味はなかった。ただ、その存圚をこの䞖から消し去る、そのためにここたで積み䞊げおきたのだ。

    階段からたっすぐ駅前の亀差点に向かっおくる。信号を確認するこずもなく、赀のたた枡り始める。それを芋お、私は慌おずに垭を立った。

    男の埌ろを、䞀定の距離を保っお歩き始める。自宅の堎所も通り道も、党お把握しおいる。奎の家たでは歩いお15分ほどかかる。

    私は先回りするため、空き地に停めおおいた自転車にたたがった。

    男は自宅たでの経路で必ず神瀟の境内を暪切る。

    そこは事実䞊開かれた堎所であり、基本的に誰がいおも咎められるこずはない。だがそれは参拝するずいう建前あっおの話だ。

    毎日近道のために境内を暪切る行為は、厳密に蚀えば䞍法䟵入になりうる。今回の堎合、男の遵法意識の䜎さがこちらに味方した。

    先週のあの䌚話が、呚囲の闇に玛れお浮かんでは消えた。

    思い返すたびに、こちらの刀断が間違っおいないこずだけは確かだった。こい぀も、唟棄すべき男だ。

    珟堎に居合わせながら、あの朝、奎は䜕もしなかった。譊察に協力もしおいない。その蚌拠に裁刀や調曞にも名前はない。動画ずも矛盟しおいない。感情で動くわけにはいかない。手順通りに進めるだけだ。

    男を埅぀間、深倜の神瀟だけが纏う静けさに心を鎮め、虫の音に耳を傟ける。暗闇に心が同調しおいき、私自身が静寂そのものになっおいく感芚があった。

    男の死角ずなる瀟殿の暗がりに朜み、手早く䜿い捚おのビニヌル補のレむンコヌトを着蟌み、滑り止めの぀いた軍手を装着する。

    ホヌムセンタヌで賌入した包䞁を取り出し、刃先を確認した。
     

    男はスマホで動画を芋ながら珟れるはずだ。䞡耳にはむダホン。也いた萜ち葉や土を螏みしめる音も、近づく気配も、奎は察知するこずができない。

    男の来る方向を芋据えおいるず、想定通りのシル゚ットが珟れた。距離はただ少し離れおいるが、暗がりの䞭、スマホのバックラむトが男の顔を青癜く照らし出す。

    間違いない。あの男だ。

    はやる気持ちを抑えお、男が通り過ぎるのを埅぀。

    男の埌ろから息を殺しお近づき、刃を暪にしお背䞭の巊偎に突き刺した。

    発した叫びは神瀟の朚々に吞い蟌たれ、遠くたでは届かなかった。

    前のめりに倒れ蟌んだ男の背䞭に銬乗りになり、䜓重をかけおさらに包䞁を抌し蟌む。

    男のうめき声が消え、䜓が動かなくなっおから包䞁を抜いた。

    ポケットからペンラむトを取り出し、さっず呚囲を芋枡す。

    スヌツの背䞭が黒く染たっおいくのを確認しおから、レむンコヌトず軍手、そしお包䞁をコンビニ袋に入れ、ナップサックに抌し蟌む。

    自転車に乗り、男が入っお来た方向ずは逆に向かっおペダルを挕いだ。

    こちら偎には監芖カメラを道路に向けた家はなく、商店は皆閉たっおいる。誰にも芋られるこずなく逃げおおせる確信があった。

    あず䞀人。それたで譊察に捕たるわけにはいかない。それで最埌だ。そうすれば、぀いに党おが完結する。

    芚悟を新たにペダルを螏みしめる。

    ようやく秋の色を垯びはじめた空気が、顔を撫でお埌ろぞず流れおいった。

     
     
    千葉県出身53æ­³ 長線初䜜品です 気軜に感想などもらえるず喜びたす 䌚瀟員時々光の戊士

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