
どちらの社会も、誰かを置き去りにしている。──連載小説『ふたつの世界、たったひとつの朝』全17話、完結しました
能力主義の社会は、評価されない人を絶望させる。
結果平等の社会は、評価されたい人を黙らせる。
どちらの社会も、主流に合わない誰かを、置き去りにしている。
その問いを、17話かけて書きました。連載小説『ふたつの世界、たったひとつの朝』、全17話が完結しました。
主人公は、真木涼介。競争と評価のある世界で、評価する側にずっと立ってきた男です。「相対評価ですから」──面談で泣いた部下に、そう告げる側でした。
ある朝、寝室の古い文机の引き出しに、自分の筆跡で書かれた、覚えのないメモが入っていました。差出人は、真木亮介。同じ姓、似た名前、同じ家族。けれど彼が住むのは、競争も評価もない、もう一つの世界でした。
引き出しを通じて始まった、もう一人の自分との文通。二人はやがて、それぞれの職場で、自分の社会が誰を置き去りにしてきたのかを、知っていきます。
これは、二つの社会の優劣を決める物語ではありません。どちらの世界にも、仕組みのなかで声を出せずにいる人がいて、主人公たちは、自分の足でその声を聞きにいくことになります。
正直に告白すると、私自身は、どちらかといえば能力主義の側に、共感を持っています。だからこそ、書いているあいだ、ずっと迷っていました。能力主義と、結果平等。どちらの社会の方が、人にとってましなのだろう、と。書き始めたときも、最終話を書き終えたいまも、私の中で、答えは出ていません。書き進めるほど、どちらの世界にも、その仕組みからこぼれ落ちて、救われない人がいることが、見えてくるばかりでした。
だから、この物語が最後にたどり着く場所も、私が先に決めたものではありません。主人公たちが、対話の果てに、自分たちで選び取ったものです。それが正しかったのか、私には、今も分かりません。
二人が最後に何を選ぶのかは、ここには書きません。よければ、第1話から、読んでみてください。一気に読めるよう、全話をマガジンにまとめています。
▶ 第1話:
▶ 全話マガジン『ふたつの世界、たったひとつの朝(全17話完結)』:
この作品は、創作大賞2026(お仕事小説部門)に応募しています。読んでくださった方のスキやコメントが、何よりの励みになります。
そして、もしよければ──あなたなら、どちらの社会で生きたいですか。私が、最後まで答えを出せなかった問いです。コメントで聞かせてもらえたら、嬉しいです。
最後まで、ありがとうございました。